WRC2020/10/12

ソルドがサルディニア連勝、ヒュンダイ1-2勝利

(c)Hyundai

(c)Toyota

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 2020年世界ラリー選手権(WRC)第6戦ラリー・イタリア・サルディニアでヒュンダイ・モータースポーツのダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)が2年連続での優勝を飾ることになった。また、セバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)との最終ステージまでもつれたスリリングなバトルを制したティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が2位でフィニッシュ、ヒュンダイが1-2勝利を飾ることになった。

 サルディニアの最終日はカーラ・フルミーニ(14.06km)とサッサリ〜アルジェンティエラ(6.89km)という2つのステージをサービスなしに2回ループする4SS/41.90kmという短い一日となる。わずか1.5秒差という激しい攻防となっているオジエとヌーヴィルの2位争いの行方とともに27.4秒という大きなリードを築いているソルドがそのまま逃げ切って2年連続で優勝を飾ることになるのか注目されたが、それ以上に、この日の朝のサービスパークでは、ヌーヴィルのドライバーズ選手権を助けるためにヒュンダイがソルドに対して勝利を譲るようチームオーダーを出すかどうかという話題がもちきりとなった。

 ソルドは「もちろんラリーに勝つことを試みるつもりだ」と語り、いまの時点でそうしたチームオーダーがないことを明かしているが、この戦略が可能になるとすれば、その鍵を握っているのがヌーヴィルであることは明らかだった。彼がオジエを抜いて2位へと浮上したときに、チームは苦しい選択に初めて悩むことになるはずだ。

 前夜の雨でやや湿ったコンディションとなったオープニングステージのSS13カーラ・フルミーニを走りきったヌーヴィルは「おそらく十分ではないが、OKだったよ。僕らは頑張った」と語ることになった。この時点ではまだ後方のオジエはゴールしていないが、彼の不安は的中する。オジエは4.99km地点におかれた最初のスプリットではコンマ1秒の差もないまったく同タイムで通過するや、後半でペースを上げて最終的にヌーヴィルに0.2秒差をつけるベストタイムでライバルとの差を1.7秒へと広げることに成功、「何もないよりはいいよ!」とステージエンドで笑みをみせることになった。

 一方、大きなリードを築いて勝利の権利は揺るぎないと思われていたソルドは、右リヤのエアロにダメージを負ったマシンでフィニッシュ、オジエに12.1秒の大差をつけられ、彼のリードはそれまでの二日間でのマージンは半分に消え、15.3秒まで減ってしまった。「必死にプッシュしたが、十分ではなかった。他のドライバーのほうがプッシュしていた・・・僕らももっと強くプッシュする必要がある」とソルドは冷静な表情で語ったが、これで優勝争いの行方も完全にわからないものとなった。

 続くSS14サッサリ〜アルジェンティエラでは、金曜日にアクシデントに見舞われたために最終日も1番手でダスティなステージでコースオープナーを務めていた勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC )がバンクにヒットしてクラッシュ、マシンを止めることになっている。幸いにも勝田とコドライバーのダニエル・バリットにケガはなく、マシンを安全なところに移動したあとステージは再開されている。

 ソルドはこのステージで2番手タイムでふんばり、16.1秒のアドバンテージをキープ。「かなりいい走りだったが、その前のステージが本当にひどかったからね。しっかりプッシュできるようにしないと、寝ている暇はないよ」と気合いを入れ直したように語っている。

 オジエとヌーヴィルのバトルは一層白熱、ベストタイムを奪ったヌーヴィルが、一気に1.6秒を縮めてオジエの0.1秒差の背後へとぴたりとつけることになった。「すべてを出し切った! 正直、これ以上何ができるかわからない。トリッキーなステージだったけど、ずっと全開をキープしたよ」

 オジエは、ステージエンドでヌーヴィルのタイムを知ってまたもや厳しい戦いになることを覚悟したようだ。「最後の方で少しミスがあって、完璧なラインではなかったんだ。そこはいつもチャレンジングなところだよ」。二人は2018年のサルディニアでも最終ステージまで僅差のバトルを演じ、オジエはわずか0.7秒差でヌーヴィルに逆転勝利を許しているだけに、チャンピオンの意地もあるだろう。

