ERC2021/10/24

グリアジンがERCハンガリーのレグ1をリード

(c)ERC

(c)ERC

(c)ERC

 2021年ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第7戦ラリー・ハンガリーは、スポーツレーシングテクノロジーズのニコライ・グリアジン(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)がレグ1をリード、シュコダ・ラリーチーム・ハンガリーのノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)に25.8秒差をつけている。

 ラリー・ハンガリーは金曜夜にニーレジュハーザ市南東部のラリークロス場で行われたスーパーSSラボチリンクで開幕、予選から速さをみせたグリアジンがリードを奪うことになった。

 雨あがりの朝を迎えたハンガリーの土曜日、湿り気を含んだターマックステージには落ち葉とグラベルがかき出された難しいコンディションとなったが、グリアジンがこの日もベストタイムを奪って好調なペースをキープ、タガイ・レーシングのマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 Rally2)が2.9秒差の2位、選手権をリードするトークスポーツWRTのアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)が8.6秒差の3位で続くことになった。

 ミケルセンはこの週末の結果次第では最終戦を待たずにノルウェー人初のERCチャンピオンに輝くはずだったが、彼は続くSS3では14.3秒もの遅れを喫して5位までポジションダウン、ステージエンドで「ステージの半分を過ぎたあたりから、パワーもなく、レスポンスもなく、どんどん悪くなっていった。どうやらゲームオーバーだ」とエンジンに問題があると告白する。

 ミケルセンはミスファイアを起こしたエンジンでSS4を走るも、ここでも21秒をロスして7位まで後退、タイトルを決めるどころか完走すら危ぶまれるマシンでどうにか朝のループを終えることになった。

 ミケルセンがトラブルに見舞われると同時にWRC2で彼とタイトルを争ってきたオストベルグもまたヒヤリとした瞬間に見舞われる。彼はSS3で180km/hの高速で走行中に白線を踏んでコースオフ、あわや大クラッシュ寸前だったが、どうにかディッチでマシンを止めることになる。オストベルグはここで50秒あまりも失ってトップ争いから脱落、11位まで後退してしまった。

 朝のループを終えて、朝から2連続でベストタイムを奪ったグリアジンが首位をキープしたが、彼もまたSS4ではダートがコースを覆ったコーナーで大きくマシンをスライドさせて10秒をロスしている。「難しかった。とても滑りやすく、グラベルでのフラットアウトのコーナーでコースアウトしてしまった。午後のループではペースをキープしていく必要がある」とグリアジンもまた一瞬のミスが許されないステージだと強調する。

 混乱の朝のループを終えて2位につけたのはチェコ期待の若手エリック・ツァイス(フォード・フィエスタRally2)だ。先週のラリー・デ・エスパーニャでは初挑戦のWRC2で3位表彰台を達成したツァイスは、2つの3番手タイムを奪ってグリアジンの7.2秒後方につけたが、彼もまた原因不明のメカニカルとラブルを抱えており、不安をのぞかせる。「マシンに問題があって、タイムを失っているんだ。諦めずに110%で頑張ったが、がっかりだよ」

 8秒差の3位にはハンガリー出身の若手ミクロシュ・チョモシュ(シュコダ・ファビアR5)が地元の強豪を抑えてつけている。しかし、ハンガリー・チャンピオン、アンドラーシュ・ハディック(シュコダ・ファビアRally2エボ)が4.8秒差、シュコダ・ラリーチーム・ハンガリーのノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)はSS2でタイヤのパンクで遅れたものの、1.4秒という僅差の4位まで追い上げてきた。

 午後のループは、ツァイスの劇的な復活とともに始まることになった。ヤッコACCRチームは「シリンダーに問題がありそうだ」と最悪の事態を予想していたが、デイサービスでスパークプラグを交換したことでエンジンの調子が完全復活したという。

 ツァイスは、SS5でグリアジンに7.6秒もの大差をつけるベストタイムで0.4秒差ながら逆転、首位に立つことになった。バルム・チェコ・ラリーで最終ステージまでラリーを席巻しながらクラッシュに泣いた彼は、「クルマは完全に動いているし、素晴らしいフィーリングだ。このペースを維持したいが、もうミスはしたくない。集中力を切らさないようにしないとね」と語っていた。

 グリアジンもさすがにライバルのこのタイムには衝撃を受けたと告白したが、ツァイスのリードは長く続かない。彼は次のSS6でパンク、タイヤ交換のためにマシンを止めることになり、またも勝利のチャンスを失ってしまう。「何が起こったのかわからないよ。グラベルが始まった後のどこかだと思うが、本当にわからない。それまでは完璧なペースだったのにがっかりだ」とツァイスは落胆していた。

 ツァイスの後退で2位にポジションを上げてきたのは地元のヘルツィグだが、彼は朝のループでパンクに見舞われたため、首位のグリアジンからは29.9秒という大きな遅れとなっている。グリアジンは残りステージでは陽が傾いて木陰で光るストロボに視界を奪われるため慎重なペースへと落として、25.8秒差を築いて首位をキープしてこの日を終えている。

 ハンガリーのステージが初めての経験だったグリアジンは、朝のループでのヒヤリとした出来事のあと安定したペースに切り変えたことが良かったと1日をふり返っている。

「このような戦いがここでできるのは嬉しいことだ。ツァイスのあのタイムには驚いたが、今は安全運転で行ったよ」とグリアジンは語った。「ここではステージを知らないと、カットできるかどうかわからないし、狭い道のアプローチもとても難しいんだ。無理をするとコーナーの外側に出てしまい、何かを壊してしまうこともある。最速でなくてもいいから、安定した走りが必要なんだ」

 朝のループでのエンジンの深刻なトラブルに見舞われたかにみえたミケルセンだが、ワイヤーが切れていたためにウェイストゲートに問題があったことが判明、午後のループでは3位へと追い上げてきた。だが、最終ステージで彼は右フロントタイヤをパンク、リムだけとなったホイールを引きずりながら1分近くも遅れてしまい、ふたたび7位まで後退してしまった。

 一方、ミケルセンに続いて選手権2位につけるORLENチームのミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRally2エボ)はSS3でスピンしたあとドライブシャフトを壊して朝のループを9位で終えたが、午後にはペースを取りもどして5位まで順位を戻している。

 また、朝の危険なスピンで遅れたオストベルグが終盤のSS6、7で連続してベストタイムを奪って3位まで浮上しているが、彼のメインターゲットとなるハンガリー選手権でタイトル連覇を狙って選手権をリードするハディク・アンドラーシュ(フォード・フィエスタRally2)が2.6秒差の4位につけている。

 なお、ヤリ・フットゥネンの代役としてチームMRFタイヤのヒュンダイi20 N Rally2でデビューする予定だったニル・ソランスは、金曜夜のスーパーSSの前に技術的な問題からマシンストップ、チームは問題の解決ができなかったとして土曜日のリスタートを断念している。ソランスはERC最終戦のラリー・イスラス・カナリアスにふたたびチームMRFタイヤから出場してリベンジを期すことになる。

 ERC2では、スズキ・モーター・イベリカのハビエル・パルド(スズキ・スイフトR4lly S)がSS3でパンクに見舞われたにもかかわらず5連勝に向けて順調にリードしている。ERCジュニアではケン・トルン(フォード・フィエスタRally3)がトップ、ERC3/ERC3ジュニアではジョン・アームストロング(フォード・フィエスタRally4)がトップとなっている。