WRC2019/03/09

オジエが波乱メキシコのDAY1をリード

(c)Michelin

(c)M-Sport

(c)Toyota

 2019年世界ラリー選手権(WRC)第3戦ラリー・グアナファト・メキシコは、金曜日までのDAY1を終えて、シトロエン・トタルWRTのセバスチャン・オジエ(シトロエンC3WRC)が2位のエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)に14.8秒の差をつけて首位に立っている。

 ラリーは木曜日の夜、世界遺産にもなっている銀鉱山跡の地下トンネルを舞台とした1.14kmのストリートステージで幕を開けた。このステージでベストタイムを刻んだのはエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3WRC)。彼はステージの後半に設けられたジャンプ台の着地でマシンのノーズ部分を激しく地面にヒットさせ、大きな火花を上げるほどのアグレッシブな走りを見せた。しかし、このジャンプ台はやや過剰な演出で、多くのドライバーがマシンの姿勢を乱すなど物議を醸すものとなった。結局、クリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)が走行後、ジャンプ台そのものが破損したことで、安全のためにステージは打ち切られてしまう。そのためWRカー勢で最後に走行予定だったセバスチャン・オジエ、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)、オイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)にはキャンセル直前に走ったミークが記録した3番手タイムが与えられることになった。

 翌金曜日、ラリーは本格的な山岳ステージへと駒を進める。標高2737mを走るエル・チョコラテ(31.57km)と標高2756mのオルテガ(17.28km)のふたつのステージを走行し、サービスパークの置かれたレオン近郊に設けられた1.11kmのストリートステージをこなした後、サービスを受ける。午後は再びエル・チョコラテとオルテガを走り、その後は10.72kmのラス・ミナースを走行。レオン郊外のミニサーキット場、オートドローモ・デ・レオンのスーパーSS(2.33km)を2回走る。8SS/114.19kmの長い一日となる。

 1回目のエル・チョコラテのステージが始まる10時の気温は約22度。空は高く晴れ渡っている。選手権リーダーのタナクをトップに3分間隔でスタート。1:タナク、2:ヌーヴィル、3:オジエ、4:ミーク、5:ラッピ、6:エヴァンス、7アンドレアス:ミケルセン(ヒュンダイi20クーペ)、8:ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)、9:テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)、10:ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)の出走順となる。

 ここではミケルセンがベストタイムを奪い、首位に浮上する。「僕にとってはクリーンなステージだった。マシンのフィーリングは素晴らしかった」とコメント。2.4秒差のセカンドベストを刻んだオジエが総合順位でも2位につけたが、「恐ろしいくらいにグリップが低い。難しい」と表情は曇りがちだ。選手権リーダーのタナクは先頭スタートのハンディもあって21.4秒遅れの8番手タイム。ヌーヴィルは左リヤタイヤのトレッドが剥がれた状態でゴールし、40秒あまりを失っている。またこのステージではスタートから13.5km地点でスニネンがコースオフし、デイリタイアとなっている。

 今季のWRCでもっとも標高の高い場所を走るオルテガは、ハイスピードで流れるようなコーナーが連なるドライバーにも人気の高いステージだ。ここでは前ステージとは一転して「自信を持って攻めることができた」というオジエがベストタイム。首位ミケルセンに0.7秒差まで迫る。だが2番手タイムを記録したソルドもオジエの1.6秒後方につけている。

 午前のループを締めくくるのはレオンのサービスパーク脇に設けられたストリートステージ。ラリーリーダーのミケルセンがオジエに0.9秒差をつけるベストタイムで首位を守った。ふたりの差は1.6秒で、その後方1.1秒差にソルド、さらに7秒差の4位にエヴァンス、5位にミークがつけるという展開だ。

 一方、選手権リーダーのタナクは首位から28秒差の8番手。「多くのルーズグラベルがあった。それがどういう意味なのかを知っているし、特別な感想はない。不満はないし、マシンもいいフィーリングだよ」と落ち着いた様子だ。スローパンクチャーでタイムを失ったヌーヴィルは「昨年よりも路面の掃除役のハンディは小さくなっていると思う。現時点の状況はよくないが、タイムはまだそう大きいわけではない」と挽回を期す。