 オジエはカーラ・フルミーニの2回目の走行となるSS15でヌーヴィルを1.6秒引き離す渾身のベストタイム、彼のリードを1.7秒差に戻すことになるとともに首位のソルドとの差を9.2秒にまで縮めることになった。

 そして迎えた最終ステージのサッサリ〜アルジェンティエラ、ヌーヴィルはステージ終盤でブレーキディスクに問題を感じながらもオジエを2.7秒上回ることに成功、2年前に優勝したときと同じよう土壇場でオジエを1秒差で逆転して2位でフィニッシュすることになった。オジエはリヤをコース脇の石垣にヒットするほどのぎりぎりの走りも及ばず3位に、「これ以上は無理だった。限界までプッシュした。週末はずっと接戦で全力を尽くしたが、これ以上にできることはほとんどなかった」とゴール地点で語ることになった。

 ソルドは慎重な走りで首位をキープ、2位に浮上したチームメイトに5.1秒差をつけて首位でゴールを迎えることになった。勝利を確認したあとも、彼は笑みを見せることなく、しばらくはマシンのルーフに駆け上がることを躊躇しているようにも見えた。埃が積もったソルドのマシンのリヤウィンドウには、昨日、ポルトガルのラリーで21歳の若さで亡くなったスペイン出身のコドライバー、ラウラ・サルヴォの名前が指で書かれており、彼女の熱心なサポーターでもあったソルドとカルロス・デル・バリオの気持ちは天に通じただろうか。

「最高だよ。今日の自分のパフォーマンスにはあまり満足していないが、優勝を収めることができたので、本当にハッピーだ」とソルドは喜びを語っている。

 ソルドの5.1秒後方にはヌーヴィルが続き、この日の朝に噂されたようにヌーヴィルのドライバーズ選手権を助けるためにヒュンダイが戦略を発動する可能性もありうる状況となったが、チームは二人の順位を操作することなくこのまま最終順位が確定することになった。

 ソルドがこのあとタイムを調整するためにはタイムコントロールへの遅着をするしかないが、最低でも10秒のペナルティが課されることになる。そのため、ヌーヴィルに優勝を譲るだけではなく6.1秒差の3位につけるオジエまでもが2位へと繰り上がることになるため、ヒュンダイはせっかくの1-2勝利を失うことになるよりも、素直にソルドの2年ぶりの勝利を喜ぶことを選んだのかもしれない。

 一方、2位争いから30秒近く引き離されて最終日を迎えたエルフィン・エヴァンス(トヨタ・ヤリスWRC)にとっては、上位との差を縮めるのではなく、8.5秒後方のテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)を引き離し、選手権のためにも着実に4位をキープすることが指命となった。エヴァンスはSS13でスニネンを19.2秒突き放し、トヨタ勢の一角を切り崩したいというスニネンの期待を打ち砕き、最終的には31秒差をつけて4位でフィニッシュした。

「今日の僕らの戦いは明らかにテームとの戦いだった。いくつかの小さなミスがあったけど、総合的にはいいラリーだった」とエヴァンスは週末をふりかえった。

 ドライバーズ選手権では、エヴァンスはパワーステージでのボーナス2ポイントを追加、2位のオジエに14ポイント差、ヌーヴィルには28ポイント差をつけて首位をキープすることになった。また、金曜日のサスペンショントラブルで遅れたオイット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)は6位まで順位を戻してフィニッシュ、パワーステージを制したものの、エヴァンスから32ポイントのビハインドとなっている。

 マニュファクチャラー選手権ではエストニアに続いて再開後2度目の1-2勝利を飾ったヒュンダイがトヨタを逆転、7ポイント差でリードを奪っている。

 今季のグラベルラウンドはこのサルディニアで終わりとなり、残された2ラウンドはいずれもターマックラウンドとなる。次戦のイープル・ラリー・ベルギーは1カ月近くのインターバルのあと、11月19〜22日に開催される予定となっている。