ERC2020/08/17

ソルベルグがERCラトビア連覇、選手権2位に浮上

(c)ERC

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 2020年ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第2戦ラリー・リエパーヤは、18歳のオリヴァー・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)が最終日にエンジントラブルのためにヒヤリとする場面もあったが、土曜日のオープニングSSからのリードを終始キープ、PHスポールのマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 R5)の追撃をかわして2年連続優勝を飾り、ERCドライバーズ選手権の2位に浮上することになった。

 16日の最終日はSS5ヴェクピルス(16.45km)から始まる6SS/87.66kmの一日だ。首位でラリーを折り返したソルベルグはSS5で2位につけるオストベルグに0.1秒遅れ、リードを9.9秒としたものの、SS6マシルマーヤ(12.06km)ではベストタイム、さらにSS7パプラカ(18.11km)でも連続してベストタイムを奪い、22.4秒差へとリードを広げることに成功した。

「最初のステージでは気楽に走り、いいリズムとプッシュを心がけた」とソルベルグ。彼にとってただ一つの不安だったのはSS7でコース脇に立っていたポールをヒットしたことだったが、幸いにも大事には至らなかった。「高速では大きなダメージになるものだが、問題なかった。それ以外はずっとエンジョイして走っているよ」

 勝利を脅かすものなど何もないかのような快調なペースをここまで刻んで最後のループを迎えたソルベルグだが、最初のステージであるSS8ヴェクピルスのコース半ばで突然、エンジンが3気筒になったかのような症状に見舞われることになってしまう。幸いにもこのトラブルは走行しているうちに自然に解消、ソルベルグは後半にかけてロスタイムを挽回するために猛然とプッシュ、ここでのタイムロスをわずか5.3秒にとどめることに成功する。

 思ってもみなかった問題のために、ソルベルグの後方17.1秒差には2位のオストベルグが迫ることになったが、残りはわずか2ステージだ。SS9テブラ(6.48km)、SS10パプラカ(18.11km)でもエンジンには何も問題は起こらず、ソルベルグは連続してベストタイムを奪い、オストベルグを20.1秒突き放して勝利を飾ることになった。

 ソルベルグはこの勝利によってERCドライバーズ選手権2位に浮上、ERCジュニア1でもトップをキープすることになった。「最初のステージの前半は3気筒で走っていたが、後半になるとまたエンジンが回り始めて、またタイムを上げようと猛烈にプッシュし始めた」とソルベルグはSS8での恐怖の体験をふりかえった。

「最後のステージはタイヤの摩耗でまるでリヤ駆動のマシンのようなフィーリングだった。タフでめまぐるしいラリーだったが、とてもラッキーだったよ」

 オストベルグは、2月のラリー・スウェーデン以来となった復帰戦で、ロシアのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 R5)を押さえて総合2位でフィニッシュすることに成功した。ソルベルグがエンジンの問題に見舞われたSS8ではオストベルグもまたタイヤにデラミネーション(表面の剥離)が発生しており、追い上げができなかったが、それでもラリー・エストニアに向けて手応えのあるマシンに仕上がったと語っている。「OKだったよ。僕らにとって非常に良いテストになった。完全にクルマに慣れたわけではないけど、どんどん快適になってきているよ最後まで戦いを続けることができて満足しているよ」

 オストベルグはERCにノミネートしていないため、首位から37秒差の総合3位でフィニッシュしたルクヤヌクがERC2位の表彰台を獲得することになった。ルクヤヌクは予選から満足できるフィーリングのないマシンにフラストレーションを感じながらの週末となり、最終日を前に大幅なセットアップ変更を試みたが、それでもマシンバランスの改善には至らなかったようだ。彼は4ポイント差で選手権での首位は守ることになり、「追い上げようとしたが、チャンピオンシップに向けて良いポイントを獲得できたと思うので、ここでの結果には満足している」とふり返っている。

 TGSワールドワイドから出場したフィンランドの若手エーリック・ピエタリネン(シュコダ・ファビアR5)は、チームMRFのクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20 R5)に激しいプレッシャーを掛けられがらも、ERCデビュー戦ながら堅実な走りで4位フィニッシュを迎えている。

 ブリーンは、SS5でピエタリネンを抜いて一時4位へとポジションを上げたが、SS7で左リヤタイヤのパンクによって6位まで後退することになった。「何も触っていないのに中盤のワイドになったセクションでパンクしてしまった。何が起こったのかわからないよ」。

 それでも彼はSS8ではこの週末のベストとなる2番手タイムで猛然と追い上げてエミル・リンドホルム(シュコダ・ファビアRally2エボ)をパス、さらにピエタリネンに迫るべくハイペースでの追い上げを敢行したが、SS9のスピンで5位のままで終えることになった。「不運もあったが、ターマックとグラベルの一連のラリーでのタイヤの進歩についても満足だよ」

 リンドホルムは、初日からチームメイトのブリーンを押さえるスピードをみせていたが、SS5のジャンプでラインを間違えたためにフィールドにオフしてフロントバンパーにダメージを負ったことで20秒あまりのマージンを使い果たし、最終的にはブリーンの1.8秒後方の6位でフィニッシュしている。

 ERC3ジュニアでは、リエパーヤ出身のマルティンシュ・セスクス(プジョー208 Rally4)は、エストニアのケン・トルン(フォード・フィエスタRally4)に対して朝のループを4.4秒差をつけてリードしていたが、SS8のジャンプの着地でフロントから落下したためにラジエータを破損、ステージエンドでリタイアとなってしまったため、トルンがまたも予想外の勝利を手にすることになった。

 トルンは、前戦のラリー・ディ・ローマでも、最終ステージでペドロ・アントゥネスがクラッシュしたことで、逆転勝利を飾っていた。

 2位にはジュニアWRCにおけるトルンのライバルでもあるスウェーデンのデニス・ロドストローム(フォード・フィエスタRally4)が入り、世界ラリークロス選手権のトップドライバーであるレイニス・ニッティッシュ(フォード・フィエスタRally4)が地元戦で3位の表彰台を獲得することになった。

 2度のERC2チャンピオンであるティボール・エルディJr(三菱ランサーエボリューション)は、エンジントラブルに見舞われながらも、2018年にタイトルを獲得して以来、プロダクションカテゴリーでの久々の勝利を飾っている。

 ERC次戦は、9月17-19日にポルトガルのサンミゲル島で開催されるラリー・アソーレスとなる。新型コロナウイルスの流行がなければ本来なら3月に開幕戦として行われる予定だった一戦が待望の開催を迎えることになる。