Raid2021/07/27

アウディ、ダカール・マシンRS Q e-tron初公開

(c)Audi

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 アウディ・スポーツは、来年のダカール・ラリーでのデビューに向けて開発を進めるRS Q e-tronのプロトタイプ・ダカールマシンを発表するとともにすでに7日間にわたって行われた最初のテストが成功したことを明らかにした。

 電動ドライブトレーンをもつアウディ・モータースポーツのダカール・マシンは、アウディのSUVシリーズの名称を引き継いでいる。全長4.5m、全幅2.3m、全高1.95mで、ルーフに設けられた巨大なエアインテークが印象的なビジュアル要素となっている。2本のスペアタイヤはボディワークの中に隠れる形で搭載され、パワートレインの効率を損なうような空力的なロスを避けるためのアウディの工夫がこらされている。

 アウディのダカールカー、RS Q-etronの心臓部に搭載されるモータージェネレーターユニット(MGU)は非常に複雑で、フォーミュラEやDTMのプログラムを通してアウディが培ってきた技術が活かされている。

 RS Q-etronのパワートレインは3つのMGUをもち、そのうちの1番目のMGU(250kW、33kg)はアクスルの上のノーズセクションに配置されてフロントアクスルを駆動し、リヤアクスルには駆動のための2番目のMGUが搭載されている。このマシンでは重量とスペースを節約し、ただでさえ複雑な駆動システムをシンプルにするために、それぞれのアクスルに小型のシングルギヤ・ギヤボックスが搭載されている。前後アクスルはプロペラシャフトでつながっているわけでなく、アウディが開発した制御ソフトが各アクスルのトルク制御を行い、バーチャルのセンターデファレンシャルの機能によるトルク配分を実現しているという。

 同じデザインの3番目のMGU はフロントアクスルに搭載され、アウディのDTMで開発されていたTFSI 2.0リッター 4気筒ターボエンジンによって高電圧バッテリーを充電するための高効率エネルギーコンバータとして機能する。バッテリーパックは266セル×13モジュールで構成され、容量52kWh、重量は375kgとなる。295リッターの燃料タンクがフロントアクスルに配置される。

 カルロス・サインツとルーカス・クルスがこのプロジェクトの3組のドライバーペアのうち最初にプロトタイプをアウディのテストコースで試走しており、重量が2トンを超える(規定で認められている最低重量は2000kg)サイズにも関わらずローリングやピッチングもなく、コーナーでのクルマを安定させる重量配分に感心したという。

 またサインツとともに、マティアス・エクストローム、ステファン・ペテランセルはその後、ドイツの元ラリードライバー、アルミン・シュワルツが所有するエリア39オフロード施設において、砂地、ダート、雨の中の含めた計200kmほどに及ぶ7日間のテストを行っている。

 生まれたてのプロジェクトにはつきものである細かな問題も生じており、3人のドライバーからは、現在から2022年1月までの間に改善すべき多くの問題点が提示されたようだが、プロジェクト・リーダーのアンドレアス・ルースによると、サインツ、エクスローム、ペテランセルらの最初の印象はかなりポジティブだったという。

「ドライバーたちはクルマに乗り込んだ最初の数分でとても満足していたようだ、もちろんやるべきことは山積みではあるが」とルースは語っている。「それでも我々はこの大きなチャレンジを楽しみにしている。ただそこ行くだけではなく、可能な限りの最高のパフォーマンスを実現したい」

「もちろん、この巨大でユニークな技術と芸術の作品に関しては学習曲線があることも認識している。これはこれまでに我々が製作してきたクルマの中でも最も複雑なレーシングカーで、それはLMP1よりも複雑なものだ。そしてこのクルマで我々は、ラリーレーシングにおいて伝説的なアウディ・クアトロの足跡を辿っていきたい」

 アウディ・スポーツの首脳陣によれば、RS Q-etronのカラーリングはほぼ最終的なもので、エアインテーク、サイドスカート、4つのホイール部分にはグレースケールのパターンに蛍光色を組み合わせたものになっているという。

 RS Q-etronの最終的なデザインはアップデートされる可能性があるが、首脳陣たちは可能な限り最少重量に近づけること、信頼性、そしてソフトウェアといった3つの大きな課題について集中的に取り組んでいるという。

 エネルギー回収システム、エネルギー貯蔵システム、推進システムといった最先端の技術すべてをダカールの過酷なコンディションにおいて相互に完全に機能させるためにも、マシン1台で搭載する4km以上の長さの配線にも注目しているという。

 アウディの計画はテストで可能な限り走行距離を重ねていくことであり、次回のテストはスペインのアラゴンで予定されている。

 さらにアウディは、ダカール・マシンの2号機を8月中には完成させたいと考えている。その活動開始時期は今後数ヶ月の状況次第となるが、プロジェクトマネジャーたちは2022年1月1日のダカール・プロローグランのスタートラインに立つまでに1〜2戦の実戦を走りたいと考えているという。