ERC2021/10/25

グリアジンが優勝、ミケルセンのERC王者が決定

(c)ERC

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 2021年ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第7戦ラリー・ハンガリーは24日に最終日を迎え、スポーツレーシングテクノロジーズのニコライ・グリアジン(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)が今季2度目のERC優勝を果たすことになり、7位でフィニッシュを迎えたアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)が最終戦を待たずに初のERCタイトルに輝いている。

 ラリー・ハンガリーの最終日は、初日をトップで折り返したグリアジンのベストタイムで始まることになったが、後続のドライバーたちがふたたび滑りやすいターマックでトラブルに見舞われることになり、彼はますますリードを広げることになった。

 25.8秒差の2位で最終日を迎えたシュコダ・ラリーチーム・ハンガリーのノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)はSS8の残り1km地点でクラッシュ、ヘルツィグとコドライバーのラモン・フェレンツを病院に運ぶためラリーは一時中断することになった。

「ステージ終盤の路面はかなり湿っており、白いアスファルトがまるで氷のように滑り、ブレーキングでマシンが滑ってどうしようもなかったんだ」とヘルツィグは事故当時をふりかえった。「僕は打撲と腰の痛みがあるが、ラモンはアクシデントに備えることできなかったので肋骨6本が折れたりヒビが入ったりしている。事前にトラブルの兆候はなく、それまでの僕らのペースはとても良いものだったことだけは良かった。彼が一日も早く回復することを願っている」

 さらにヘルツィグに続いて3位で最終日を迎えたマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 Rally2)もSS8でのパンクのために首位から53.3秒遅れの3位へと後退、2位には彼とハンガリー選手権王座を争うハンガリー・チャンピオンのアンドラーシュ・ハディク(フォード・フィエスタRally2)が浮上することになったが、首位からは49.8秒遅れだ。

 SS9でベストタイムを奪ったのは、4位につけるORLENチームのミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRally2エボ)だ。マルツィクは、逆転でのERCタイトルの可能性をもっているが、選手権リーダーのミケルセンには71ポイントという大差つけられており、なにか波乱が起きるのを待つしかない状況だ。

 そのミケルセンはラリー序盤では3位につけていたが、エンジンのパワーダウンから一時はラリーからのリタイアを覚悟し、さらに右フロントタイヤのパンクでホイールリムだけで最終ステージをどうにか走りきり、7位で最終日を迎えている。選手権では有利な状況にあることは確かだが、彼はなんとこのステージのフィニッシュラインに左リヤ・サスペンションを破損して現れることになった。

「前のステージのフィニッシュ近くでコースオフしてサスペンションにダメージを負ったんだ。ここではどうにか生き残ったが、左リヤのサスペンションは完全にいかれてしまっている」とミケルセンは説明する。

 ここだけで13秒をロスした彼はコドライバーのエリオット・エドモンドソンとともにロードセクションでマシンの応急修理を行い、ニーレジュハーザ市街地で行われた5.78kmという短いSS10でもその遅れを6.8秒にとどめ、どうにかこの危機を逃れて朝のループを走りきることになった。

 後続のトラブルによってグリアジンのリードは完全に揺るぎないものとなり、彼は朝のループを49.5秒という圧倒的なアドバンテージを築いたあと、午後のループは大きくペースダウンしてトリッキーなステージをこなすことになる。この日の朝、15分間のサービスでクラッチの不具合が確認され、チームがクラッチ交換を余儀なくされたこと以外にはまったくトラブルのない最終日を走りきり、初挑戦のハンガリーを制することになった。

「初めて出場したラリー・ハンガリーで優勝できてうれしいよ。多くのライバルが問題を抱えていたので、僕らは最終日、大きなマージンをもっていたのでセーフモードでドライブを楽しんだ。うまくペースをコントロールできたし、チームに感謝している。彼らはいつも素晴らしい仕事ぶりをみせてくれたからね」とグリアジンは語っている。

 一方、ミケルセンはサービスで完全に修理を終えたマシンで午後のループへと向かったが、残り3ステージはもはや無理をして攻める必要はない。彼は最終的に7位のポジションを守り、一週間前に獲得したWRC2のタイトルに続き、ノルウェー人として初のERCチャンピオンに輝くことになった。

「すべてのドライバーにとって非常にタフなラリーになることはわかっていたが、僕らは非常にクレバーなドライビングで必要なポイントを獲得することができた。チャンピオンシップを獲得したことは、僕のキャリアの中でも間違いなくハイライトのひとつだ。シーズン前に予想したとおりにこの目標はとても厳しいものだったが、素晴らしい結果となったよ」

 SS10のショートステージでベスタイムを奪ったオストベルグがハディクを抜いて2位へと浮上、最後までポジションを守り切ることになり、最終ステージでハディクを抜いたマルツィックが26歳の誕生日を3位表彰台で終えることになった。それでも堅実なペースで4位をキープしたハディクは、昨年に続く3度目のハンガリー・チャンピオンに輝き、オストベルグの逆転タイトルの挑戦を退けている。

 5位には一時首位に立つ速さをみせたヤッコACCRラリーチームのエリック・ツァイス(フォード・フィエスタRally2)、6位にはヨアン・ボナート(シトロエンC3 Rally2)が続いている。

 ERC2では、スズキ・モーター・イベリカのハビエル・パルド(スズキ・スイフトR4lly S)が5連勝を飾り、ERC3/ERC3ジュニアでは初日のリーダーだったジョン・アームストロング(フォード・フィエスタRally4)がタイムコントロールの遅着のあとジュニアWRCチャンピオンのサミ・パヤリ(フォード・フィエスタRally4)がリードを奪って優勝を飾っている。また、ERCジュニアではたった1台のエントラントだったケン・トルン(フォード・フィエスタRally3)がオルタネーターベルトの断裂から最終日の朝のマシンを止めている。