 午後のループは再びエル・チョコラテから始まる。気温は30度を超え、多くのドライバーがハードタイヤを中心にしたタイヤ選択を行ってスタートしていった。

 そして最初のドラマがこのステージで起こる。首位を走るミケルセンがストップ。午前のループでスニネンがコースオフした場所とほぼ同じところで石を巻き込んでパンク、サスペンションに致命的なダメージを負ってしまう。彼はゴールに向けて再び動き出したが、25.5km地点でストップ、リタイアすることになる。

 ミケルセンを追っていたオジエは、ここでベストタイムを奪って首位に浮上、その後方には1.9秒差でソルドが続くが、「朝のループよりもグリップが改善した」と語るオジエはさらに続くSS6オルテガでもベストタイムを刻む。オジエを追いかけるソルドも2.9秒差の2番手タイムで食い下がるが、その差は4.8秒に広がった。

 ソルドは「ベストを尽くしている。タイムも悪くない。けれどセバスチャンは別の次元で走っているようだ」と呆れ顔だ。そして彼にも悲劇が襲う。SS7ラス・ミナースへと向かうロードセクションで電気系のトラブルでストップしてしまう。

 SS7ラス・ミナースでベストタイムを奪ったのはタナク。首位から37.1秒差の6位のポジションだが、「ミスもなくスムーズな一日だった。自分のできることはすべてやった。難しかったが、一番手で走るということはそういうものだからね。最後の方はクルマのフィーリングは良かったし、楽しむことができたよ」と前向きなコメントを残した。対するヌーヴィルは精神的に追い込まれているようにも見える。「もう少しでギブアップしそうだった。僕としてはいい走りができたと思ったが、何がうまく機能していない」と語る。

 このステージでは、オジエは右フロントタイヤがスローパンクチャーを起こし、ペースが上がらなかったものの、ソルドの脱落で辛くも首位を守った。2位にはこのステージで3番手タイムを刻んだエヴァンスが10.9秒差、3位には首位から18.7秒差でミーク。4位ラトバラ、5位ラッピ、6位タナク、7位ヌーヴィルというオーダーとなった。

 金曜日の最後のステージは、レオン郊外のミニサーキット場を舞台としたスーパーSSを2回走行する。2台並走のステージで、ターマックとグラベルが混在したコースには大きなジャンプやウォータースプラッシュも用意されている。

 このステージを前に、上位陣に異変があった。ラトバラはSS7後にロードセクションでマシンを止めてなにかの作業を行っていたが、SS8前のライトフィッティングゾーンでマシンを止めた後、電気系と見られるトラブルでリスタートすることができなくなり、リタイアとなってしまう。彼は昨年もこのスーパーSSの1回目の走行のあとにオルタネーターの問題でリタイアとなっており、2年連続で不運なリタイアとなってしまった。

 DAY1を締めくくるスーパーSSでもオジエはがっちりと首位をキープ、「ラス・ミナースでのパンクを除けば完璧な一日だった。3番目の出走順としてはベストを尽くせたと思う」。14.8秒差の2位につけたエヴァンスは、ミークの追撃からポジションを守ったことに満足した笑みを浮かべ、「このポジションを意地でも守るよ」と決意を語っていたが、3位のミークもエヴァンスから6.3秒遅れにぴたりとマークしている状況だ。

 午後のループの終盤で速さをみせたのはタナク。一番手での走行に耐え忍んできた彼は、SS7のベストタイムに続いてSS8でもセカンドベストを奪ってラッピを抜いて4位に浮上、さらにSS9でもヌーヴィルと同タイムのベストを刻んでこの日を締めくくることになった。「できることはすべてやった。僕らは限界で攻めてきたし、だから僕らにもチャンスがあることを望みたい。2位とのギャップもそう大きくないしね」と、彼はライバルたちとほぼ同じ条件で走る明日へ希望をつなぐ。

 タナクから2秒差の5位にはラッピ、スローパンクが響いたヌーヴィルはラッピから20秒近く遅れた6位から明日の挽回を期す。注目のDAY2は、現地時間8時23分(日本時間23時23分)、SS10グアナファトからスタートする。