ERC2022/08/29

コペツキがバルム・チェコで11回目の記録的勝利

(c)RedBull Content Pool

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第7戦バルム・チェコ・ラリー・ズリーンは8月28日日曜日に最終日を迎え、地元チェコのヤン・コペツキ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が11回目という記録的な勝利を飾っている。

 予測不能の不安定な天候の週末となったバルム・チェコ・ラリーは、土曜日のレグ1に新チャンピオンに輝いたエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が大きなクラッシュを喫して戦列を去るなど荒れ模様のスタートとなっていたが、突然の雨や目まぐるしく変化する路面コンディションでもっとも安定した速さをみせたコペツキがラリーの主導権を握ることになり、期待の新鋭エリック・ツァイス(フォード・フィエスタRally2)に34.6秒もの大差を築いて最終日を迎えることになった。

 最終日もすっきりしない天候のなかでスタート、やや湿ったコンディションとなったオープニング・ステージでコペツキは2番手タイムを奪ってリードを39.4秒まで拡大する。

 続くSS9マジャークは途中から予想外の激しい雨によって路面はヘビーウェットとなり、コペツキも長いストレートでアクアプレーンを起こしてスピンしそうになりながら、あわやの危機を回避してみせる。彼はこのステージで15秒も失ったが、引き続き33秒あまりもリードしていることから、このあとは安全なペースに切り替えてゴールを目指すことになる。

 一方、首位コペツキの後方では雨のなかでも一瞬も気が休まらない接戦となっている。2位で最終日を迎えたツァイスは、コペツキを追い上げるべくドライタイヤを選んでスタートするというギャンブルに出るも、またも天候に見放されたかのように豪雨となったSS9で完全に失速、ウェット2本を選んだフィリップ・マレシュ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が逆転で2位へと浮上することになった。それでも二人はわずか1.1秒という僅差で朝のループを終えており、さらにオープニングSSのベストタイムを刻んだシモン・ワグナー(シュコダ・ファビアRally2エボ)も7秒差に迫ってきた。

 午後のループの最初のステージであるSS11ブンチでは、ふたたび雨足が強まるなか9位につけていたアルベルト・バッティストーリ(シュコダ・ファビアRally2エボ)がストレートエンドで高速でクラッシュ、フロントを大破してしまう。彼もコドライバーのシモーネ・スカットリンも意識はあったが、衝撃はすさまじく、最初に現場に駆けつけた8位につけるシモーネ・カンペデッリ(シュコダ・ファビアRally2エボ)はクラッシュの大きさにショックを受けたと語ったほどだった。

 このステージはこのアクシデントで赤旗が出されることになり、残されたのは2ステージとなったが、このような難しいコンディションのなかで3人による2位争いはさらに過熱する。

 午後のループに向けてフルウエットのタイヤを選択していた3位につけるワグナーがSS12マジャークでベストタイムを叩き出し、ツァイスを抜いて3位へと浮上する。2位のマレシュとの差もわずかに3.7秒にすぎないが、4位のツァスもわずか2.5秒の後方だ。

 そして迎えた最終ステージは青空が広がり、路面は急速に乾き始めている。ワグナーは2位を狙って猛然とプッシュするも、フルウエットタイヤの彼は明らかにハンドリングに苦しみ、左コーナーでワイドになってマシンをディッチに落としてしまう。彼はそのまま10メートルあまりを走り、積み上げられた丸太にクラッシュする寸前でコースに戻ることになったが、このトラブルでポディウムからは完全に脱落したかも思われた。

 だが、追い上げるツァイスにはさらなる悪夢が襲いかかる。左リヤをパンクした彼はせっかくの表彰台のチャンスを逃してしまった。昨年も最終ステージのクラッシュで優勝を失ったツァイスは、2年連続の不運にステージエンドでがっくりと肩を落としていた。「どうしてこうなったのか、わからないんだ。村の中のセクションからパンクしてしまった。限界だったんだ。チームと観客のみんなには本当に申し訳なく思っている。僕たちは皆、表彰台を獲得したかったし、最終ステージではベストを尽くした。どうしたらよかったんだろうか・・・」

 後続のドラマはあったが、首位のコペツキも2位のマレシュもここではリスクを避けてペースを落としてゴールを目指すことになる。コペツキは日曜日のステージでは1回もベストタイムを獲得しなかったが、結果的にはライバルをさらに引き離すことに成功、37.6秒をリードして7大会連続、通算11回目のバルム・チェコ・ラリー優勝を飾ることになった。

「今回のバルムはコンディションが本当にクレイジーだったので、過去のなかでも最も難しいラリーの1つになった。今日もすべてのステージで雨に見舞われたのでけっして油断はできなかった。サポートしてくれたみんなに感謝している。とてもいい週末だった」とコペツキは語っている。
 
 コペツキの今回のバルム・チェコ・ラリーでの勝利については10回目とも11回目とも報じられている。公式結果では彼のバルム・チェコでの初勝利は2009年と記録されるが、本来ならばシュコダ・ワークスのファビアWRCを駆って達成した2004年の総合優勝が初勝利としてカウントされているはずだ。

 主催者は当時、ヨーロッパ選手権で認められていないWRカーをドライブしているチェコ選手権の上位勢を総合結果から除外しつつ、チェコ選手権でのポイントを与えるという前年とも後年とも矛盾する判定をこの年だけ下している。そのため公式結果では総合優勝を飾ったコペツキではなく、2WDマシンのルノー・クリオで総合5位となったシモン・ジャン-ジョセフをチェコの勝者としているが、この混乱を知る地元メディアは母国のヒーローへの敬意を込めて2004年を最初の勝利だとカウントするのだ。

 ERCは10月20〜22日に開催される次戦のラリーRACCカタルニア〜コスタドウラダでシーズンを締めくくる。