WRC2020/02/17

エヴァンス今季初優勝、ロヴァンペラが初表彰台

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 異常ともいえる温暖な気温と雪不足に悩まされた2020年世界ラリー選手権第2戦ラリー・スウェーデンは、2月16日に最終日を迎え、トヨタGAZOOレーシングWRTのエルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)が今季初優勝を飾ることになった。開幕戦ラリー・モンテカルロでは勝利のゴールを前にして無念にも首位を奪われたエヴァンスだが、スウェーデンでは金曜日のオープニングSSで首位に立つや、難しいコンディションのなかで一度もそれを譲ることなく、最終的にオイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)に12.5秒差をつけて2017年の母国戦ラリーGB以来となる2勝目を獲得することになった。

 また、0.5秒差で最終日を迎えたセバスチャン・オジエとカッレ・ロヴァンペラの注目の3位争いは、ロヴァンペラが初めてパワーステージを制して王者を圧倒、キャリア初のポディウムを達成している。

 ラリー最終日は、当初、最終ステージとして予定されていたSS19トースビー(8.93km)が暖冬のためにキャンセルされ、リケナス・ステージ(21.19km)においてSS17とSS18の2回を走行が予定されていたが、さらに主催者はパワーステージの路面コンディション悪化を避けるために1回目の走行をキャンセル、最終日はSS18の走行のみという前代未聞の状況でスタートすることになった。

 しかし、この週末もっとも雪とアイスの美しいコンディションが期待されたリケナスは、前夜から大雨が降り続き、朝8時の時点ですでに気温は6度まで上昇しており、見るも無惨な状況となってドライバーを待ち受けることになった。スタート序盤のグラベルがむきだしになっていたセクションはマディな海が広がり、フォレストのセクションも溶け出してシャーベットになり始めている。ツイスティな高速コーナーや最高速度200km/hにも達するストレートのラインにはグリップレベルが掴みにくいアイスパッチと水たまりが連続する、まさしくこの週末でも最大の試練になった。

 2位のタナクに対して17.2秒をリードしてこのトリッキーな最終ステージをスタートしたエヴァンスは、もちろん無理をすることなくステディな走りでコーナーを一つずつクリアするが、それでもラリーカーの走行によってさらに悪化したコンディションのなか、マシンは暴れそうになる。ひやりとした瞬間を味わいながらもエヴァンスはタナクからの追撃から逃れてスウェーデン初優勝を飾ることになった。

 エヴァンスは、トヨタに移籍後、わずか2戦目にして勝利を成し遂げることができたのはチームのおかげだと頬を紅潮させた。「チームの皆に感謝したい。彼らは新しいチームに早く馴染むための努力を非常に簡単にしてくれた。この勝利を可能にしてくれた皆に感謝したい。とてもハッピーだよ」

 エヴァンスを逆転するチャンスは現実にはなかったものの、それでもタナクは2位をただ守るだけではなく、ノーポイントに終わったモンテカルロの遅れを挽回するために、ひるむことなくパワーステージに挑むことになった。残念ながらリヤバンパーを壊した彼は、ここでは4番手タイムに終わったものの、恐怖のクラッシュから完全に立ち直ったことを2位のフィニッシュで証明することになった。

「文句を言うつもりはない、今回はゴールできてよかったよ。もちろん、まだ完全なフィーリングをもっていなかったので、僕らはもう少し学ぶ必要がある。しかし、マシンはスピードがあったからね」とタナクは語っている。

 最終日最大のハイライトとなったのは、タナクの後方で激しい3位争いを繰り広げてきたオジエとロヴァンペラのバトルだったが、6度のワールドチャンピオンを相手に臆することない走りをみせたロヴァンペラが逆転、3.9秒差をつけて3位でフィニッシュ、初めてのポディウムを獲得することになった。「全力でドライブした。マシンのフロントタイヤはもうボロボロだと知っていたが、プッシュを続けたよ」

 4位に終わったオジエだが、選手権のためにもこのようなコンディションでリスクを負うことはできなかったと語り、3番手のポジションでスタートする次戦ラリー・メキシコでの巻き返しを誓っていた。「繰り返して言うが、こうしたトリッキーなコンディションで十分なプッシュはしなかったが、少なくともメキシコで良い出走順でスタートできる」

 モンテカルロ勝者としてスウェーデンを一番手でスタートしたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)にとって金曜日のビハインドを取り返すためにはラリーはあまりも短いものだった。パワーステージでも最大ポイントを狙って果敢に攻めたが、5位のエサペッカ・ラッピ(フォード・フィエスタWRC)との5.4秒を逆転するまでには至らず、1.4秒差で6位に終わることになった。

 クレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)はペースを見つけることに苦心しながらも、堅実な走りでチームメイトに続いて7位でフィニッシュ、セバスチャン・ローブの代役を無事に果たすことになった。シェイクダウンでの高速スピンでひやりとさせられたテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)はその後もペースに苦しみ、1年前には首位をキープした得意なはずのスウェーデンで8位に終わることになった。

 TGR WRCチャレンジプログラムの勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)は初のコースオープナーを経験しながらもこの難しいコンディションのなかでノーミスで9位フィニッシュを迎えている。「昨日はかなり良く、学習の一日だった。今日は最もトリッキーなステージで路面も大きく変化し、とても難しかったが、ミスが無かったことは良いことだ」と、勝田は戦いをふり返っている。

 ラリー・スウェーデンは、当初は19SS/300.84kmが予定されていたが、コースコンディションの悪化によって最終的に51%も短縮した9SS/148.55kmで行われ、本来なら優勝ポイントは8ポイントへと減点されるはずだが、FIAはスウェーデンの選手権ポイントについては「例外的な状況」からフルポイントを与えていることを認めており、スウェーデンを終えてドライバーズ選手権ではエヴァンスとヌーヴィルが42ポイントで並ぶことになった。

 それでも選手権ポイントの規定において上位成績の回数に勝ったエヴァンスがそのキャリアで初めて暫定選手権リーダーに立つこととなり、ヌーヴィルは次戦メキシコを2番手でスタートすることになる。3位には37ポイントのオジエ、4位には30ポイントのロヴァンペラが続き、新しいメンバーによる選手権争いを予感させる展開となっている。

 また、マニュファクチャラー選手権ではトヨタが73ポイントして選手権をリード、ヒュンダイが63ポイント、Mスポーツ・フォードが40ポイントで続いている。

 次戦は3月12-15日行われるラリー・メキシコとなり、選手権は8戦連続のグラベルラウンドへと突入する。