WRC2019/03/30

エヴァンスがコルシカをリード、タナクが4.5秒差

(c)M-Sport

(c)Toyota

(c)Citroen

 2019年世界ラリー選手権(WRC)第4戦、ツール・ド・コルスは金曜日のDAY1を終えてMスポーツ・フォードWRTのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)が3つのベストタイムを奪ってリード。しかし4.5秒差の2位にはトヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)、9.8秒差の3位にはヒュンダイ・シェル・モービスWRTのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)がつけており、首位争いの行方は予断を許さない状況だ。

 ツール・ド・コルスのDAY1は、バヴェラ(17.60km)、ヴァリンコ(25.94km)、アルタ-ロッカ(17.37km)の3ステージを午前と午後で2回走る合計6SS/121.82kmで争われる。この間サービスは設けられておらず、各クルーは最初のループ後のタイヤフィッティングゾーンでのタイヤ交換しか許されておらず、大きな修理やセッティング変更はもちろん、ミスが許されない一日となる。

 コルシカ島のステージは羊腸の道と呼ばれ、高低差が激しく、タイヤのグリップが一定しないタイヤマネージメントが難しいイベントとして知られている。このラリーに挑むドライバーには「悪魔の細心さと天使の大胆さ」が必要だと言われている所以だ。

 SS1パヴェラは、ラローン峠とバヴェラ峠にアタックする。フィニッシュのバヴェラ峠の標高は海抜1218m。選手権のランキング順に1.タナク、2.セバスチャン・オジエ(シトロエンC3WRC)、3.ヌーヴィル、4.クリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)、5.エヴァンス、6.エサペッカ・ラッピ(シトロエンC3WRC)、7.セバスチャン・ローブ(ヒュンダイi20クーペWRC)、8.ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)、9.ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)、10.テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)の順にオープニングステージに挑んだ。すべてのドライバーがハードタイヤ5本を選択。空は高く冴え渡り快晴だが、風が強く、午前8時半時点のバヴェラ峠の気温は2度と低く、昨年もアンドレアス・ミケルセンがサスペンションを壊したように今年も冷えたコンディションのオープニングステージでは早くも優勝争いが期待されていたドライバーたちがトラブルに見舞われることになった。

 シェイクダウンでベストタイムを奪ったミークは左フロントタイヤをパンクさせて51秒を失って23位と大きく出遅れてしまった。また、このコルシカで過去4回優勝しているローブは、スタートから9.4km地点で縁石にヒットして右のリヤサスペンションを壊してしまう。サスペンションアームをスペアとして搭載していた彼は、ロードセクションで修理をして、何とか走れるようにはなったが、1分59.4秒遅れと致命的なハンディを背負ってしまう。また、オジエもヘアピンでスピンを喫してタイムロス。首位から12.5秒遅れの8番手という苦しいスタートとなってしまった。

 
 先頭ランナーのタナクはSS中に牛に遭遇してペースダウン。それでも首位から3.2秒遅れの4位をキープできたのは幸運だったか。かつてこのコルシカでは、トヨタGAZOOレーシングの指揮を取るトミ・マキネンもSS中に牛に遭遇し壮絶なコースアウトでリタイアを喫したことがあるのだから。

 このステージでベストタイムを刻んだ首位に立ったのはエヴァンス。セカンドベストを記録したヌーヴィルに2.9秒差の首位に立つ。3番手は同じくヒュンダイのソルドがつけた。

 つづくSS2はこの日の最長ステージでもあるヴァリンコ。前ステージでパンクで遅れたミークがベストタイムを奪う。セカンドベストはタナク。彼はこれでエヴァンスを0.6秒上回り首位に浮上した。3位にソルド、4位ヌーヴィルと続く。

 SS3はアルタ-ロッカ。ナローでツイスティなステージは林の中を走る区間が多く、ここでは湿った路面に注意しなければならない。ベストタイムを奪ったのはタナク。「ペースノートが完全ではなかったし、自分のリズムに関しては改善の余地があると思う。とはいえ、クルマの調子はいいし、全体的には満足している」と語る。セカンドベストもヤリスWRCのミーク。大きく出遅れてしまったが、「僕たちのやるべき仕事は、できるだけポジションを挽回することしかない」と9位まで上がってきた。

 総合2位はタナクと0.7秒遅れのサードベストを刻み1.3秒差で食い下がるのはエヴァンス。「クリーンな走りだった。オイットに首位を渡したのは残念だが、ここまではとてもいいよ」と序盤は手応え十分な様子だ。3位は「ペースノートが定まらない」と苦悩するヌーヴィル。4位にソルド、5位にスニネンが続く。「ペースノートが慎重過ぎたのかもしれない」と自身のスピードに納得がいかない様子のラトバラは、首位から21.1秒遅れの6位。7位にラッピ、8位は首位から24.2秒差でオジエというオーダーとなる。

 2回目のループは午後2時過ぎにスタート。空は変わらずに高く澄んでおり、気温は13度まで上がってきた。SS4バヴェラ2では1回目の走行から3秒近くタイムを縮めたエヴァンスがタナクを2.7秒上回って、1.4秒差の首位に復活した。エヴァンスは続くSS5ヴァリンコ2でもベストタイムを叩き出し、タナクとの差を4.5秒とした。

 一方、このSS5ではミークとラトバラに不運が襲う。せっかく追い上げてきたミークは縁石にマシンをヒットさせてしまいサスペンションを破損、ポジションこそこの時点で8位につけるが、ダメージを負ったまま残りのステージをこなさなければならないため大きな後退は必至だ。また、チームメイトに比べてタイムが伸びことに焦りながらもどうにか6位につけていたラトバラは、スタートから2kmほど走ったところでスローパンクチャー。15.3km地点でタイヤ交換をして14位までポジションを落としてしまう。

 DAY1の最終ステージはSS6アルタ-ロッカ2。ここで異変が起こる。前ステージでサスペンションを破損し、このステージを大幅にスローダウンして走ったミークに、後続のエヴァンスが追いつき、パスするのに手間取って11.7秒を失ってタナクに首位を譲るとともに5.9秒遅れの3位へと後退することになった。「僕はミークを良く知っているので、彼がわざとこんなことはしないと分かっている。だがあるべき方法でタイムが救済されることを願っているよ」

 この不測の事態にオーガナイザーはエヴァンスにタナクと同じノーショナルタイムを与える決定を下した。これによってエヴァンスはタナクに4.5秒差の首位で初日を終えることになった。

 3位には9.8秒差でヌーヴィル。午前中のループではマシンに100%の自信が持てないと弱気だった彼だが、午後になって徐々にスピードをあげてきた。「ベストを尽くしているが、スピードがそれについてこない」と不満気なソルドが26.1秒遅れの4位。「マシンのフィーリングはいい。良いポジションにいると思う。とにかく慎重に走らなくてはいけない」と語るスニネンがソルドの4.8秒後方の5位、さらに5.4秒遅れの6位にオジエが続くことになった。

 オジエはSS1でスピンをして出遅れた後もペースが上がらず、「アンダーステアが強く、これ以上は速く走れない。難しい一日だった」と初日を振り返る。オジエの後方10秒差にはラッピ。彼もまた自分のペースが掴めず、苦悩の一日だった。

 DAY2は舞台をコルシカ島北部のバスティア付近に移し、ラリー最長の47.18kmの距離を持つカステニッシアを含む3SSを2回ループする6SS/174.50kmで争われる。