WRC2018/04/08

オジエがコルシカを独走、タナクが2位に浮上

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 世界ラリー選手権(WRC)第4戦ツール・ド・コルスは、土曜日にDAY2の競技が行われ、Mスポーツ・フォード・ワールドラリーチームのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が44.5秒にリードを拡大するいっぽうで2位争いは熾烈な戦いとなり、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が最終ステージでティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)を0.1秒差で逆転して2位につけることになった。

 土曜日の朝は、かつての輝きを取り戻したような素晴らしい走りを披露したシトロエン・レーシングのセバスチャン・ローブ(シトロエンC3 WRC)の目の覚めるようなベストタイムで始まった。

 ローブは金曜日、2位につけていながらクラッシュでリタイア、ラリー2の規定に基づいて土曜日のステージに帰ってきた。土曜日はバスティアよりさらに北部のカニヤノ〜ピノ〜カナーリ(35.61km)という島東部から西部へと横断するステージからスタート、1995年以来初めて行われるため誰にとっても初体験のこのステージでローブはベストタイム。さらに続く、こちらも新しいデザート・デ・アグリエット(15.45km)でも連続してベストタイムを奪うことになった。

 観客たちにはさぞかし驚きだっただろうか、ステージエンドのローブには興奮はなく、「OK、全然問題ない、上手くいった。僕が速く走れるのは分かっていたよ。昨日のことがあってから今はただ走ることを楽しんでいる。悔しいけど、これが現実だから仕方ない。楽しむことにするよ」と総合34位につけるローブは語った。

 いっぽう、初日を首位で終えたオジエは朝の2つのステージでともにヌーヴィルとの差をじわじわと広げてリードを38.4秒とすることになった。ヌーヴィルは、オープニングSSで3位につけるクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)に0.5秒差に詰められたが、SS6でミークは縁石にヒットしたためパンクを疑い、2.3秒差と二人の差はふたたび広がった。それでもオジエとの差がさらに広がったことにヌーヴィルの心中は穏やかではない。

「僕のペースノートはそれほど楽観的なものではない、スタートしてすぐ、何度かワイドに行ってしまった。また、あちこちでクルマがブレてハンドリングに苦労している。正直なところこれ以上僕にできることはない。このクルマはこういうコンディションには不向きのようだ」と語り、追撃は厳しい状況となってきたことをヌーヴィルは認めることになった。

 オジエはSS7ノヴェラでもヌーヴィルを上回り、リードを41.6秒へと拡大してバスティアのサービスへと戻ってきた。必要であれば慎重に走った朝の2つのステージでも午後、さらにペースを上げることができると考えているようだが、すでにもはやリスクを冒す必要のないほどのリードとなっている。

「最初のステージではペースノートを確認しようとした。それは全く新しいステージだったし、全開で行くのは簡単ではなかった。今日は100%でドライブしていない。クリーンに走っている。特に汚れた部分ではね。いまの状況では完全なリスクを取るつもりはないよ」とオジエは説明した。

 ヌーヴィルはグリップに不満をもちながらも2位をキープ、縁石にヒットしたあとリズムを失ったかに見えるミークとの差を5.2秒に広げて朝のループを終えることになった。

 だが、朝にループの主役はトップ3の彼らではない。ツイスティなステージに苦しんだトヨタ勢はドライコンディションになったこの日、見違えるような速さをみせて上位陣に襲いかかることになった。

 総合4位でスタートしたオット・タナク(ヤリスWRC)はSS5ではヘアピンでハンドブレーキを引いた際に2度、エンジンストールに見舞われたが、SS6の2番手タイム、さらにSS7ではベストタイムを奪ってついにミークの2.1秒差に迫ることになったのだ。

 また、初日の最終ステージでベストタイムを奪って5位につけるエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)も、SS5で2番手、SS6とSS7では連続して3番手タイムを奪い、後方のダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)を突き放してタナクの22秒後方に迫ってきた。

 ラッピはさらにバスティアのサービスを挟んで最初のステージとなるSS8でついにベストタイムを獲得、さらに彼はSS9でもローブに続く2番手タイムでタナクの10.4秒差へと迫ることになった。

 トヨタ勢の勢いに対して2位をキープしてヌーヴィルは浮かぬ顔で午後のループをスタートすることになった。彼はSS8でミークに2.5秒差に迫られ、「サービスで行ったセッティングが間違いだった」と怒っていたが、次のSS9でも解決策は見つからず。このステージで4番手タイムを奪ったミークがついにヌーヴィルと同タイムで並んで2位に浮上することになった。

 しかし、2位争いはもはや二人だけのものではない。二人の3.1秒後方にはタナクが続くだけでなく、5位のラッピも二人から13.5秒に迫って、波乱の最終ステージを迎えることになった。なんと2位に順位を上げたばかりのミークがペースノートの聞き間違いからコースオフ、昨年もエンジンを壊してマシンを止めたノヴェラのステージでまたも彼はラリーを終えることになってしまった。

 このステージではタナクとラッピが並んでベストタイム、タナクがヌーヴィルを0.1秒抜いて2位に浮上することになった。ヌーヴィルは怒りにも似た表情で「言うことは何もないよ!頑張って頑張って頑張っているが、もしこんな感じが続いたら、僕たちもコースオフしてしまうだろう」と吐き捨てるように語った。

 首位のオジエは2位争いのバトルを尻目にリードを44.5秒に広げて二日目も首位を守りきった。「常に何でも起こり得るので、僕は余計なリスクは取らないし、まだコントロールできていると感じている。しかし、もし誰かが100%コントロールできていると語ったら、それは嘘だ」と彼は午後のステージで語っていたが、勝利を十分確信できるだけのマージンをもって最終日に臨むことになる。

 オジエと2位のタナクとの差は大きなものとなっているが、ヌーヴィルがタナクの後方0.1秒差の3位、ラッピもタナクまで10.4秒差の4位で続いており、ポディウムバトルは最終日も続きそうだ。

 エルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)はSS6でエンジンをストールさせてしまいダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)に抜かれたが、二人は激しい5位戦いを続けており、ソルドが3.1秒をリードして最終日に臨むことになる。

 チームメイトの躍進と対照的にヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)はSS8の16.7km地点で立ち木にクラッシュ、右リヤに大きなダメージを負って18分遅れでステージをフィニッシュするも続行を断念することになった。

 最終日はバスティアの朝のサービスのあとノーサービスの一日となり、1986年以降最長となるヴェロ〜サロラ-カルコピノ(55.17km)のあと、そのままのタイヤでペニトッシエ〜コティ-シアヴァーリ(16.25km)のパワーステージを走ることになる。2SS/71.42kmという短い一日だが、タイヤに厳しい最終日になりそうだ。