WRC2022/12/28

【TOP10-第6位】セバスチャン・オジエ

「チャンピオンは燃え尽きてない」

(c)Toyota

Sebastien Ogier
Toyota GAZOO Racing WRT

ナンバー1が帰ってきた。1年前にセミリタイアを宣言して選手権との距離をおいた8度のワールドチャンピオンは、ある意味ですべてをやり尽くして引退の道を選んだはずだった。だが、2022年のラリー・デ・エスパーニャで、彼がみせたあれほどのエネルギーや勝利への強力な意志はいまも彼がナンバー1であることを強く印象づけるものだった。

オジエは昨年、1年前にセミリタイアを宣言して選手権との距離をおいた。ある意味ですべてをやり尽くして引退の道を選んだはずだったし、完全に燃え尽きてこの世界にやや疲れていたようにも見えた。

とはいえ、彼の庭であるモンテカルロでは最終日のパンクとジャンプスタートで勝利を逃すことになったが、そのあとの彼はどことなく精彩を欠くことになった。ポルトガルでパンクとマシンダメージで51位に終わり、昨年優勝したサファリも4位に終わることになった。フル参戦をしない彼は、グラベルラリーでは後方からの有利なスタート順が味方するはずだったが、やはり選手権のタイトルを狙う必要がなくなったときに、彼を動かしてきた強力な動機付けもまた失われてしまったかのようにも見えた。

オジエは2010年にキャリア初勝利を遂げて以来、優勝を逃したのはフォルクスワーゲンの開発に集中するためにトップカテゴリーを離れた2012年だけだった。2022年はキャリア2度目の未勝利のシーズンになる? そんな懸念を吹き飛ばすように、4カ月ぶりに出場したニュージーランドでマシンのフィーリングを取り戻して2位でフィニッシュするや、スペインでは今季初勝利、通算55勝目を飾ることになった。

完全な勝利にも見えるが、エンジンが始動できずにヒヤリとした瞬間もあった。表彰式の直前にトヨタGRヤリスRally1でドーナツターンを行って勝利を祝った。スチュワードはこれを「危険な行為」罰金1500ユーロを課したが、あふれ出す喜びを抑えることはできなかったのだろう。

一年前完全に燃え尽きてこの世界にやや疲れていたようにも見えたオジエが、まだやり残したことがあったことに気付いたかのように、かつてのような強さとともに帰ってきた。ふたたび本気でタイトル奪還を目指す考えはもうないのだろうか。トップを維持するためには多くの犠牲が伴う。オジエは2023年のフル参戦の可能性を笑って否定しているが、すでに彼はこここそ自分が居るべき場所であることに気付いているのではなかろうか。

■セバスチャン・オジエ
生年月日:1983年12月17日(39歳)
タイトル:WRC(2013、2014、2015、2016、2017、2018、2020、2021)
選手権ランキング:6位
獲得ポイント:97点
ベストリザルト:1位
優勝回数:1回
2位の回数:2回
3位の回数:0回
表彰台回数:2回
出場回数:6回
ベストタイム回数:26回
リードしたステージの数:34SS
リタイア数:0回
リスタートの回数:1回
パワーステージ勝利数:1回
パワーステージ獲得ポイント:12点