ERC2019/11/11

イングラムが劇的なERC王座獲得

(c)ERC

(c)ERC

(c)ERC

 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)最終戦のラリー・ハンガリーは10日に最終日を迎え、豪雨のなかで発生した壮絶なドラマの末にトック・スポーツのクリス・イングラム(シュコダ・ファビアR5エボ)が初王座に輝くことになった。イギリス出身のドライバーがERCチャンピオンになったのは、1967年のヴィック・エルフォード以来となる。

 サンテロック・ジュニアチームのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 R5)は、逆転タイトルに望みをつなぐべく、土砂降りの雨でぬかるんだ泥の海のなかでの戦いとなった最終日を44.4秒リードしてスタートしたが、いきなり最初のステージでリヤブレーキを失ってしまい、不安定な挙動のマシンと戦わなければならなかった。

 ルクヤヌクはじわじわとタイムを失いながらもどうにか首位をキープして朝のループを終えることになったが、2位につけていた選手権リーダーのイングラムにはさらなる試練が待っていた。彼は最初のステージでスピンしてエンジンをストールして15秒を失い、さらにSS9ではスタートして早々に右フロントタイヤをパンク、タイヤ交換のために2分あまりをロス、地元ハンガリーのフリジェス・トゥラン(シュコダ・ファビアR5)に2位を譲って3位へと後退することになってしまう。

 それでもイングラムがこのままのポジションでフィニッシュすれば、ルクヤヌクが首位をキープして優勝を飾ったとしてもわずか1ポイント差で逃げ切って初のタイトルを獲得できる計算だ。

 朝のループの走行でひどく荒れた路面となったSS10ディスノウクーの2回目の走行が予定されたSS14がキャンセルとなったため最終ステージはSS13となることが決まり、残されたのはわずか2ステージのみとなったが、タイトル争いを演じてきた二人にさらなる試練のドラマが終盤で発生し、ERCのタイトル争いは劇的な決着を迎えることになった。

 イングラムは最終ステージのSS13でパンクに見舞われて3位から4位へと後退、タイトルのチャンスを失ったかにも見えたが、なんと1分59.秒をリードしていたルクヤヌクも最終ステージで同じくパンクのために3分30秒ものタイムをロス、つかみかけていた優勝を土壇場でトゥランに譲ることになっただけでなく王座をも失ってしまう。
 
 劇的なクライマックスの末に新王座に輝いたイングラムは、予算不足のため参戦中止の危機を救ってくれたすべてのサポーターの支援に応えることができて感謝していると語った。

「ここに来るのは非常に難しい道のりだったが、僕たちはすべてを出し尽くした。僕らを助けてくれたすべての人に感謝したいよ」とイングラムは語った。

「非常につらい年でしたが、タイトルは一人で成し遂げたものではない。多くの人がいなければ、これは不可能だったが、とくに最終日も落ち着いていたロス(・ウィットック、コドライバー)のおかげだ。彼は信じられないほど素晴らしかったからね!」

 トゥランにとっては地元ハンガリーでうれしいERC初優勝を飾ることになり、2位に終わったルクヤヌクは9ポイント差でドライバーズ選手権の連覇を逃したものの、サンテロック・ジュニアチームにチームタイトルをもたらしている。また、モータースポーツ・アイルランドが支援するカルム・デヴァイン(ヒュンダイi20R5)が3位でフィニッシュ、初表彰台を獲得している。

 また、優勝したトゥランから6.8秒遅れの3位で最終日を迎えたERC1ジュニア・チャンピオンのフィリップ・マレシュ(シュコダ・ファビアR5)はパワーステアリングトラブルのためにこの日の朝のステージを走ることなくリタイアに終わっている。