WRC2022/12/30

【TOP10-第3位】ティエリー・ヌーヴィル

「けっして屈服することはない」

■ティエリー・ヌーヴィル

Thierry Neuville
Hyundai Motorsport

接戦における完璧なセルフコントロールは驚異的とさえいえる。ティエリー・ヌーヴィルほどの不屈の精神力をもったドライバーはいないだろう。トラブルがあって後退しても、悪魔のように正確なドライビングで這い上がって表彰台にしがみつこうとする。タイトル争いでは2年連続の3位に終わったが、ヌーヴィルは自身を屈服させることが困難なことであることを最後までライバルたちに強くアピールし続けた。

ヒョンデは新しいRally1カーへの開発の遅れやチーム代表のアンドレア・アダモの退任といった問題に直面したことに加え、ヌーヴィル自身も開発テストの最終段階となった12月に谷底に転落するという恐ろしいクラッシュに見舞われたことでけっして準備万端で新シーズンの開幕を迎えたわけではなかった。

開幕戦モンテでは懸念がはっきりと表面化し、チームの全ドライバーが数え切れないほどの問題に見舞われことになり、ヌーヴィルもダンパーの問題であわやリタイアの危機のなかどうにか5位で完走を果たすことになった。さらにパワーステージでは人生をかけたドライブをしたにもかかわらず、3番手タイムしか獲得できなかったことに苛立ちと失望を隠さなかった。

新しいマシンは速さも信頼性も欠いていたが、それでもヌーヴィルは、スウェーデン、クロアチアで連続して表彰台を達成したが、なかなかトップ争いにはからめない。ポルトガルではやっと首位に立ったが、ドライブシャフトのトラブルに見舞われる。彼は、ステージエンドでスマートフォンを取り出し、その問題を引き起こす原因となったロードセクションでナックルのボルトが外れて脱落したホイールの写真をライブ中継のカメラにこれ見よがしに示し、ハンドルを叩いて悔しがった。

イタリアではトランスミッションのトラブルでマシンストップ、ケニアではパワーステージを制してラリーを終えたものの、トヨタに1-2-3-4を許して5位にとどまった。ゴール後の険しい表情が、ふがいない週末になってしまった悔しさを物語っていた。

シーズン折り返し地点となるエストニアでは5勝目を挙げたカッレ・ロヴァンペラに対して、ランキング2位につけるヌーヴィルは4位に終わり、その差は83ポイントへと広がることになり、早くもここでタイトルのチャンスがほとんどないことを認めることになった。

誰にも負けたくなかった母国ベルギーでタナクよりペースが上がらなかったことは彼のプライドを傷つけただろう。それでも、彼は過酷で名高いギリシャで今季初優勝を飾り、ヒョンデはチーム初となる1-2-3ポディウムを達成することになった。

ニュージーランドのウェットコンディションにヌーヴィルは苦戦、4位にとどまることになり、新チャンピオンに輝いたロヴァンペラを祝福することになった。「カッレはここでも素晴らしい速さをみせた。シーズン序盤でヒョンデが全くついていけていなかった頃に5勝を挙げられたことが大きかった」

ヌーヴィルは、勝利への並々ならぬ決意をみせて臨んだ最終戦ジャパンでエルフィン・エヴァンスを破って今季2勝目を飾り、苦しんだシーズンをトヨタのホームラウンドでの勝利という最高の結果で締めくくることになった。マシンの改善に取り組んできたヒョンデはその成果が実を結ぶことになり、全13戦のうち5勝を挙げるというチームにとっても記録的な成功を収めることになった。

ヌーヴィルはヒョンデのパフォーマンスがトヨタにかなり近づいたことを認めつつも、高速グラベルやウェットコンディションの路面で課題があると包み隠さずふり返っている。「来シーズンもライバルに勝つのが易しくないことはわかっているが、チームの誰もがこの挑戦の準備はできているし、僕もプッシュし続けるつもりだ」。不屈の男はヒョンデで10年目のシーズンを迎える来季に向けて大きな手応えと自信をみせている。

生年月日:1988年6月16日(34歳)
選手権ランキング:3位
獲得ポイント:193点
ベストリザルト:1位
優勝回数:2回
2位の回数:2回
3位の回数:1回
表彰台回数:5回
出場回数:13回
ベストタイム回数:35回
リードしたステージの数:29SS
リタイア数:0回
ラリー2の回数:3回
パワーステージ勝利数:2回
パワーステージ獲得ポイント:30点