WRC2019/08/05

タナクがフィンランド連覇、トヨタ3年連続W表彰台

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 2019年世界ラリー選手権第9戦ラリー・フィンランドは4日に最終日を迎え、トヨタGAZOOレーシングWRTのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が今季4勝目を飾るとともに選手権のリードを22ポイント差に広げることに成功している。2位にはエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)、3位にはヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)が続き、トヨタがホームイベントで3年連続でダブル・ポディウムを獲得することになった。

 ラリー・フィンランドの最終日は、ラリーリーダーのタナクの通算200回目のステージウィンとともに始まることになった。タナクはSS20ラウカーで2番手タイムのセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)に1.1秒差をつけるベストタイム。「ちょっと驚いている。とてもクリーンに走れたから特別なことは特にない。全体的に感触はいいし僕たちはいいリズムに乗れている」とタナクはステージエンドでも淡々と答えている。

 16秒をリードして最終日を迎えたタナクのリードはこれで20秒へと広がることになった。残されたのはわずか3ステージのみ。昨日のような超接戦ならいざ知らず、盤石の走りを続けてきたラリーリーダーにこの状況でもはやドラマは起こりようもない。あとはクリーンな走りを続けて、タイヤをマネージメントしてパワーステージに焦点を移すだけだ。

 いっぽう、勝利が計算できる状況に近づいたタナクの後方では、まだまだ小さなミスでラリーが動く可能性をはらんでいる。朝の時点で2位のラッピと昨年までチームメイトだったヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)との差は12.4秒。とくにこのラウカーはラッピが昨年、高速コーナーで切り株にヒットして360度スピンしてマシンを止めた悪夢のステージだけに、ラトバラにとっては挽回のチャンスだ。

 ラッピはここで5番手タイムで発進、3番手タイムのラトバラに10.9秒差まで迫られてしまった。「やや慎重に行き過ぎたかもしれないが、去年の終わり方よりこの方がずっといい!」と余裕の表情で語ったラッピだが、次のSS21ルーヒマキではラトバラがさらに猛チャージ、ベストタイムを奪った彼はラッピとの差を7.3秒差まで縮めてきた。

 それでもラッピにはプレッシャーが感じられる様子はない。今季不振の風に晒されてきた彼にとって、すでにそれらを十分に取り返せるだけの満足できる週末になっていた。SS21ラウカーで今度は2番手タイムを叩き出したラッピは、ラトバラとの差を8.6秒差に広げたとはいえ、順位などは関係ないと笑顔で言い切った。「朝も言ったように、僕は愚かなミスをしたくない。3位に順位を落としても僕にとって勝利のようなものだ。だからとてもリラックスしているよ!」

 二人の後方の4位をめぐるバトルはさらに緊迫した状態で朝を迎えている。金曜日の夜に見舞われた腹痛のためにセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)は土曜日の夜にアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)につかまり、わずか2.6秒差で最終日をスタート、オジエはSS21で1.6秒を削りとって1秒差に迫るも、SS22ではミケルセンが反撃、二人の差は1.7秒へとわずかながら広がることになった。

 この状況を後方から見守ったのはヒュンダイ・モータースポーツからスポット参戦するクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)だ。彼はオジエの6秒後方からこの日をスタート、「このゲームではあえて危険を冒していくことも時に必要だ。今がその時だ」と語ってスタートする。全開で攻めてあとひとつ順位を上げてフィニッシュすれば最高の結果をチームにもたらすことができる。もし、クラッシュしても20秒の背後にはチームメイトのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が続いているため選手権ポイントへの影響はゼロだ。

 だが、渾身の走りで攻めるもオジエのペースには歯が立たない。ブリーンは、2つのステージを走った段階でオジエとの差が13秒差へと広がったのを見るや、タイムコントロールへ2分遅着することを選び、彼の後方で大きく遅れて続いていたチームメイトのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)の選手権のために6位のポジションを譲ることになる。

 ステージエンドでレポーターにタイムコントロールに遅れた理由を聞かれたブリーンは、「それこそが僕らがここにいる意味だ。それでも僕たちはここで戦うことができて嬉しいし、期待した以上だよ」と、ヒュンダイの役に立って最終ステージを迎えることができたことに満足した笑みをみせることになった。

 そして残されたルーヒマキのパワーステージはこの時点の順位でのリバースで走行が行われる。長かった緊迫した戦いもついにここで決着を迎える。オジエの追撃から2.7秒差で逃げ切ったミケルセンが4位でフィニッシュ、オジエは5位に終わることになった。また、ラッピとラトバラの2位をめぐる対決は、ここではラトバラがチームの選手権を優先した走りに徹し、ラッピもまたセーフティサイドの走りだったが7.6秒差でラトバラの追撃から逃げ切って2位でフィニッシュした。

 そして最終走者としてパワーステージに挑んだラリーリーダーのタナクが、選手権での挽回を喫して暫定トップタイムで走りおえたヌーヴィルのタイムを0.7秒差で上回り、2年連続優勝にボーナス5ポイントの華を添える完全勝利を飾ることになった。

「いい気分だ!ビッグな週末だったよ。夏休みは僕にとって本当にいいタイミングできてくれたと思う、(最終ステージのトラブルで優勝を失った)サルディニアで相当打ちのめされたあとだっただけにね。こうして最高のリザルトを手にすることができた、最高の週末を過ごすことができた。今度はまたこれを継続していくことが必要だ。まだラリーは5つある、大きな仕事が待っているんだ」

 ラッピがトヨタの1-2を阻んで2位フィニッシュ、半年ぶりに表彰台にカムバックした。そして、ラトバラにとってはこれが今季初ポディウムだ。4位はミケルセン、5位はオジエ、6位ヌーヴィル、7位ブリーン、8位スニネンという結果となった。

 また、土曜日にディッチに石にクラッシュしてリタイアしたクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)はSS22ラウカーの3km地点の非常に高速なセクションの左コーナーでインカットした際に草むらの石か切り株にヒットして180度スピン、タイヤを失ってまたもリタイアとなった。また、9位につけていたMスポーツ・フォードのガス・グリーンスミスもSS21ルーヒマキの左コーナーでオフ、立ち木にヒットしてリタイアになっている。

 ドライバー選手権は、フィンランドをパーフェクトな結果で終えたタナクが180ポイントにリードを伸ばし、4ポイント差だったオジエとの差を22ポイントもの大差をつけ、ヌーヴィルも25ポイント差となっている。また、マニュファクチュアラー選手権では3年連続でWポディウムを達成したトヨタが、44ポイント差だったヒュンダイとの差を24ポイントへと縮め、母国ラウンドで選手権の逆転にむけて力強いシーズンの折り返しをみせることになった。

 世界ラリー選手権はこのあと2週間のインターバルを経て次戦ラリー・ドイッチュランドを迎えることになる。2年連続してドイツを制しているタナクがここでも選手権のリードを広げるのか、それともオジエとヌーヴィルが反撃をみせるのか。トヨタ・ヤリスWRCでのWRCデビューを迎える勝田貴元にも要注目だ。