ERC2017/06/05

カイエタノビッチ、アクロポリスで2度目の勝利

(c)ERC

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 ヨーロッパを代表する歴史をもつグラベルラリーであるアクロポリス・ラリーは、最終日も暑さとラフロードで波乱が相次ぎ、初日をリードしたナッサー・アル-アッティーヤ(フォード・フィエスタR5)がパワーステアリングの問題でリタイアとなり、ディフェンディングチャンピオンのカイエタン・カイエタノビッチ(フォード・フィエスタR5)が2015年に続く2度目の優勝を飾ることになった。

 土曜日のオープニングSSからラリーをリードした19歳のニコライ・グリアジン(シュコダ・ファビアR5)が、最終SSを前に火災のためにリタイアするなど波乱の幕開けとなったヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第3戦のアクロポリス・ラリー。アル-アッティーヤがラリーをリード、ポルトガル王者のブルーノ・マガラエス(シュコダ・ファビアR5)が8.4秒差で続いて最終日を迎えることになった。しかし、オープニングSSで今度はアル-アッティーヤをトラブルが襲うことになった。

 アル-アッティーヤはジャンプのあとの激しい着地でパワーステアリングに問題を抱えることになり、彼はシステムをリセットするためにマシンを止めたあと、今後はエンジン始動に手間取ってしまい2分をロス、4位まで後退することになる。

 アル-アッティーヤの不運によってマガラエスが首位に浮上することになったが、彼もまたオープニングSSからギヤシフトの問題を抱えることになる。快調であれば、ドグミッションはフルスロットルのままギヤのシフトが可能だが、彼はギヤシフトのたびにクラッチを使用して回転数を抑え目にしなければシフトできないためにペースが上がらない。彼はどうにかSS8まで首位をキープしたものの、SS9では30秒をロス、激しいペースで追い上げてきたカイエタノビッチに首位を明けわたすことになる。

 土曜日の朝のパンクで50秒近くを失って6位からのスタートとなったカイエタノビッチは、その後もパンクやブレーキの問題を抱えながらもじわじわとペースをアップ、最終日を首位から29.5秒遅れでスタートしていたが、ライバルたちの相次ぐトラブルによって20.6秒をリードして朝のループを終えることになった。

 首位を失ったマガラエスはラミアのサービスで、ギヤのシフトの問題はなんとか直してもらうことを願うと語っていたものの、問題はギヤシフトだけではなく、ワイパーやスタートコントロールなどさまざまな電気系の問題が同時に発生しており、完全修理には至らない。午後のループでもギヤのトラブルだけでなく不運なことに水温も120度を超え、まさに満身創痍となり、首位を追撃するどころかゴールするのも危うい状況に襲われることになる。

 しかし、3位につけていたアル-アッティーヤがSS11でパワーステアリングの問題で完全にリタイアとなったことで、マガラエスの後方は3分以上離れたカストロール・フォード・チームのムラート・ボスタンチ(フォード・フィエスタR5)となったため、ペースを落としてどうにか2位キープに専念することになる。

 首位のカイエタノビッチももはやプッシュしていないといいながらも、午後の3ステージすべてを制して、最終的にはマガラエスに1分58.7秒をリードして優勝を飾ることになった。

 カイエタノビッチはこれで、アクシデントによるケガで欠場しているアレクセイ・ルクヤヌクを抜いて選手権の2位に浮上、リーダーのマガラエスに21ポイント差に迫ることになった。

「僕の人生でもっとも難しいラリーだった。クルマと体力と精神にとってタフだったが、ほんとうに疲れていてプッシュすることさえ困難だったにもかかわらず、不思議なことに最後のループではペースが落ちなかった。タフなライバルたちの健闘には頭が下がるよ。彼らは本当に速かったし、僕にもトラブルが多かった。それだけに素晴らしい優勝となったよ」とカイエタノビッチは喜びを語っている。

 困難な問題を抱えながらもどうにか生き残ったマガラエスは、「多くのライバルたちがストップしたなかで僕がゴールできていいポイントを獲得できたことは幸運だった」と戦いをふり返っている。

 アル-アッティーヤのトラブルで3位フィニッシュと思われたボスタンチは最終ステージの残り4km地点でストップ、悲願のERC初表彰台を前にリタイアとなってしまった。これでポーランド・チャンピオンのグジェゴシュ・グジェブ(シュコダ・ファビアR5)がプロペラシャフトからのバイブレーションという問題を抱えながらも3位でフィニッシュ、キャリア3度目のERCポディウムを達成することになった。
 
 ERC2はイタリアのゼリンド・メリガリ(三菱ランサーエボリューションIX)が初日のリードを守って優勝を飾ることになった。アレクセイ・ルクヤヌクの愛弟子であるセルゲイ・レメニク(三菱ランサーエボリューションX)は燃料ポンプトラブルのために初日にリタイアとなったが最終日にリスタート、今回欠場している選手権リーダーのルイス・ピメンテルに迫るべく果敢に攻めたが、横転でリタイアとなってしまった。

 ERC次戦のキプロス・ラリーは6月16〜18日に開催される。