WRC2018/06/10

オジエ、ヌーヴィルを3.9秒リードして最終日へ

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 2018年世界ラリー選手権(WRC)第7戦のラリー・イタリア・サルディニアは土曜日のレグ2を終えてMスポーツ・フォード・ワールドラリーチームのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が首位を守ったが、ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が3.9秒差に迫る白熱した展開になっている。

 雨によってトリッキーなコンディションとなった前日とはうって変わって、アルゲーロは青い空が眩しい朝を迎えることになった。

 初日を終えて18.9秒のリードを奪ったオジエだが、オープニングステージはヌーヴィルの反撃ではじまることになった。ヌーヴィルはSS10コイルーナ〜ロエレ(14.95km)でオジエを1.2秒上回ってその差を17.7秒へと縮め、SS11モンチ・ディ・アラ(28.52km)ではふたたび二人の差は19.5秒へと広がったが、SS12モンテ・レルノ(29.11km)ではヌーヴィルがオジエを14.6秒も引き離すベストタイムを叩き出し、二人の差を一気に4.9秒へと縮めることになった。

 素晴らしいタイムでステージをフィニッシュしたヌーヴィルだが、とくにここでギリギリの走りで攻めたわけではないと強調した。「いいステージだったが、前のステージほどではなかった。ここはかなりラフだった。僕たちはチームとチャンピオンシップのために良い結果を持ち帰りたいので、この走りを継続するつもりだ」

 いっぽうオジエは、マシンかドライバーに何かのトラブルがあったのかと質問されたが、落ち着いた声でリズムが悪かっただけだと答えている。「たぶんリズムを間違えた。・・・ステージの終盤、かなりオーバーステアした。午後はもっとプッシュしなければならない」。ステージエンドのオジエはその表情から言葉の真意を読み解くことはできないほど平静を保っていたが、あまりにタイムが縮まったことに心中は穏やかではなかったはずだ。

 ステージはかきだされた岩が数え切れないほど転がっており、さらに路面はいっけんするとドライだが、路面は前日の雨の影響でまだ湿っているところが多く、グリップもけっして十分にあるわけではない。オジエは、「クレイジーに攻めるつもりはなかった。(前戦に続いて)もう一つの悪い結果はごめんだからね」と語り、リスクを侵すことを極力避けた走りだったことをデイサービスで認めていた。

 いっぽうヌーヴィルは、朝のループを終えたあと、サービスに向かうロードセクションでフューエル・プレッシャーに問題を抱えたが、幸いにもサービスで燃料タンクごと交換しており事無きを得ている。

 ヌーヴィル優位の流れは午後のループになっても続くことになり、まるで心の迷いを表しているかのようにオジエは小さなミスを犯してしまう。アルゲーロ近くで行われたSS13チッタ・ディ・イッティリ(1.42km)で彼はスタートでエンジンをストール、2秒を失ってしまい、ヌーヴィルとの差はついに2.9秒へと縮まってしまった。

 しかし、続くSS14コイルーナ〜ロエレ(14.95km)でヌーヴィルがステージ序盤のモトクロスサーキットで右フロントをパンク、ここでベストタイムを奪ったオジエがリードを6.8秒に広げることになった。

「僕にとっては大きなプッシュだった、朝の最後のステージで遅れたことは腹立たしかったし、SS13ではストールしてしまったから、ここではビッグプッシュしたんだ」とオジエは語っている。

 5本のタイヤチョイスで午後のループに臨んだヌーヴィルは、これでスペアタイヤを使い果たしてしまい、一転してピンチに見舞われることになったが、彼はこのあとも慎重に走るつもりはないと語った。「何でそうなったかさっぱり分からない。フィニッシュの3kmか4km手前でパンクした。このあと慎重にいくかって? 答えはノーだ」

 残されたのはSS15モンチ・ディ・アラとSS16モンテレルノの2つの28kmオーバーのロングステージだ。路面はすでにほぼドライコンディションとなっているが、ラリーカーの走行で深い轍が刻まれ、さらに無数の石がかきだされており、リスキーなコンディションとなっている。だが、ヌーヴィルはSS15、16でなんと2連続でベストタイムを奪って、オジエとの差を3.9秒に縮めてサービスに戻ることになった。

「ここではタイヤの摩耗がひどくて、おまけにスペアがない状態で、もう1本パンクしたらお終いだった。でも、僕らはこの走りことを続けることを決断した。これで十分だったのかは分からないが、とにかくトライした。勝負はまだわからないよ」とヌーヴィルはステージエンドで語ってる。

 オジエは、ヌーヴィルとの差を広げるチャンスだったが、SS15ではリズムに乗ることが出来なかったと語った。「マシンに小さな問題があったので、いいリズムで走れなかったんだ。でもこのステージではプッシュした。タイトな勝負になったが、勝ちたいなら戦うしかない」

 残されたポディウムの座をめぐってヤリ-マティ・ラトバラとエサペッカ・ラッピのトヨタGAZOOレーシングのチームメイト同士の戦いになった。

 ラトバラは4.4秒をリードして土曜日をスタートしたが、ラッピがSS10で一気にラトバラの0.9秒後方に迫ったが、SS11、12ではラトバラが連続してチームメイトを上回り、7秒差へとリードを広げている。

 ラッピもSS13でベストタイム、SS14、15でも連続してラトバラを上回ってポディウムへのチャレンジを諦めていないことをアピールしたが、この日最後のSS16ではラトバラが素晴らしい速さをみせてその差を5.3秒へと広げて3位を守ることになった。

 だが、アルゲーロに向かうロードセクションでラトバラはマシンストップ、修理を試みたが、オルタネータに問題があるため再始動を断念、彼はここでリタイアとなってしまった。

 4位に順位を上げたのはヒュンダイのヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)。彼はドライになり始めた朝のステージで勢いを取り戻し、グリップに苦戦するマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 WRC)をパスすることに成功しているが、二人の差はわずか2.1秒にすぎない。

 6位には路面掃除に苦しんだクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)、7位にはWRC2リーダーのヤン・コペツキ(シュコダ・ファビアR5)が続き、前日の冷却系のトラブルでリタイアとなったオット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)も8位まで順位を戻している。

 明日の最終日はカーラ・フルミーニとサッサリ〜アルジェンティエラの2つのステージを2回走る4SS/42.04kmという短い一日だ。オジエが逃げきって今季4勝目を飾るのか、それともヌーヴィルが選手権でのリードをさらに広げることになるのか。選手権の行方を大きく左右する最終日になりそうだ。