WRC2019/08/04

タナクがトヨタ対決を制してフィンランド首位

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第9戦ラリー・フィンランドは8月3日、土曜日の8SS/132.98kmを終えて、トヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)がシトロエン・トタルWRTのエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3WRC)を16.4秒差でリードし、フィンランド連覇、今季4勝目に向かってひた走っている。

 ラリーDAY2のスケジュールは、パイヤンネ湖の畔りを走る14.42kmのピーラヤコスキから始まり、ラリー最長ステージでもある22.87kmのパイヤラー、フィンランド伝説のステージであるオウニンポウヤのショートバージョンとなる18.70kmのカカリスト、さらに2014年以来、久しぶりに使われるレウストゥの10.50kmをそれぞれ2回ループする構成だ。

 朝7時、雨の予報はないもののユヴァスキュラの空は雲に覆われており、気温は11.8度と低い。前日のポジションのリバースで2分間隔でのスタート。1.ガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)、2.テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)、3.ティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)、4.セバスチャン・オジエ(シトロエンC3WRC)、5.アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)、6.クレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)、7.タナク、8.エサペッカ・ラッピ(シトロエンC3WRC)、9.クリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)、10.ヤリーマティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)のオーダーとなる。全ドライバーがミシュランのミディアムコンパウンドを装着してステージへと向かった。

 最初のステージ、SS12ピーラヤコスキはステージの大半がルーズグラベルに覆われており、走行順の早いドライバーほど路面掃除に苦しむことは明らかだった。このステージでベストタイムを奪ったのは金曜日を首位から2.6秒差の4位のポジションで終えていたタナクだ。ラトバラ、ミーク、ラッピの3人をゴボウ抜きにして首位に躍り出た。とはいえ、4人のタイム差は僅差。2位のラトバラとは0.5秒、4位のラッピとも2.3秒しか離れていない。これが別名フィンランド・グランプリと呼ばれてきたこのラリーの特徴でもある。

 このステージではブリーンのマシンに異変。タイヤ空気圧の低下を示す警告灯がつき、ブリーンはパンクしたと判断し、タイムロスを喫した。これでミケルセンとポジションを入れかえ、6位に下がる。

 SS13パイヤラーは 22.87kmのラリー最長の距離を持つステージ。全体的にフィンランドらしいハイスピードでチャンレンジングなコースだ。ここでベストタイムを刻んだのはミーク。ラトバラもセカンドベスト記録してタナクを0.2秒かわしての首位に復帰する。3人のトヨタ・ドライバーのタイム差は驚くべきことにわずか0.6秒の僅差だ。4位にはトヨタの3台に食らいついたラッピが5.9秒差で続き、ミケルセンを凌いだブリーンが再び5位浮上を果たした。

 SS14は1000湖ラリーと呼ばれた時代からのフィンランドの伝説のステージであるオウニンポウヤの一部を含んだカカリストだ。ここでこれまでヒリヒリするような戦いを続けてきたトヨタ勢にドラマが起こる。3位につけていたミークがスタートから8km地点で左リヤサスペンションを壊してストップ。タイヤは完全に横を向いており、リタイアする以外に道はなかった。

 さらにトヨタの不運はこれだけに止まらなかった。首位を走るラトバラにも異変。左リヤタイヤをブローしてフェンダーを大きく破損、14秒遅れの7番手タイムでフィニッシュ。右フロントのカナードを破損しながらもベストタイムを奪ったタナクに13.9秒差の2位へとポジションを下げた。「右コーナーで僕のノートが速過ぎてワイドになってしまいディッチに落ちた。ディッチの中に頭くらいの大きさの石があったんだ」とラトバラは憤懣やるかたない。

 続くSS15レウストゥでは、そのラトバラが空力に問題を抱えたマシンにもかかわらず渾身の走りでベストタイムを奪った。だが療友タナクも0.1秒差のセカンドベストで続き、両者のタイム差は13.8秒ある。「(首位奪還よりも)今はマニュファクチュアラー選手権でラッピが脅威になっていることを考えれば、今は彼に集中していかなければならない」とラトバラは語った。

