ERC2019/09/30

アルアッティーヤがキプロス優勝、ルクヤヌク悪夢

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第7戦キプロス・ラリーは29日に最終日を迎え、カタールのナッサー・アル-アッティーヤ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)が6度目のキプロス勝利を飾るとともに、歴代新記録となる15回目の中東ラリー選手権チャンピオンに輝くことになった。

 いっぽう、タイトル争いでは波乱が発生、ゴールまで3ステージを残して2位につけていたロシアのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 R5)がエンジントラブルのためにマシンを止めることになり、3位でフィニッシュした選手権リーダーのクリス・イングラム(シュコダ・ファビアR5)が初タイトルにむけて大きなリードを手にすることになった。

 土曜日のラリー初日を終えて25.4秒のリードを手にしたアル-アッティーヤは、盤石な走りをキープしてラリー最終日をスタートすることになった。SS7、SS8で連続してベストタイムを奪った彼はリードを45.2秒へと拡大、朝のループの最終ステージとなるSS9では道路の岩を避けるためにコースをオフしてヒヤリとさせたが、このトラブルにもかかわらず彼の3連続のベストタイムは妨げられることはなかった。

 アル-アッティーヤは午後のループの3ステージを残して、そのリードを50.9秒へとさらに拡大、2位につけるルクヤヌクに対するアドバンテージを安全圏へと広げることになった。いっぽう、ルクヤヌクは「スリッパリーなコンディションのため(ハードタイヤでは)グリップが感じられない」と不満を述べながらも朝の3ステージすべてにおいて2番手タイムを並べ、昨年の勝者であるサイモス・ガラタリオティス(シュコダ・ファビアR5)との差を昨日より1分以上も広げて1分57秒という大差でポジションを確実なものとしている。

 選手権リーダーのイングラム(シュコダ・ファビアR5)は最終日もセーフティな戦略で挑むことを誓っていたが、昨日がやや保守的な走りだったことを反省してセットアップを柔らかめに変更して「少し攻めてみる」と表彰台への意欲をみせていたが、激しいダストに追撃を阻まれ、ガラタリオティスとの差は44秒以上に開いてしまった。

 イングラムにとっては後方 9.4秒差につけて最終日をスタートした選手権3位につけるウーカシュ・ハバイ(シュコダ・ファビアR5)の存在も気になるところだが、ハバイはSS8を終えてイングラムに6.2秒差まで迫ってきたが、SS9で痛恨のスピンを喫してしまい36秒後方へと遠ざかっている。

 トップ4それぞれが前後にタイム差をもったことで、午後のループではみながペースを守る戦略を維持することになるかに思われた矢先に、思ってもみなかったドラマが起きることになる。

「作戦は継続中だ」と語って午後のループに向かったルクヤヌクがSS10カポウラスの残り1km地点でエンジントラブルのためマシンストップ、彼は続行を諦めてリタイアとなってしまった。

 この結果、ガラタリオティスが2位へと浮上することになったが、アル-アッティーヤのリードは2分48秒へと拡大、大きなアドバンテージを手にした彼はSS11では大きくペースダウン、最後は慎重なペースでラリーをフィニッシュしてキプロスでの6度目の勝利を飾ることになった。

「ここで優勝できて本当にうれしいよ。ここは僕たちにとってお気に入りのラリーだからね」とアル-アッティーヤは語った。

「今年は素晴らしい年だった。9戦に出場して9回の勝利だ。このパフォーマンスには本当に満足しているし、チームとコドライバーのマシュー(・ボーメル)に感謝したい。本当に素晴らしいラリーだった」

 ルクヤヌクがリタイアしたあと、選手権リーダーのイングラムもいっそう荒れてラフなコンディションとなった午後のループではペースダウン、2位のガラタリオティスからは1分13秒遅れとなったものの、3位のポディウムを達成、初タイトルにむけて重要な一歩を踏み出すことになった。

「彼らには残念なことになった。彼らは本当に速かったからね。しかし、それによって僕らは強力なリードを得ることになった。信じられないくらい厳しいラリーだったが、戦略どおりにゴールすることだけを目標に最後まで着実に前進するだけだったよ」とイングラムは戦いをふり返った。

 逆転タイトルを狙うハバイにとっては午後のループも試練となり、電気系の問題によってスロットルが30%しか使えないトラブルに見舞われてポジションダウン、終盤にペースを上げてきたミッコ・ヒルボネン(フォード・フィエスタR5)が2002年以来となるERCイベントを4位でフィニッシュすることになった。

 ハバイは終盤の3ステージで2分近くを失ったがどうにか5位でゴール、選手権ではルクヤヌクを抜いて2位へと浮上、選手権リーダーのイングラムとは18ポイント差となっている。

 また、ERC2のプロダクションカテゴリーは地元のペトロス・パンテリ(三菱ランサーエボリューション)が前日のリードを守ってホームイベントで優勝することになった。ファン・カルロス・アロンソ(三菱ランサーエボリューション)にとっては試練のラリーとなり、最終日もブレーキとギヤボックスに問題を抱えて最後は1速ギヤで4位のゴールとなったが、この結果、彼は最終戦を待たずに初のERC2タイトルを決めている。

 ERC3はラリー・チーム・スペインのエフレン・ヤレナ(プジョー208 R2)が優勝を飾り、彼は前戦で獲得したERC3ジュニアのタイトルに続いてERC3のチャンピオンも確定、2冠を飾ることになった。

 ERC最終戦のラリー・ハンガリーは11月8-10日に開催される。