WRC2017/12/30

【TOP10-第3位】ティエリー・ヌーヴィル

シーズン中盤戦で一度はタイトル争いでリードを奪いながら、ティエリー・ヌーヴィルは終盤戦で2連続でのノーポイントによってセバスチャン・オジエのタイトル5連覇を許すことになった。シーズン最多の4勝を挙げ、ベストタイムもオジエを34回も上回る56回。これだけの速さをみせたにもかかわらず届かなかったのは、ただ不運だったことだけが理由なのだろうか。

■ティエリー・ヌーヴィル

ヌーヴィルは、開幕戦モンテカルロ、スウェーデンともに圧巻の速さをみせて50秒近くラリーをリードしながらともにサスペンションを壊してストップするという最悪のシーズンスタートを迎え、一時、選手権リーダーのセバスチャン・オジエに38ポイント差をつけられることになった。しかし、メキシコで3位になったあと、コルシカとアルゼンチンで連勝、ポルトガルでも2位に入り、4 戦連続表彰台を獲得して、選手権リーダーのセバスチャン・オジエまで22ポイント差に迫っている。

ヌーヴィルはサルディニアもブレーキトラブルで3位に終わったが、オジエに18ポイント差に迫り、ポーランドの勝利で11ポイント差まで肉薄、フィンランドでオジエがクラッシュによってリタイアしたため、ついにポイントで並び、勝ち星の数で選手権リーダーと浮上。これで流れは完全にヌーヴィルに傾いたかに見えた。

困難な状況をはね除けてここまで追い上げてきただけにヌーヴィルは自信満々でドイツを迎えることになった。3年前にキャリア初優勝を飾った得意な一戦だけに、彼は優勝への野望を隠すことなくスタートした。だが、ヌーヴィルは二日目の朝、何気ないジャンクションで小さな段差を超えた際に不運なことにサスペンションとハブを壊してリタイア、パワーステージのボーナスポイントを狙って最終日に再出走したものの、6番手タイムに終わったために今季初のノーポイントという最悪の結果でラリーを終えることになった。それでも彼は次戦スペインにむけて「残り3戦での逆転は十分に可能」と強気の姿勢をみせたが、またしても不運に見舞われてしまう。ヌーヴィルは4位でのゴールを目前にした最終日、またもサスペンションを破損してストップ、これで2戦連続してノーポイントとなり、選手権リーダーのセバスチャン・オジエとの差は致命的な38ポイントに広がり、次戦のラリーGBで為すすべなくオジエのタイトルを許すことになる。

序盤の2戦のクラッシュと終盤の2戦のノーポイントがなければ、シーズン最多勝のヌーヴィルがタイトルを獲得していたことはほぼ間違いないだろう。それらは多くがヒュンダイの脆弱だったサスペンションにも原因があるのかもしれないが、まだまだヌーヴィルの走りには改善の余地が残されているように見える。

メキシコ、アルゼンチン、ポルトガル、フィンランド、スペインにおけるヌーヴィルの1回目のループのタイムを見ればわかるように、明らかに彼がルースな路面で苦戦していたことがわかる。ほとんどのグラベルイベントで一番手スタートのオジエより有利なポジションでスタートしながら出遅れ、それを取り戻そうと攻めればミスを誘発し、クリーンな走りをすればペースが上げられない。ぎりぎりのせめぎ合いのなかでスピードマネージメントではまだまだ王者には及ばない。速さだけでは勝てないことを彼は思い知ることになったはずだ。

生年月日:1988年6月16日(29歳)
選手権ランキング:2位
獲得ポイント:208点
ベストリザルト:1位
優勝回数:4回
2位の回数:2回
3位の回数:2回
表彰台回数:8回
出場回数:13回
ベストタイム回数:56回
リードしたステージの数:50SS
リタイア数:2回
ラリー2の回数:3回
パワーステージ勝利数:4回
パワーステージ獲得ポイント:34点