WRC2018/10/06

タナク、ヌーヴィルに28秒差をつけて金曜をリード

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 世界ラリー選手権(WRC)第11戦ウェールズ・ラリーGBは、金曜日から本格的な森林ステージが始まり、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が選手権リーダーのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)に28.8秒の差をつけてラリーをリードしている。

 前夜ティル・プリンス・レースウェイで行われたスペクテイターステージで幕を開けたラリーGBは、ノースウェールズの森林ステージに舞台を移して本格的なバトルが始まった。気温は10度前後で雨。路面はウエットでところどころに深い水たまりができ、ステージによって雨は激しくなり、霧も出る難しいコンディションだ。

 こうした中、ラリーをリードしたのはフィンランドから3連勝で波に乗るタナクだ。オープニングステージとなったSS2クロッケノグでベストタイムを刻みに首位に立つと、続くSS3、SS4と3連続ベストタイムを記録して後続に差をつけ、昨年のラリーGBの覇者エルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)に8.9秒の差をつけて午前のループを折り返す。タナク自身は「フィーリングは決して良くなかった」としながらも、グリップが常時変化していくトリッキーなコンディションの下で上手にペースをコントロールしているように見える。

 木曜日のスペクテイターズステージでベストタイムを記録したエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)の出足は厳しいものになった。ラッピは、SS2でスピンを喫し、SS3でもフロントにダメージを負うなど、ペースが上がらない。SS6で2番手タイムを記録して気を吐いたが、午前中のループを7位で終えることになった。ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)もSS2、3では原因不明のアンダーステアに悩まされタイムが伸びなかったが、SS4、5で2番手タイムを刻み、SS6では今ラリー初のベストタイムを奪ってタナクから15.4秒遅れの3位に浮上する。

 2位につけたエヴァンスは、多くのドライバーがミシュランのソフトコンパウンドを選択する中、 ミディアムコンパウンドのタイヤを履いて午前のループを走った。「グリップの変化が激しく、慎重な走りを心がけた」と苦笑いするが、地元ウェールズ出身で昨年のウイナーとなれば、その言葉にも重みが感じられる。

 21.5秒差の4位にはシェイクダウンで抜群の速さを見せたテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)。とはいえ、彼も滑りやすくグリップの安定しないコンディションで無理にペースを上げず冷静にラリーを走っているようだ。

 一番手からスタートしたヌーヴィルはSS4でジャンクションをオーバーシュートしてタイムロス、その後もリズムに乗り切れずに朝のループを終えて5位にとどまった。「トヨタのペースにはついていけない。グリップがなくてラインを修正しようとしてもクルマが反応してくれないんだ。サービスで問題を解決して午後にはペースを掴みたいね」と挽回を期する。

 悲惨だったのはセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)だ。SS4ペンマハノで1速、2速ギヤを失い、2度のスピンを喫してしまう。「最後のショートステージ(SS5、6)はタイトターンの連続でキツかった。スタートも3速ギヤだからね」。何とかサービスまで辿り着き、ギヤボックスとクラッチを交換して午後のループに臨む。

 午後のループは、午前中に走ったクロッケノグ、ブレニグ、ペンマハノの再走となる。雨は小康状態だが、二度目の走行で一部の路面は荒れている。

 ラリーが再開してすぐにドラマが起きる。SS7へと向かうロードセクションでエヴァンスのマシンがストップ。何とかスタートに向かおうとするがミスファイヤが酷く再びストップ。結局、昨年のウイナーは初日にしてリタイアとなってしまった。

 これでタナクは楽になった。午後のループではミディアムタイヤを選択し、SS7では「ステージは朝走った時よりもグリップがある」とベストタイムを奪い、SS8でも左フロントタイヤにダメージを追いながら連続ベストタイムを叩き出す。スペアタイヤを失った彼は最後のステージでは慎重なペースを守ったため3連続ベストタイムはならなかったものの、「午後のループは良かった。でも最後のステージはタフだったね」と2位以下に28.8秒差の首位で金曜日を終えた。

 エヴァンスのリタイアで2位に浮上したラトバラだったが、SS8で岩にヒットした際にフロントグラスを割ってペースを抑えたこともあって3位に後退。2位にはSS8で2番手タイムを刻んだヌーヴィルが浮上してきた。ヌービルはSS9ペンマハノの2回目でマシンの左リヤをヒットしながらも渾身のベストタイム。ラトバラはわずか0.9秒及ばずの2番手タイムで2.5秒差の3位でこの日を終えることになった。

「マディな路面には慣れない」としながらも良い感触を掴んでコンスタントに好タイムが出るようになったラッピがタナクから35.9秒遅れの5位までポジションを上げてきた。

 38.2秒差の5位は午前のループでギヤボックストラブルに泣いたオジエ。とはいえ、2位のヌーヴィルとオジエのタイム差はわずか9.5秒という僅差だ。

 オジエの後方10.6秒遅れの6位は「金曜日の呪い」を振り切って走ったクレイグ・ブリーン(シトロエンC3WRC)。7位にヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)、8位にマッズ・オストベルグ(シトロエンC3WRC)がつける。午前のループで4位をキープしていたスニネンはSS8でスピン、さらにSS9でコースアウトしてリタイアとなっている。

 土曜日はスウィートラム、ダイフィなどの中部ウェールズの名物ステージを中心に9SS、走行距離150.24kmで争われる。オープニングステージのSS10ミヘリンのスタートは日本時間午後4時35分を予定している。