WRC2018/04/09

オジエがコルシカ完勝、今季3勝目を獲得

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 2018年WRC世界ラリー選手権第4戦ツール・ド・コルスは、Mスポーツ・フォード・ワールドラリーチームのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が終始ラリーをリード。前戦メキシコに続いて連勝を飾り、今来3勝目を獲得した。総合2位には、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)、総合3位にはヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が入った。

 コルシカの最終日はわずか2つのSSで争われるが、1つ目のSS11は55.17kmと、今季これまでで最長のステージ。続いて16.25kmのSS12が、最終のパワーステージとして争われる。

 2日目を終えた時点でトップのオジエが44.5秒と盤石と言えるリードを築いていたため、注目は2位、3位争いの行方であった。2位のタナクと3位ヌーヴィルの差はわずか0.1秒。その10秒後方にエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)がつけており、この3人が白熱する2位争いを繰り広げると思われた。

 この日のオープニングステージとなるヴェロ〜サロラ-カルコピノは、実質今回から初めて導入された新しいステージで、すべてのドライバーにとって未知のコースだ。ヤシの木立の中をこのイベント最高地点885mまで登った後、ツイスティなダウンヒルの道が続く。「1万コーナーのラリー」と呼ばれるツール・ド・コルスを象徴するかのような、長く曲がりくねった難しいコースがドライバーたちを待ち構える。

 熾烈な2位争いで、最初に脱落したのはラッピだった。縁石にタイヤをヒットさせてパンク。ホイールまでダメージが及んでいたため、タイヤ交換を余儀なくされる。ラッピは1分55秒を失って、総合7位に後退してしまった。「まだ温まっていないタイヤのまま、コーナーでリヤのコントロールを失い、縁石にヒットさせてしまった。完全に僕のミスだ」と、悔しさをにじませる。

 タナクは「アンダーステアが少し増して昨日みたいにプッシュすることができない」と車が万全ではないと認めつつも、このステージで最速タイムを刻む。一方、タナクの前に出て2位を取り戻したいヌーヴィルだが、タナクよりも遅いタイムで差を13.3秒に広げられてしまう。残されたステージは16.25kmしかないため、ヌーヴィルがタナクを抜くことはもはや難しそうだ。

 トップのオジエはタナクより13.5秒遅いステージ4番手タイムで、「ここまで仕事はきっちりできている。パワーステージでも少しポイントが獲れたらいいね」と、無理をせず完全にコントロール状態にいることが明らかだった。

 ライブTVで中継されるペニットシエからコティ=シアヴァーリまでの16.25kmのパワーステージは、2018年から採用された新しいステージだ。

 オジエがステージ3番手の堅実な走りでフィニッシュ。SS1でトップに立ってから1度も他者に首位の座を譲ることなく、圧巻と言える強さで優勝を手にした。

「良い週末だった。金曜日の自分たちのパフォーマンスにはかなり満足しているし、マシンが進歩していることはとても良いニュースだ。マシンは去年よりもさらに速くなっていた」と喜びの声を述べるオジエ。前年の序盤はマシンのトラブルやパフォーマンスに苦しめられたものの、今季は4戦目にしてすでに3勝を挙げており、選手権で2位ヌーヴィルとのリードを17ポイントに広げて首位に立っている。

 タナクがステージを5番手タイムで走り終え、総合2位を獲得した。「正直に言って、僕はあまり不満はない。長い間、コルシカは僕の最も苦手なイベントだったので、最大限までプッシュすることは出来なかったが、常に安定した走りができた。全体的に、良い週末となった」と、2位でフィニッシュしたことに満足の様子。トヨタにとっては、開幕戦モンテカルロ以来の表彰台となった。

 ヌーヴィルは前ステージで2位タナクとの差を広げられてしまったことから、せめてパワーステージでできるだけ多くのポイントを獲得したいところ。しかし、ステージを走るヌーヴィルのマシンからは、異常なエンジン音が響き、明らかに4気筒ではない様子だ。結果ステージ9番手のタイムとなり、ボーナスポイント獲得はならなかった。ステージを走り終えたヌーヴィルは、TVカメラの前でも不満な表情を隠さず、無言で走り去ってしまった。それでも、4位のダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)との差が十分あったことから、総合3位の座は守りきることができた。

 総合4位のソルドは「僕たちはペースが出せなかったので失望している。最終的にそんなに悪くなかったが、僕たちは次のターマックラリーに向けてもう少し取り組む必要がある」と、終始、満足のいくパフォーマンスが出せなかったことを悔やんだ。

 5番手には、どのステージでも速いタイムを出すことはできなかったものの、最後まで堅実に走りきったエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)が入った。エヴァンスは前戦でコドライバーのダン・バリットが負傷したために、かつてペター・ソルベルグと組んでいたフィル・ミルズとともに本ラリーを戦った。ラリーをフィニッシュしたエヴァンスは「僕たちは常に順風満帆とはいかないと知っていた。フィルは信じられないほど素晴らしかった。このラリーは最もノートをつけるのが難しいラリーの一つだ。彼にはこれ以上なく感謝している」と、ミルズへの感謝を述べた。

 パワーステージを制したのは、パンクにより表彰台争いから脱落したラッピだ。「昨日は非常にポジティブな一日だったし、適切なセットアップを見つけることができた。今日も同様に良かったが、小さなミスを犯し、ホイールが壊れて、タイヤを変えなくてはならなかった」とコメント。順位を1つ上げて、総合6位でフィニッシュした。

 アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)は、パワーステージで8番手タイムとなり、順位を1つ落として総合7位でラリーを終えた。

 前戦メキシコに続いて、このラリーにもシトロエン・レーシングからセバスチャン・ローブ(シトロエンC3 WRC)がスポット参戦した。ローブにとっては10年ぶりのコルシカだったが、過去に4勝しており、得意とするラリーの1つだ。初日のコースオフでデイリタイヤとなったため、上位争いに加わることはできなくなったものの、再出走で戻ってきた2日目以降はステージウィンを連発。パワーステージでは、ラッピに続く2番手タイムを叩き出した。

 ラリーを終えたローブは「良いリズムだということは分かっていた。ミスは残念だったが、それを忘れてドライブを楽しんだよ」と述べた。期待されていたセバスチャン・オジエとの真っ向対決はならなかったものの、現役ドライバーを上回るタイムを何度も刻み、腕がまったく衰えていないことを証明した。ローブの次の参戦は、第12戦スペインとなる。

 WRCの次戦は、4月26〜29日に開催されるラリー・アルゼンチン。オジエはカレンダー中で唯一アルゼンチンでは未勝利ゆえに、「アルゼンチンでは勝てない」というジンクスをはねのけたいところだが、グラベルラリーで先頭出走となるため、苦戦を強いられそうだ。