WRC2021/12/30

【TOP10-第4位】カッレ・ロヴァンペラ

「20歳の史上最年少WRCウィナー誕生。」

(c)Toyota

Kalle Rovanpera
Toyota GAZOO Racing WRT

 カッレ・ロヴァンペラはラリー・エストニアにおいて20歳9カ月という史上最年少のWRC初優勝を果たすことになった。この勝利はトヨタのチーム代表であるヤリ-マティ・ラトバラが持っていた22歳10カ月での記録を大幅に更新するWRCの歴史を塗り返す、ゴール地点で感動の涙を流して息子を出迎えた父親のハリ・ロヴァンペラが「何度も心臓が止まりそうになった」と明かすなか、WRCの歴史を塗り返したヒーローは長年待ち望んだはずの瞬間をどこまでもクールに受けとめているようにも見えた。

 ロヴァンペラは開幕から素晴らしい速さをみせた。金曜の朝のベストタイムでモンテカルロをリード、優勝争いを期待させたが、タイヤの交換やかきだされた泥にのってコースオフするなど不運もあったが4位でシーズンをスタートすることになった。

 ロヴァンペラは初優勝の期待がかかった初開催のアークティック・ラリーではイベント前のウィンターテストのコンディションが予想と外れたために惜しくも2位に終わったが、ティエリー・ヌーヴィルに4ポイント差、チームメイトのセバスチャン・オジエとエルフィン・エヴァンスに8ポイント差を付けて最年少で選手権をリードすることになった。

 ロヴァンペラはリーダーになったからと言ってプレッシャーを感じることはないと語っていたが、次戦のクロアチアではオープニングステージでクラッシュ、ノーポイントでラリーを終えたあと、数戦にわたって不振が続くことになる。

 さらなる失望を避けるために慎重なスタートを切ったポルトガルではかえってペースにも苦しみ、ライバルたちにかなり遅れをとったあと、ツキにも見放されたようにテクニカルトラブルでマシンを止めている。そのため2位でスタートしたサルディニアで彼がみせた初日のパフォーマンスは本来の彼の走りが復活したことを期待させるものだったが、サスペンションのトラブルでまたもリタイア、サファリでも深いわだちを覆い隠していたパウダー状の土「フェッシュ・フェッシュ」の餌食になってスタック、マシンをコース脇に止めることになった。

 こうしたスランプにも似た状況からロヴァンペラを救い出したのはその圧巻のスピードだった。エストニアとギリシャでは非の打ち所がない圧倒的な速さで瞬く間に2勝を飾ることになった。さらにクロアチアでの早期リタイアにもかかわらず、今季初開催となったイープルでも、この世界でもっともトリッキーなターマックと称されるステージに多くのトップドライバーが苦しむなか、彼はベルギー未経験のドライバーの最上位となる3位でフィニッシュ、アスファルトでの進化をみせつけている。

 ラトバラは、アクロポリスでのパフォーマンスを「別の惑星」のもののようだと表現、「この1年間で5年分のステップアップを果たした」とその成長を評価している。

 母国フィンランドでの21歳のバースデー勝利という期待に反して、ロヴァンペラはグリップに苦しんでペースが上がらず、結局、クラッシュでリタイアとなるなど、まだまだすべての局面において一貫したペースを見せられるほど成熟しているわけではなく、セットアップ改善あるいはタイヤマネージメントの弱さなど、選手権でトップ争いしていくためのいくつか課題を残したシーズンではあった。しかし、困難に直面していた春の数ヶ月間が彼を大きくしたように、これからもさらなる試練がよりロヴァンペラを強くしていくように思う。

 目指すはコリン・マクレーがもつ27歳109日という史上最年少のワールドチャンピオン記録。まだまだ時間はいくらでもある。

■カッレ・ロヴァンペラ
生年月日:2000年10月1日(21歳)
選手権ランキング:4位
獲得ポイント:142点
ベストリザルト:1位
優勝回数:2回
2位の回数:1回
3位の回数:1回
表彰台回数:4回
出場回数:12回
ベストタイム回数:22回
リードしたステージの数:37SS
リタイア数:4回
リスタートの回数:3回
パワーステージ勝利数:2回
パワーステージ獲得ポイント:27点