WRC2018/11/18

オジエが6度目王者、トヨタが19年ぶり頂点へ

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 2018年FIA世界ラリー選手権(WRC)最終戦ラリー・オーストラリアは、雨によって大荒れの展開となるなか、ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が逆転勝利を飾るとともにトヨタが復帰後2年目でマニュファクチャラータイトルを獲得することになった。また、ドライバーズ選手権はセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が6年連続王座を獲得している。

 前日から降り続いた雨はすでに上がっているものの、最終日のオープニングステージとなったSS19コランバはコースのあちこちに水たまりを残しているほか、粘土質の路面はマディとなって滑りやすくなってドライバーたちを待ち受けることになった。

 雨が降りそうで降らなかったラリーウィークが続いてきたが、ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)にとっては待望の雨となった。多くのドライバーが慎重な走りで挑むなか、遅れを挽回する絶好のチャンスとばかりに前方でのスタートとなったヌーヴィルはスタートから気迫の走りでペースアップ、3.5km地点でスライドして左サイドを崖にヒットするも、マシンには幸いダメージはなく、彼は気迫の走りで3番手タイム、30秒あったエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)との差を一気に21秒差まで縮めてみせた。

 そしてこのステージではラトバラがベストタイムで発進、首位のオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)に12.6秒差まで迫ることになった。ラトバラは前の日のスーパーSSで突然の雨によって、不運なことに彼だけ10秒あまりを失い、チームメイトとの白熱した優勝争いに水を差された恰好となっていたが、そこでロスしたタイムをここで一気に挽回することになった。

 ラトバラはタイトルのチャンスを残すタナクを抜いて優勝を狙うというより、むしろ4.4秒後方につけているヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)からポジションを守るつもりだったが、結果としてトップ争いはこれで完全にわからなくなった。

 SS20サファイアでは青空もでており路面は乾きはじめているが、森のなかの木陰ではまだ多くのところが湿っており、タナクが滑りやすくなった左コーナーでオフ、リバースでコースに戻るのに手間取って20秒近くをロスしたためラトバラが逆転して首位に立つことになった。

 この時点で二人の差はわずか5秒と小さく、勝利の行方はまったくわからない。しかし、ラトバラとタナクにとっては優勝争いよりもトヨタのマニュファクチャラータイトルを確実なものにするためにも堅実な走りでゴールすることを最優先にしたいところだが、ホームイベントともいえるオーストラリアで地元ファンの応援を味方にしたパッドンは勢いづいており、このステージでベストタイムを奪い、タナクの12.6秒差にぴたりとつけて最後までプレッシャーを掛ける構えだ。

 続くSS21ウエディング・ベルスでもトヨタの二人はなんと同タイム、チームメイト同士の優勝争いは依然として5秒差という緊迫した状況で朝のループを終えることになった。パッドンもタナクからまだ14.6秒差で続いている。

 いっぽう、ドライバー選手権争いでは、選手権をリードするオジエはトリッキーなコンディションとなった朝のループで大きくペースダウンしながらも6位を堅持することになった。また、ヌーヴィルは逆転タイトルを諦めず、ヒヤリとした瞬間はあったものの、スタート時点で30秒あった7位のエヴァンスとの差を1回目のループを終えて17.6秒まで縮めてみせている。残り3ステージで逆転して、オジエのすぐ後方の7位まで順位を上げればパワーステージ勝負で逆転王座の可能性はあるだけに、彼は「もう失うものはない」と語って、決死の覚悟で午後のステージへと向かうことになった。

 だが、サービスのあとふたたび強い雨がステージには降り始め、フルウェットのコンディションとなったSS22コランバはいくつもの罠を仕掛けてチャレンジャーを待ち受けていた。アタックを仕掛けたヌーヴィルはスタートから1km地点のぬかるんだコーナーでスピン、バンクにヒットしたあとどうにかコースに復帰したが、その直後に今度はマシンをスライドさせて立ち木にヒット、しばらく走行をつづけたが、左リヤタイヤを失っていたため続行を断念、選手権の戦いを森の中で終えることになった。

 さらにつづくSS23サファイアではもう一つのドラマが待っていた。なんとラトバラから6.3秒差の2位につけていたタナクが大きくコースオフ、観客の助けを借りてコースに戻ったもののマシンには致命的なダメージを負っており、リタイアを決意することになる。タイトルのためにここで勝利する必要があった彼もまたここでチャンピオンの可能性が消滅。この時点でオジエの6度目のワールドチャンピオンが決定することになった。

 残されたのは今年最後のステージとなるウェディングベルス・ステージ、すでにタイトルを決めているオジエはペースをアップしてタイトルに華を添えるパワーステージウィンを飾ってフィニッシュ、大荒れとなった最終戦で王者の貫禄を証明することになった。「僕はこのマシンで最後のプッシュをしたよ! 今季は本当に接戦で難しかった。接戦で上がったり下がったり、信じられないようなシーズンだったが、ついこの間まで、タイトルは不可能に思えた。チームを誇りに思うよ」

 また、前ステージの終盤でリヤを大きく壊したラトバラはマシンのバランスを欠いたためにペースを上げることが困難となっていたが、それでもきっちりとパッドンの追撃からも逃れて32.5秒差をつけてフィニッシュ、昨年のスウェーデン以来となる今季初の優勝を飾るとともに、トヨタに1999年以来、19年ぶりとなるマニュファクチャラータイトルをもたらすことになった。

「僕はもうラリーに勝てないんじゃないかと希望を失っていた。この2年間はほんとうに長かったよ。この週末もトリッキーなコンディションが僕らの前に立ちふさがった。素晴らしい勝利になった。トヨタもマニュファクチャラータイトルを獲得できたからね。最高の週末になった」

 苦しいコンディションのなかでパッドンが2位でフィニッシュ、今季2度目のポディウムを獲得することになった。マッズ・オストベルグ(シトロエンC3 WRC)は、雨によって深さを増したSS23のウォータースプラッシュで右のリヤドアのパネルとプロテクションを吹き飛ばしながらも、後方からベストタイムを叩き出して迫ってきたエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)の猛攻から10.1秒差で逃げ切って、フィンランドに続く今季2度目の表彰台となる3位でフィニッシュした。

 また、来季シトロエンへの移籍が決まっているラッピは、トヨタでの最後の一戦を4位で終えている。