WRC2019/03/11

オジエがメキシコで5度目優勝、タナクが逆転で2位

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第3戦ラリー・メキシコは、シトロエン・レーシングのセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)が2位のオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)に30.2秒差をつけてトップでフィニッシュ、開幕戦モンテカルロに続いて今季2勝目、メキシコでは通算5度目の勝利を飾ることになった。

 ヒヤリとさせるパンクはあったものの土曜日までの戦いを掌握してきたオジエは27秒という大きなマージンをもって最終日を迎えており、これ以上のタイヤの問題さえなければ、逃げ切ることができそうな状況となっている。しかし、彼の後方のエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)と3位のタナクはわずか2.2秒の僅差、ホットな2位争いに注目が集まることになる。
 
 最終日はノーサービスで3SS/60kmを走るためタイヤの選択も重要になるが、トップ3のタイヤは大きく分かれた。エヴァンスはミディアム5本、タナクはハード4本にミディアム1本、オジエはハード2本とミディアム3本を組み合わせる。

 昼近くには30度を超えるとの情報だが、オープニングSSアルファロ(21.01km)が始まる8時半の時点での気温はまだ19度、ダスティなこのステージではハードタイヤのタナクが苦戦する可能性もあるとの予想もあった。アルファロに含まれる2つのセクションは、土曜日のオタテスのステージでも使用されてきたとはいえ、7番手の走行ポジションでステージを走行するタナクの時点でもまだまだ路面はダスティであり、ハード4本はややギャンブルかにも見えたが、彼は「路面はルースだったのでスリッパリーだった」としながらもエヴァンスに4.2秒差をつけるベストタイム、2秒差ながら逆転に成功してついに2位へと浮上することになった。

「ここは朝のステージのなかでは最悪だが、このあとの2つのステージはもっと良くなるだろう」とタナクはタイヤチョイスへの自信をみせる。いっぽうのエヴァンスも戦いを諦めたわけではない。「僕たちはトライし続ける。このステージは悪くなかった。フィーリングも良かったので、次のステージでもっとプッシュできる!」

 タナクはエヴァンスの決意を見抜いているかのように続くSS21メサ・クアタ(25.07km)でもタイヤを温存などしてないかのような走りをみせて、ライバルを突き放しにかかる。そして、彼はここでもエヴァンスに5.2秒差をつけるベストタイム、7.2秒差をつけることになった。

 3本のミディアムタイヤを選択したオジエにとっては、いかに最終ステージまでタイヤをマネージメントするか重要な最終日となったが、彼は朝の2つのステージをともにタナクに続く2番手タイムで続き、メサ・クアタを終えてリードを24.4秒として最終ステージを迎えることになった。

 そして迎えた最終ステージのラス・ミナース(10.27km)。金曜日に行われた1回目の走行でタナクは一番手というもっとも大きなハンデを抱えながらもこのステージで圧巻のベストタイムを奪い、また昨年もパワーステージとして行われたこのステージでもベストタイムを奪い、まさしくメキシコでもっとも得意としているステージだ。だが、タナクは残り7km地点でパンク、ボーナスポイントを断念して2位を確実にする走りでフィニッシュ、エヴァンスも着実な走りで今季初のポディウムを獲得することになった。

 オジエは最終ステージでもペースを緩めずにトップでフィニッシュ、1/1000秒まで計測される最後のパワーステージで0.025秒差でクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)を下してボーナス最大ポイントを獲得することに成功、前戦スウェーデンの敗北をとりかえしてドライバーズ選手権でも2位に浮上、選手権リーダーのタナクに4ポイント差に迫ることになった。さらにシトロエンはこの勝利でマニュファクチャラー選手権でヒュンダイを逆転、トップのトヨタに8ポイント差の2位に浮上することになった。

 3日間で2度もパンクに見舞われながらも、完璧な勝利でメキシコでの5度目の優勝を飾ったオジエは、「ここはいつだって特別な場所だった。今もそれは変わらないみたいだ」と感極まったように語った。「僕たちにとっては決してトラブルフリーな週末ではなかったが、最後は問題なく終われて本当に良かった。コルシカでも同じところを目指していく、勝利を掴んで、最高ポイントをゲットするよ!」

 金曜日のオープニングSSのパンクにとって9位まで沈んだティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は4位まで追い上げて最終日を迎えたが、ポディウム圏内までは50秒近く離れており、無理してタイムを縮める状況にはない。最終日の朝の2つのステージを3番手タイム、4番手タイムで最終ステージでのボーナスに賭けたが、擦り切れたタイヤでオジエから0.557秒差の3番手タイムに終わることになり、ドライバーズ選手権でもオジエから6ポイント差の3位へと一歩後退することになった。

 ミークは一瞬ではあったが、土曜日にトヨタに移籍後初めて首位に立って優勝が期待されながらもパンクとサスペンショントラブルでトップ争いから脱落することになった。最終日をヌーヴィルから3分20秒遅れの5位で迎え、後続も7分以上離れているため、彼はまるでエンジントラブルを思わせるかのようにペースダウン、タイヤを温存して最終ステージでのボーナスポイントに賭けたが、0.025秒差で最大ポイントを逃すことになった。それでも彼は見事2番手タイムで貴重なポイントを持ち帰り、ドライバーズ選手権でも4位をキープしている。

 また地元のベニート・グエラ(シュコダ・ファビアR5)がWRC2優勝を飾るとともに、キャリア最上位となる総合6位でのフィニッシュを迎えている。

 フロントバンパーを失った無惨な姿で7位でフィニッシュしたのはヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)だ。金曜日にオルタネータートラブルでリタイアとなった彼はパワーステージのボーナスポイントに照準をあわせるも、SS21メサ・クアタでラジエーターを破損、応急修理でどうにかゴールを迎える。「右コーナーにあった岩床にヒットしてラジエーターが壊れてしまった。クルマに積んであった接着材のようなケミカルでラジエーターを修理して、水をペットボトルで汲むために川まで500メートル走らなければならなかった・・・」と、彼は最後まで不運な週末を嘆くこととなった。

 WRC次戦は、3月28〜31日に行われるツール・ド・コルスだ。地中海のコルシカ島に舞台を移して行われる今季初のターマックラウンドで選手権の流れはもっと見えてくるだろうか。