WRC2019/09/15

オジエがトルコ首位へ、シトロエンが1-2を堅持

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 世界ラリー選手権第11戦のラリー・トルコは14日にレグ2を迎え、セバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)が首位に浮上、前日のリーダーであるエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)も0.2秒差で続き、この日もシトロエン・レーシングが1-2態勢を維持した。

 土曜日は、海岸沿いのイェシルベルデ(33.00km)からダッチャ半島の先端のダッチャ(8.75km)へと向かい、海岸線を曲がりくねって東へと進む新しいクズラン(13.15km)の3ステージを2回ループする6SS/109.80kmの一日。朝8時の時点での気温は27度、昨日のように雨が降ることはなく35度近くまで気温が上昇し、いっそう厳しい暑さになると天気予報は伝えている。

 レグ2のオープニングステージ、SS8イェシルベルデは、オジエから0.7秒遅れでこの日を迎えたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)のドラマとともに始まることになった。

 ヌーヴィルは昨年、ラリーをリードして迎えたこのイェシルベルデでサスペンションのアッパーマウントを破損してリタイアになっており、2年連続して悪夢のステージとなってしまった。彼は17km地点の低速の左コーナーでダストで視界を失ってコースオフ、マシンは斜面をゆっくりと転がってディッチに逆さまにストップすることになった。

 幸いにもマシンはフロントダンパーに小さなダメージを負っただけだったため、ヌーヴィルは観客の助けを借りてどうにかコース復帰に成功するも、脱出に手間取ってしまってしまったために4分あまりをロス、上位でのフィニッシュが絶望的な9位まで後退することになった。

 ステージエンドへと辿り着いたヌーヴィルは、起きてしまった出来事の大きさに打ちひしがれているように3分間隔のスタートインターバルを非難した。「ダストの中で超低速左コーナーが見えなかった。石ころがあってコースを外れてしまった。・・・必死に戻ろうとしたんだけどね、なぜ昨日まで4分のインターバルなのに今日は3分になったのか理解できないよ」

 ヌーヴィルの不運とは対照的にこのステージで素晴らしい走りをみせたのはオジエだ。ほとんどのドライバーがオールハードタイヤを選ぶなか、オジエだけがミディアム3本とハード2本を選ぶギャンブルを敢行、後続を16.7秒も突き放す驚異的なベストタイムでラリーリーダーのラッピまで1秒差に迫ることになった。

 オジエはいい朝になったことにステージエンドで笑顔をみせた。彼にとっては、驚くべきことにラリー・イタリア・サルディニアのSS1以来、3カ月ぶりのベストタイムだ。「ステージのためにタイヤをセーブすることを心がけた。ここまでタイムはいい感じだ」

 ラッピはオジエに大きく迫られたことは意に返してはいない。チームメイトの速さを追い掛けることなく、冷静に自身の走りを続ける考えだ。「それについては僕は大丈夫だ。セブはとんでもないタイムを出している!僕はそこまでタイヤ消耗をマネージメントするのは得意じゃないから、ミディアムは使えないよ」

 続くSS9ダッチャのステージのスタート前に衝撃のニュースが最前線を揺るがすことになる。なんと金曜日のパンクで8位でこの日を迎えていたオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がロードセクションでマシンストップ。彼はチームと無線でやりとりをしながらワイヤリングのチェックや燃料系のリセットを試みたが再始動はできず、リタイアとなってしまった。

 ヌーヴィルの横転につづき、選手権リーダーのタナクが不運に見舞われたことで、選手権の3位につけるオジエにとってはポイントを挽回する大きなチャンスとなった。オジエは昨年、まさしくこのダッチャのステージでサスペンションを破損して首位を失っただけにここではセーフティな走りに切り変えてペースをダウンすることになる。

 SS9ダッチャで2番手タイム、SS10クズランでベストタイムを奪ったラッピはオジエとの差を10秒へと広げることになったが、二人はシトロエンの1-2態勢をキープしてアスパランのサービスへと帰ってきた。

 オジエは、選手権のための計算をしているわけではなくハードとミディアムの組み合わせがギリギリだったと額の汗をぬぐいながら説明した。「タイヤがギリギリだった。まだまだ一日は長い。僕は昨年、この2日目に苦戦したんだ、とにかくやるしかない。選手権のポイントをカウントするのは明日の最後になってからだ」

