WRC2018/12/29

【TOP10-第5位】セバスチャン・ローブ

(c)Citroen

 ラリー・デ・エスパーニャの最終日に劇的な逆転勝利を飾ったとはいえ、チャンピオンシップを闘っていなかったセバスチャン・ローブにトップ5の評価を与えることへの異論はあるだろう。しかし、シーズンフル参戦を止めてからすでに5年が経過した44歳に、選手権を争う現役のトップドライバーたちが束になって挑んでも誰ひとり勝てなかったことは疑いようのない事実なのだ。

 メキシコで3年ぶりにWRCに帰ってきたローブだが、当初、彼には勝利への貪欲な期待はなかったように見えた。彼は「ただ自分自身を楽しむつもりでいる」と、まるで小旅行に行くかのように復帰の動機について説明していたほどだ。だが、ラリーが始まるや、5年ぶりのWRCのグラベルイベントとは思えないほどに彼は瞬く間にペースを取り戻して土曜日の朝のオープニングSSからラリーをリードすることになった。

 メキシコはけっきょくパンクによって5位に終わり、次戦のツール・ド・コルスのターマックでもオープニングSSでこのイベントを勝利することになるセバスチャン・オジエに続く2番手タイムを奪って速さをみせながらもコースオフによって早々にリタイアに終わっている。彼のペースは現役のトップドライバーたちに対して大きく見劣りしなかったが、正しいペースを掴みかねていたように見えた。

 3日続けて異なる路面コンディションとなったスペインは、ローブにとってけっして理想的な週末ではなかった。初日のグラベルではスローペースでスタート、13位から4位へと順位を上げ、二日目のドライターマックでもいったん順位を落としたあと、じょじょにペースを上げて3位まで挽回した。慣れたころ一日が終わり、また翌日から新しいコンディションと闘わなければならないというわけだ。

 前日の雨の影響が残る湿ったターマックとなった最終日、誰もが朝のループにむけてソフトタイヤを選ぶことになったが、ローブはハードタイヤをチョイス。ステージ序盤の最初の数kmさえドライならこのタイヤでも温まるはずだという読みがズバリ的中、難しいコンディションのなかいきなり朝のステージで首位に躍り出し、追いすがるヤリ-マティ・ラトバラやオジエを突き放し、2013年のラリー・アルゼンチン以来、およそ5年半ぶりとなる通算79回目の勝利にむけて駆け抜けた。

 速さではナンバー1ではなかったかもしれないが、9年にわたって世界のトップに君臨してきた男はラリーの奥深さと難しさを熟知している点においていまもなお誰もが及ばぬ領域にいることをこの勝利によって証明することになった。王者はいまも変わらぬ最強のナンバー1として最前線に帰ってきたのだ。

 ローブは来季、新天地ヒュンダイに移籍して6戦を走る。グループPSAとの17年にわたる蜜月に別れを告げるという決断は、世界を驚かせることになったが、「スペインの勝利が僕に再び火をつけることになった」と、彼はいたってシンプルな理由だった説明している。

■セバスチャン・ローブ
生年月日:1974年2月26日(44歳)
選手権ランキング:13位
獲得ポイント:43点
ベストリザルト:1位
優勝回数:1回
2位の回数:0回
3位の回数:0回
表彰台回数:1回
出場回数:3回
ベストタイム回数:9回
リードしたステージの数:7SS
リタイア数:0回
ラリー2の回数:1回
パワーステージ勝利数:0回
パワーステージ獲得ポイント:8点