WRC2021/12/28

【TOP10-第8位】ダニエル・ソルド

(c)Hyundai

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「勝ちたくても勝てない母国戦」

Daniel Sordo
Hyundai Motorsport

 16年という長いキャリアを誇るダニエル・ソルドだが、これまでに達成した3勝のうち2勝をここ3シーズンで挙げているのだから、38歳のいまが一番輝き、彼にとって幸せな時期となっているのかもしれない。近い将来の引退を決意していると噂された今季、それでもソルドは人生がまだ下り坂ではないことを証明することになった。

 今季もヒュンダイから7戦という限定的な参戦ではあったが、それゆえに有利な走行条件で望むことができるグラベルイベントでは通算4度目の勝利も期待されていたはずだ。しかし、長年のコドライバーだったカルロス・デル・バリオとのコンビ解消が、少なからず彼の信条だった安定したペースに影響を及ぼすことになった。

 新しいコドライバーとなったボルハ・ロサーダとの初戦となったポルトガルでは2位となったが、3年連続での勝利が期待されたサルディニアではらしくないミスでクラッシュして17位、サファリでもコース脇の石にヒットしてマシンを止めることになった。

 ソルドはロサーダを名指しで批判することはなかったが、しっくりしないコンビネーションを変えるために、アクロポリスから今季3人目のコドライバーとしてカンディド・カレーラをコクピットに迎えることになった。「ペースノートが少し悪かったし、そのせいでラリー中も自信が持てなかった」と、ソルドは4位となったラリーをふり返った。「すべてのチャンピオンシップに参戦していない以上、トップのペースから引き離されていることは仕方ない」という、どこか諦めにも似たコメントを発することになった。

 ソルドは、母国戦スペインを前に、地元メディアに対して2022年がキャリア最後のシーズンになるだろうと語ったと報道されている。それは、正確には「どうなるのかわからない」とのレベルのコメントに尾ひれがついたものだったようだが、彼は真っ向から引退の時期を否定することなく、「勝利という幻想を求め続ける限りは走り続けられる」と言い残して母国ラウンドをスタートしていった。まるで長年、勝ちたくても勝てなかった母国戦で進退を問おうとしているようだった。

 そのキャリアをふり返ってみれば母国戦での勝利するチャンスはあった。セバスチャン・ローブのナンバー2としてシトロエンに在籍していた2009年のスペインでは土曜日の最終ステージでシトロエンの指示でスローダウンし、チームメイトに勝利を譲ったことは、いつまで経っても記憶から消えることのないキャリア最大の悔恨となっていることを告白したこともあった。

 残念ながら今年もスペインでは優勝には届かなかったが、最終日の4つのステージをすべて制し、セバスチャン・オジエから表彰台を奪ったその走りはまさしく驚異的なものだった。とくに突然の豪雨で湿った最終ステージでのパワーステージ勝利は、彼がトップレベルの走りを今も変わらずにみせられる証だと言えるだろう。

 その信じられないペースは、お別れツアーで母国スペインのファンにみせた最後の輝きだったのだろうか。それとも、まだまだキャリアを続ける確信につながっただろうか。

 ヒュンダイは来季、マニュファクチャラーズ選手権のタイトル奪回を宣言している。表彰台の常連だったクレイグ・ブリーンがチームを離れ、次世代のチームの担い手である若きオリヴァー・ソルベルグが成長の途上にあるだけに、ソルドをあっさり手放すことは考えにくい。

■ダニエル・ソルド
生年月日:1983年5月2日(38歳)
選手権ランキング:6位
獲得ポイント:81点
ベストリザルト:2位
優勝回数:0回
2位の回数:1回
3位の回数:2回
表彰台回数:3回
出場回数:7回
ベストタイム回数:14回
リードしたステージの数:5SS
リタイア数:2回
ラリー2の回数:2回
パワーステージ勝利数:1回
パワーステージ獲得ポイント:11点