WRC2017/04/29

エヴァンス、波乱アルゼンチンで1分をリード

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 2017年世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・アルゼンチンは、トップグループに波乱が続出するサバイバルの一日となるなか、Mスポーツ・ワールドラリーチームのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)が6つのベストタイムを奪って55.7秒のリードを築いている。

 木曜日の夜に行われたコルドバ市街地ステージで幕を開けたラリー・アルゼンチンは、金曜日からカラムチッタ渓谷へと舞台を移し、本格的な戦いの火蓋を切ることになった。そして、そのオープニングSSとなるSS2サン・アグスティン〜ヴィージャ・ヘネラル・ベルグラノは、SS1でリードを奪った首位のセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)がジャンクションでオーバーシュート、ディッチにオフしてノーズを壊すというドラマで始まることになった。

 火曜日に雨が降ったとはいえ、連日の好天でカラムチッタ渓谷のサンディなステージは完全なドライコンディションとなっており、一番手のポジションで臨んだオジエは柔らかい砂が積もったステージに手を焼き、さらにこのオフもあったために17.9秒をロスして7番手まで後退することになった。

 波乱はこれだけでは収まらない。後続になるほどクリーンな路面コンディションのなかでペースはさらに上がり、8番手からスタートしたヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)がオープニング・スプリットをミシュラン・ユーザーのトップタイムで通過することになった。だが、彼は14km地点でなんと横転、どうにかゴールできたものの2分41秒をロス、昨年のウィナーはいきなり19位まで後退してラリーをスタートすることになった。

 このドラマのなか、9番手という後方からスタートしたエヴァンスがSS2でベストタイムを奪って首位に浮上、同じく7番手という後方のポジションでスタートしたクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)がバンピーなセクションでの着地で大きな衝撃を感じつつも4.6秒差の2番手タイムで続くことになった。

 さらに続くSS3でもエヴァンスは快調なペースをキープ、連続してベストタイムを奪ってミークとの差を8.7秒へと広げることになった。

 そしてここでもヒュンダイ勢に問題が続く。シェイクダウンから速さをみせて3位につけていたダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)がSS3の12.5km地点でステアリングアームを壊してストップ、交換してゴールしたために11分をロス、21位 まで後退することになったのだ。また、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)もSS3で右フロントのダンパーを壊して6位まで順位を落とすことになった。

 完全なサバイバル戦となった朝のループだが、SS4サンタ・ローザで今度はシトロエン勢に悪夢が襲いかかる。首位のエヴァンスは一歩間違えると大きなミスをしかねないと感じてペースをダウンすることになったが、この判断がライバルとの明暗を分けた。2位につけていたミークが12.7km地点の大きなバンプで姿勢を乱して横転、ウィンドスクリーンを割り、フロントバンパーやリヤスポイラーを失った悲惨な姿で6分30秒あまりも遅れてゴールしたものの、ロードセクションでリタイアとなった。

 また、チームメイトのクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)も同じセクションのバンプでフロアを打ったあと5速にスタックするギヤトラブルが発生、5分をロスしてどうにかステージをフィニッシュするも彼もまたリタイアとなった。これでシトロエンは2台を同時に失うことになってしまった。

 ヒュンダイ勢の相次ぐ問題とシトロエンの全滅によってSS4を終えて2位に浮上してきたのはTOYOTA GAZOO Racingのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)。彼はSS2のバンピーなセクションでサンプガードを激しくヒット、SS3ではフロントスポイラーのスプリッターにダメージを負ったほか、エヴァンスからは20.8秒差の3位で続いている。

 つづくSS5はおなじみとなったヴィージャ・カルロスパスのテーマパークに設けられたスーパーSS。グラベルで行われたこのステージに4組目で出走したエヴァンスは、クリーンになった路面の恩恵をここでも受けることになり、朝のループすべてのステージでベストタイムを奪い、ラトバラとの差を30.1秒へと広げてサービスへと戻ってきた。

 朝のループを終えて、ラトバラから5.5秒遅れの3位にはスウェーデン以来となる久しぶりのWRC参戦となったマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタWRC)。オープニングSSでハンドリング不調で9 位からのスタートとなったオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)はステージのあとで行ったセッティング変更が奏功してペースをアップ、SS3、SS4で連続して3番手タイムを奪い、オストベルグと4.2秒差の4位へと順位を上げてきた。

 また、完全にドライとなったサンディなステージで路面掃除に苦しんだオジエはタナクからは1.9秒差の5位、SS3で右フロントダンパーに問題を抱えたヌーヴィルはSS4では右リヤタイヤのバーストに見舞われて20秒あまりをロスしてオジエの8.5秒遅れで続いている。

 ラトバラは2位につけているとはいえ、彼の20秒後方には6位のヌーヴィルまで4人がひしめいており、余裕の表情はない。ラトバラは、午後のループはさらに荒れるだろうと語り、最後まで走り切るために集中して臨むと語った。

 だが、午後のループの最初のステージとなったSS6でラトバラのタイムが上がらない。彼はメキシコの悪夢を再現するようなエンジンのオーバーヒートに見舞われて、ステージのほとんどをセーフティモードで走ることを余儀なくされたために23秒をロス、オストベルグに抜かれて3 位へと後退することになった。彼の4.3秒後方にオジエ、さらに0.7秒差でヌーヴィルが続き、6位のタナクも0.2秒差と大混戦となった。

 ラトバラはロードセクションでチームの指示によってどうにか問題を解決してSS7へと向かったものの、ここで2番手タイムを奪ったオストベルグとの差は9.2秒に広がってしまっただけでなく、彼の2.5秒後方に4位のタナク、0.1秒差でヌーヴィル、1.1秒差でオジエが続き、3〜6位までが3.7秒差にひしめく大混戦となってしまう。彼はこの集団から抜け出すべくペースを上げたものの、SS8をスタートして6km地点で石をヒットしてしまい右リヤタイヤをパンク、30秒を失って6位まで後退してしまった。

 後方でのバトルを余所に、朝のループを4連続ベストタイムで30秒をリードしたエヴァンスは午後のループでもしっかりとした走りでペースをキープ、SS6のベストタイムに続いてSS7でもこの日6つ目のベストタイムを奪い、2位のオストベルグへのリードを47.7秒へと拡大、この日の終盤はペースを少し落とすことになったが、最終的には55.7秒をリードしてアルゼンチンの初日を終えることになった。

 終盤の見所となった3位争いは、朝のトラブルで6位まで順位を下げたヌーヴィルがSS7ではリヤバンパーを失いながらも3位に順位を上げることになった。それでもデイ1を終えて6秒差でオジエ、タナクも10.6秒差の5位で続いており、ラトバラはヌーヴィルからは29.2秒遅れの6位でこの日を終えることになった。

 また、朝のループで横転を喫して19位までポジションを落としたパッドンが午後のループでペースを取り戻し、SS7ではエヴァンスと並ぶベストタイム、SS8でも連続してベストタイムを奪って7位まで順位を戻している。