WRC2018/04/28

タナクがスピンから鮮やかな逆襲、首位浮上

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 2018年世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・アルゼンチンはDAY1を終えて、トヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がラリーをリード、クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)が22.7秒差の2位につける展開となっている。

 木曜日夜にヴィージャ・カルロスパスのスーパーSSで開幕したアルゼンチンは、金曜日からコルドバ南西部のカラムチタ渓谷へと向かい、本格的な戦いの幕が開けることになった。この日のオープニングステージとなったSS2ラス・ハバダス〜ビージャ・デル・ディケ(16.65km)ではタナクがスピンによって23秒あまりを失う波乱が起きるなか、一番手のポジションからスタートしたセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)がベストタイムでラリーリーダーに浮上することになった。

 水曜日に降った雨と朝露の影響でところどころ路面は湿ってはいたものの、コースはほぼドライコンディション。オジエは路面掃除のハンデを負うことになったが、巻き上げるダストに救われることになった。2分間隔でのスタートのためダストは消えることなくコースに残り、さらに朝の斜めから差す太陽の光に後続のドライバーたちは視界を失い、ツイスティなステージでたまらずペースダウン、木曜日のナイトステージを終えて首位につけていたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)も8秒を失って4位へと後退するなか、オジエがここでは抜け出すことになった。

 しかし、続くSS3アンボイ〜ヤカント(33.58km)は中盤から速度が上がり、フィニッシュまでオープンで高速なステージとなるため、ダストは風に流されてコースにとどまらない。さらに主催者は前ステージの状況からこのステージから3分間隔でのスタートに変更、ダストの影響がなくなった後続のドライバーに対して、柔らかい土が覆う路面に苦しんだオジエが17.8秒遅れの7番手タイムに沈み、SS2の2番手タイムで2位につけていたアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)もここでは5番手となったものの、オジエを抜いて首位へと浮上することになった。

 このステージで目が覚めるような速さをみせて逆襲を開始したのはタナクだ。彼はこのステージでベストタイム、6人抜きを演じて一気に3位へと浮上、2位に順位を落としたオジエに5.9秒差に迫ることになる。

 それでもタナクはステアリングに問題があるとステージエンドで訴えた。「あれはばかげたミスだった。SS2で岩をヒットし、ステアリングの何かを壊すという愚かなミスをしてしまい、それがこのステージで問題を引き起こしていた。僕たちはなんとか少し良い走りをすることが出来たが、まだ直っていないんだ」

 だが、タナクは続くSS4サンタローザ〜サン・アグスティン(23.85km)でキャリア通算100回目のステージ勝利を獲得、オジエを抜いて2位に浮上、首位のミケルセンに1秒差に迫ることになった。タナクの勢いは止まらず、SS5スーパースペシャル・デル・パルケ・テマティコ(6.04km)でも2番手タイムを叩き出し、ミケルセンを逆転、0.8秒差をつけて首位でサービスへと戻ることになった。

 また、SS4で2番手タイム、SS5でベストタイムを奪ったクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)もオジエを逆転して3位へと浮上することになったが、首位のタナクから4位のオジエまではまだ4.5秒と大接戦だ。

 デイサービスを迎えたヴィージャ・カルロスパスは気温が29度へと上昇、午後のループにむけてリーダーのタナクはソフト3本とハード2本、2位のミケルセンはハード5本、3位のミークと4位のオジエはソフト5本とタイヤ選択は大きく分かれることになった。

 SS6ラス・ハバダス〜ビージャ・デル・ディケは、路面には深い轍が刻まれ、かき出された石がちらばる悪コンディションとなってドライバーたちを待ち受ける。不運だったのは2位につけていたミケルセン。彼はエンジンストールとともに右フロントのパンクによって39.7秒を失って8位に後退することになる。

 いっぽう、サスペンションをはじめとして問題のあったステアリングラックを交換したタナクはさらにペースをアップ、朝のループでスピンを喫したこのステージでこの日3つめとなるベストタイムを奪い、後続を大きく突き放すことになる。ミケルセンの後退で2位に浮上したミークが11.7秒差、3位のオジエも13.7秒へと差を広げられることになる。

 タナクはさらにSS7、SS8でも連続してベストタイムを奪い、ミークに22.7秒差をつけて金曜日をゴールすることになった。

 ミークは最終ステージで左フロントをスローパンク、3位のヌーヴィルが5.9秒差の背後に迫り、さらに0.9秒後方にはダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)が続くことになった。SS5でのベストタイムのほか2度の2番手タイムを奪ったソルドは、大きな岩に何度か乗り上げて、ヒヤリとした瞬間を何度か味わいながらも、彼はマシンに問題が起きなかったことを「チームに感謝したい!」と語っていた。

 オジエは午後になっても思ったほどクリーンになっていないステージに苛立つことになった。タナクとの差を少しでも縮めてこの日を終えたいと語っていたが、彼はSS6で姿勢を乱してフロントをバンクにヒット、エアロにダメージを負ったためにさらにペースを落としてしまう。彼はここで14秒を失い、3位から5位へと後退、「今のオットは飛んでいるとしか思えない。僕はギリギリだった。もう届かないよ」とタナクの速さを称賛することになったが、それでも彼は3位のヌーヴィルからまだ7.9秒遅れにすぎず、表彰台は十分に射程圏内だ。

 オジエの4.8秒後方の6位にはクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)がつけている。彼は木曜日夜のTC遅着による10秒のペナルティをうけたが、安定したペースでここまで挽回してきた。7位にはパンクが悔やまれるミケルセン、8 位にはWRカーでの初のアルゼンチンでラッピが続くことになった。

 また、タナクが速さを見せるなか、チームメイトのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)にとっては失望の朝となった。彼はSS3で残り10km地点でのスプリットタイムはベストタイムを奪ったタナクを2.1秒以上も上回る速さをみせたが、右コーナーでインカットした際に右フロント・サスペンションを壊して早くもリタイアとなってしまった。

 明日の土曜日はコルドバ北西部のプニージャ渓谷を中心とした7SS/146.88kmの一日となる。オープニングSSのタンティ〜マタデロスは現地時間8時23分(日本時間20時23分)開始予定だ。