 午前のループを終えて首位タナクとラトバラの差は13.8秒。ラッピがラトバラの後方2.3秒でポジションアップを狙う。4位にはカカリストで3番手タイムを記録したミケルセンが23.6秒遅れで続く。5位には体調不良(腹痛のためほとんど睡眠が取れなかったという)を抱えながらも懸命に走るオジエが1.5秒差でミケルセンを追う。その0.8秒差の6位は「クルマのリヤの挙動に苦労している」というグリーン。ステージの掃除役に苦しむヌーヴィルはブリーンに17.2秒差の7位だ。

 2回目の走行となる午後のループは路面の荒れが懸念された。前日の金曜日も2度目の走行となるステージでは2輪駆動のマシンが走ったことで異なるラインが路面に轍となって刻まれ、とくにタイトターンでは苦労を強いられることになった。この日もステージにはところどころ轍が深く刻まれ、さらには大きな石が露出してドライバーたちを悩ませることになる。

 午後のループ最初のステージは2回目のピーラヤコスキ。ここでベストタイムを奪ったのはラッピだ。「(僕たちにとっては)クリーンなステージだった。すべての岩を避けることができたしね。望むならばもっとハードにプッシュできたはずだ」とコメントした。セカンドベストは「ところどころラフで難しかった」というオジエ。彼はミケルセンを抜いて4位に浮上する。3番手タイムの首位タナクは「路面がとてもラフだったのでホイールを痛めないように慎重に走った」と語る。

 タナクとラッピとのタイム差はここで12.4秒まで縮まったが、続くSS17パイヤラーは前ステージよりも路面は荒れていなかったようだ。タナクがベストタイムを奪い返し、セカンドベストを刻んだラッピとの差を14.4秒とした。3位のラトバラは懸命にラッピを追うが、「エサペッカのペースには驚いている。現時点で彼は素晴らしい走りをしている。それに比べて僕は少し慎重になり過ぎたかもしれないが、それも仕方ない。僕はマニュファクチュアラーポイントについても考えなければならないからね」と冷静だ。

 午前のループでトヨタ勢に不運が襲ったカカリストでの2回目の走行は、再びペースを上げたラッピがベストタイムを奪った。「良い走りができた。僕らのタイヤは完全に磨耗したと思うけれど、気にしない」と高揚を抑えきれない様子だ。13.9秒差とタイムが縮まった首位のタナクは「マシンも良く、ステージも楽しめた。クリーンな走りができたよ。(ラッピとのタイム差については)どうなるかな。僕は大丈夫だと思うけどね」と余裕がある。3位のラトバラは「エサペッカは良い何かを掴んだのかもしれないね。僕らはマシンを無事にフィニッシュさせなくてはならない。少なからずそのことがパフォーマンスに影響を与えていると思う」と語った。

 この日最終のSS19レウストゥではミケルセンがベストタイムを記録、タナクはセカンドベストで首位を守り、ラッピは16.4秒差の2位で最終日を迎えることになった。3位は何とかしてラッピとの差を詰めたかったラトバラ。「エサペッカのドライビングは素晴らしかった。脱帽だよ。僕らはマニュファクチュアラーポイントのことを留意しなくてはならない」とコメントした。4位にはミケルセン。5位は終日体調不良を抱えながらもスピードを見せたオジエが2.6秒差で続く。

 8カ月ぶりのWRCとなったブリーンは健闘、オジエの後方6秒差の6位から反撃を期して最終日に臨む。7位は午後のループでマシンのリヤの挙動に悩まされてタイムが上がらなかったヌーヴィル。問題は解決したようだが、厳しい状況だ。スタートオーダーにも阻まれて、終日ペースを掴みきれなかったスニネンが9位。グリーンスミスが10位というオーダーだ。

 ラリー最終日となる日曜日は現地時間の朝7時半にユヴァスキュラをスタート。11.75kmのラウカー、3連ジャンプのあるルーヒマキ(11.12km)をサービスを挟んで2回走るスケジュールが組まれ、2回目のルーヒマキがパワーステージとなる。