WRC2021/12/29

【TOP10-第6位】勝田貴元

「ワールドチャンピオンとの優勝争い。」

■勝田貴元

Katsuta Takamoto
Toyota GAZOO Racing WRT

 日本人ラリードライバーがWRCで勝つところを見たい。多くの日本のファンが長年、その瞬間を待ってきたが、その日はついに訪れるかにも見えた。6月のサファリ・ラリー、その最終日に勝田貴元は首位へと浮上、残すところあと2ステージまでラリーを引っ張った。最終的には2位に終わることになったが、ワールドチャンピオンのセバスチャン・オジエと優勝を争った意義は大きい。間違いなく今年のベストハイライトだ。

 新型コロナウイルスによる影響で昨年の参戦プログラムは5戦に減ることになったが、勝田は最終戦モンツァでのパワーステージ勝利を獲得、そのいい流れのままヤリスWRCでの初のフル参戦のプログラムが組まれた2021年シーズンをスタートすることになった。

 開幕戦モンテカルロ、アークティック、クロアチアで3戦連続して6位となったあと、ポルトガル、サルディニアで2戦続けての4位、勢いそのままにサファリを2位でフィニッシュ、キャリア初の表彰台を達成した。

 しかし、サファリ以上に彼が待ち望んできた高速戦エストニアは3位へと浮上したところでコドライバーの負傷で途中棄権することになり、そのあとは不運なクラッシュやコドライバーの変更もあって歯車がかみあわず、がまんのラリーが続くことになった。

 イープルでは大きなクラッシュに見舞われ、アクロポリスは新しいコドライバーの家庭の事情から参戦をキャンセル、ラリーリーダーとして好スタートを切ったフィンランドもコースオフで37位に終わり、スペインでもスタート早々のクラッシュで40位に沈み、最終戦モンツァも7位にとどまった。

 たしかにシーズン終盤は、悪い流れのなかで勝田がミスを嘆くシーンを目にすることも多かったように思う。しかし、オイット・タナクもティエリー・ヌーヴィルも、多くのトップドライバーが頂きの高さを知ったときにスランプを経験してきたように、勝田の後半戦における失速はこれまでよりさらに一段高いレベルへと到達したからこそ経験するものだろう。

 オジエとエルフィン・エヴァンスの最終戦のタイトル争いをふりかえってもわかるように、ここから先、勝田が目指している世界には、運も不運もまた紙一重のシビアなレベルの勝負が待っている。

 勝田はすでにサファリやエストニアでみせたように高速ステージではトップレベルの速さをもつが、新しいステージや急激なグリップレベルの変化には慎重なアプローチも多かったように思う。安全に走り切って経験値を積むことを最優先にしてきたのだろうが、さらに一段高いレベルの戦いを目指すためにはこれからも痛みを伴う経験値の積み重ねが必要になるのだろう。そのためにも今後もひるむことなくスピードに挑み続け、壁を突き抜けてほしい。

 勝田は来シーズン、ハイブリッドシステムを搭載したGRヤリスRally1で全戦に出場する。トヨタGAZOO レーシングが新たに立ち上げるジュニアチーム、トヨタGAZOO レーシング・ワールドラリーチームNext Generationから新しい興奮の物語を紡ぐことになるだろう。

生年月日:1993年3月17日(28歳)
選手権ランキング:7位
獲得ポイント:78点
ベストリザルト:2位
優勝回数:0回
2位の回数:1回
3位の回数:0回
表彰台回数:1回
出場回数:11回
ベストタイム回数:4回
リードしたステージの数:3SS
リタイア数:4回
リスタートの回数:2回
パワーステージ勝利数:0回
パワーステージ獲得ポイント:6点