 デイサービスが行われた昼の時点で気温は33度まで上昇、午後のループは厳しい暑さとの戦いになった。サービス後の最初のステージとなったイェシルベルデは33kmという長く厳しいハードな路面となり、すべてのドライバーがオールハードで臨んでいたにもかかわらず、タイヤの摩耗に苦しめられることになり、ステージエンドでマシンを飛び降りてタイヤをチェックするドライバーも少なくなかった。

 このなかには、ベストタイムを奪ってラッピに2.2秒差まで迫ったオジエも含まれており、多くのドライバーと同様に彼のフロントタイヤもすりきれてスリックに近い状態だ。オジエは続くSS12ダッチャではこの日の最後のステージのためにタイヤを温存して慎重なペースで走りきるも、ラッピは下りのタイトターンのブレーキングでエンジンをストール、オーバーシュートしてしまい6.9秒をロス、オジエが首位に立つことになる。

 しかし、4.7秒差の2位に落ちたラッピも最後まで諦めない。SS13クズラン・ステージでこの週末で3つめとなるステージウィンを奪い、オジエの0.2秒後方でゴールを迎えることになった。

 ラッピはステージエンドで素晴らしい走りができたことに満足した一日だったと語り、明日は熾烈な首位争いをすることなくオジエの選手権のためのバップアップを約束した。「僕たちがリードをなくしたことは気にならないよ。たとえ僕たちが明日もリードしないとしても、セブにとってポイントは重要なので、僕は彼をバックアップするつもりだ」

 選手権リーダーのタナクがデイリタイアとなり、ポイント圏内のトップ10フィニッシュが不可能な状況だけに、オジエは首位のまま明日ゴールをむかえれば、選手権でのビハインドは40ポイントから15ポイント差へ縮めることは可能となる。走行ポジションも一番手でスタートするタナクにとっては不利な状況だろう。しかし、オジエは笑顔をみせながらも、厳しい表情を失っていない。「非常に良い一日だった。トラブルもなく、良いリズムだった。僕たちは良いプレテストができたので、前向きな気持ちでこのラリーに臨んだ。選手権にとってもいい状況だが、明日はまだ厳しいステージが残っているので、僕らは最終日に集中しなければならない」

 ラッピから1分あまり遅れた3位で続くのはアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)。SS9ダッチャでベストタイムを奪った彼は、テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)を抜いてふたたびポディウム圏内へと挽回してきた。しかし、ミケルセンに抜かれたとはいえスニネンはそのまま引き離されることなく、エアロを壊しながらも9.8秒差で続いている。

 タナクがリタイアしたことで、トヨタ勢にとってはいよいよミスができない状況となった。クズランでスピンをしたクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)を抜いて、ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が6位へと浮上してきたが、もちろんターゲットはチームメイトではなく、マニュファクチャラー選手権のライバルとなる前方を走るダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)だ。

 しかし、ソルドはトヨタ勢のプレッシャーをものともせずにじわじわと引き離して5位のポジションを守るとともに50秒近い彼方へとトヨタの二人を突き放してみせた。

 ミークは、ロングステージでタイヤを摩耗させすぎてペースを落としたラトバラをSS12で逆転したものの、彼もまたすり減ってグリップを失ったタイヤでSS13でオフしてしまい、6位ラトバラ、7位ミークの順で土曜日を終えている。

 朝のループの横転がひびいたヌーヴィルは8位でフィニッシュ、トヨタ勢とは1分以上の差が開いているが、彼は諦めることなくSS12でベストタイム、最終ステージでも2番手タイムを奪って明日のパワーステージにむけてウォームアップをはかっているようだった。「明日のパワーステージで可能な限り持ち帰るしかないからね。今日はがっかりしたが、パワーステージのポイントをとって、笑顔でホームに戻りたい」

 ラリー・トルコはドラマチックな3日間の競技を終えて、あとは4SS/38.62kmという短い最終日だけが残された状況だ。はたしてオジエがこのままトラブルなく逃げ切ってラリー・メキシコ以来となる半年ぶりの勝利を飾ることになるのか、パワーステージでのボーナスポイントの行方も気になるところだ。オープニングSSのマルマリス・ステージは現地時間9時38分(日本時間15時38分)のスタートが予定されている。