WRC2018/04/29

タナク、トヨタでの初勝利にむけアルゼンチン独走

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 世界ラリー選手権第5戦ラリー・アルゼンチンは28日にDAY2を迎え、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がこの日も5つのベストタイムを奪って首位をキープ、後続との差を46.5秒へと広げて独走、トヨタに移籍後、初の勝利が見えてきた。

 22.7秒をリードして土曜日を迎えたタナクは、前日とうってかわって気温も低い朝となったこの日のオープニングSSとなったSS9タンティ〜マタデロス(13.92km)でも引き続き好ペースをキープ、2位につけるクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)に3.8秒差をつけるベストタイムで発進することになった。

 続くSS10ロス・ヒガンティス〜クチージャ・ネヴァダ(16.02km)は濃霧によって視界不良のコンディションとなったが、タナクはここでもミークに7.5秒差をつける連続ベストタイムを奪い、瞬く間にリードを34秒へと広げることになった。

 さらにラリー最長となるSS11クチージャ・ネヴァダ〜リオ・ピント(40.48km)も霧による難しいコンディションとなり、さまざまな波乱が起きることになったが、タナクはここでも好調な走りをキープして朝から3連続ベストタイム、続く6.04kmの短いスーパースペシャル・デル・パルケ・テマティコの2回目の走行でも0.9秒差の2番手タイムでまとめて、後続に42.2秒差をつけて朝のループを終えることになった。

「霧となったステージは本当に難しいものだった。霧のなかではややセーフティに行ったが、視界がクリアになってからはプッシュし始めた。クルマが望むままに走っているが、このタイムは僕に自信を与えてくれるよ」とタナクは語っている。

 タナクの後方では霧のなかでドラマが起きていた。3位につけていたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)と4位のダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)はわずか0.9秒差で土曜日をスタートしたが、ヌーヴィルは連続してチームメイトのタイムをしのぎ、SS10を終えて2位のミークに3.5秒差に迫ることになる。

 SS11では慎重に走ったミークに対して、大胆なスピードをみせたヌーヴィルが連続して2番手タイムを奪って2位へと浮上、さらにショートステージのSS12ではベストタイムを奪ってミークとの差を10.2秒に広げて突き放しにかかり、ソルドも離されまいとミークの16.3秒後方の4位で続く。

 土曜日の朝から予想外にペースが上がらなかったのはセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)。路面掃除から解放されたこの日、表彰台圏内までわずか7.8秒差でスタートしたオジエが追撃を開始するかにも見えたが、じわじわとペースを落とし、霧のSS11では50秒あまりをロス、朝の時点で6.9秒しかなかった4位のソルドとの差は49秒と広がってしまった。彼はステージエンドで「警告があったから僕は無理をしなかっただけだ」と語ったものの、詳細については明かさずに首を横に振って走り去ってる。トラブルではないと彼は語り、濃霧のなかで慎重に行きすぎたために彼は表彰台圏内から大きく離れることになった。

 午後のループになると気温は上昇、ステージの霧は晴れるなか、タナクがトラブルフリーの快走を続ける。彼はSS13でベストタイム、SS14ではこのラリーで10回目のベストタイムを奪い、ヌーヴィルとの差を46.5秒へと広げてみせる。

 コースが走行によって荒れて路面に多数の石がかき出された40.48kmのロングステージSS15ではタナクも右フロントダンパーにオイル漏れのトラブルを抱え、さらに時折パワーステアリングに不調が発生したために7.4秒をロスしたが、2位のヌーヴィルとはここで同タイム、タナクは46.5秒という大量のマージンを得て明日の最終日にトヨタでの初勝利を賭けて臨むことになった。

「最終ステージでは右フロントダンパーのオイルを失ったようだ。いくつかのセクションではパワーステアリングを失った。でも、今日は特にプッシュした気はしていない。マシンにはとてもいいフィーリングがあり、走りを楽しんだことがよかったと思う」

 この日の最終ステージではあまりもコースのコンディションが荒れていたため、ヌーヴィルもリスクを冒さずにペースを落としたと語ったほどだが、3位につけていたミークは不運なことに20km地点でコースにかき出されていた石を避けきれずにパンク、タイヤ交換によって2分30秒をロスして8位に後退することになった。これでソルドが21.7秒差の3位へと浮上、不満の残る一日となったオジエもソルドからは50秒遅れながらも4位へと順位を上げることになった。

 金曜日に首位争いをしながらパンクで8位に順位を落としていたアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)は霧のなかでコーナーを見誤ってしまいコースオフ、左リヤタイヤをパンクするハプニングはあったが、リヤが安定するセッティングをみつけて5位へと浮上してきた。

 トヨタのエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)はコドライバーを務めるヤンネ・フェルムがペースノートを読み間違えたためにSS11でコースオフ、どうにかステージに戻ることができたが54秒をロス、エルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)に抜かれて9位まで順位を落としてしまったが、最終ステージの2番手タイムでエヴァンスを抜き返して6位でフィニッシュした。

 エヴァンスは霧のSS11ではヒヤリとした瞬間がありながらも3番手タイムを出してみせたが、グリップに苦しんでペースが上がらずに7位で終えることになった。

 6位につけていたシトロエンのクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)はSS10を終えてペースの上がらないオジエに11秒差まで迫っていたが、SS11のジャンプの着地のあとで姿勢を乱して横転、リヤスポイラーを失い、フロントウィンドウを壊して10分近くを失いながらもどうにかフィニッシュするも、サービスに戻ったところでロールケージに損傷が見つかりリタイアとなってしまった。

 明日の最終日は、アルゼンチンを代表する2つのステージをこれまでと逆走するという新しいチャレンジがドライバーたちを待ち受ける。コピナ〜エル・コンドル(16.43km)、ジュリオ・セザレ〜ミナ・クラベーロ(22.41km)のあと、2回目のコピナ〜エル・コンドルがパワーステージとなる。オープニングSSのコピナ〜エル・コンドルは、現地時間9時8分(日本時間21時8分)のスタートが予定されている。