WRC2022/09/30

タナクが首位もトップ4が7.2秒にひしめく

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 2022年世界ラリー選手権(WRC)第11戦ラリー・ニュージーランドのレグ1は、雨によるトリッキーなコンディションのなかで4度もトップが入れ替わる波乱の一日を終えてヒョンデ・モータースポーツのオイット・タナク(ヒョンデi20 N Rally1)がトップに立ったが、エルフィン・エヴァンス(トヨタGRヤリスRally1)が0.2秒差で続くともに、トップ4が7.2秒にひしめく大接戦状態となっている。

 前夜にオークランド市中心部にあるプケカウ・オークランド・ドメイン公園のターマックで行われたスーパーSSで開幕したラリー・ニュージーランドは、金曜日からオークランド近郊のワイカト・エリアの流れるようなグラベルステージへと舞台を移して本格的な戦いを開始、フアンガ・コースト(29.27km)、テ・アカウ・ノース(31.48km)とテ・アカウ・サウス(18.53km)の3ステージを2回ループする。

 しかも金曜日は、ミッドディサービスの機会がなく、ラグランでのタイヤ交換のみで、2つのループを走りきらなければならない厳しい一日となり、さらにこの日だけで残り2日間より走破する距離は長く、ラリー全体の距離の57%を占める6SS/158.56kmを走破するという、まさしく「モンスターレグ」だ。

 WRCでもっとも美しいステージの一つに数えられるオープニングステージのSS2フアンガ・コーストは、雨が吹き付けるコンディションとなったが、美しい海岸沿いのコーナーには10年ぶりのWRC復活を待ち望んできたであろうおびただしい数の観客たちがラリーカーを見守ることになった。

 オーバーナイトリーダーのタナクが5.8秒遅れの4番手タイムで4位に後退するなか、ここで最速タイムで駆け抜けたのはMスポーツ・フォードのガス・グリーンスミス(フォード・プーマRally1)だ。彼はセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリスRally1)を0.4秒差で抑えて、開幕戦モンテカルロ以来となるベストタイムで2位へと浮上することになった。さらに3番手タイムを刻んだクレイグ・ブリーン(フォード・プーマRally1)が首位に立つことになり、Mスポーツ・フォードは、前戦アクロポリス・ラリーを再現するかのように1-2態勢を築くことになった。

 2.4秒差の3位にはオジエ、4位に後退のタナク、5位にはエヴァンスというオーダーで続き、選手権リーダーのカッレ・ロヴァンペラ(トヨタGRヤリスRally1)は雨によって路面掃除が少しはマシになったとはいえ、路面にはかなりのルースグラベルがあるため13.2秒も遅れた6番手タイムに沈み、いきなり6位にポジションを落としている。

 前ステージではドライなコンディションが残っていたものの、降り続く雨によってSS3テ・アカウ・サウスはフルウェットとなるなか、エヴァンスがベストタイム、グリーンスミスを抜いて3位へと浮上することになった。さらに31.48kmというラリー最長の距離にもかかわらず、ここでは選手権を争うロヴァンペラとタナク、さらにブリーンまでもが同タイムのセカンドベストで並ぶことになり、ブリーンが首位をキープ、タナクが2位へと順位を上げている。

 ブリーンはステージエンドで「息をのむような美しさだった」と笑顔をみせたが、「思っていたほどコミットできなかった」と付け加え、この難しいコンディションのなかで完全に自信をもてているわけではないと懸念をみせた。

 SS4テ・アカウ・ノースは雨は小降りになっているが、路面はフルウェット、川が生まれているコーナーもある。このコンディションは先頭グループにとっては助けとなったようだ。2番手のポジションでスタートしてるタナクが圧巻のベストタイム、ブリーンを5.9秒も引き離して首位を奪うことになった。

 ブリーンは、ツイスティなフアンガ・コーストでは速さをみせたが、ここでは1kmあたり0.3秒も失ったことに自信を曇らせた。「そのタイムはあまり嬉しくないニュースだ。正直、クリーンにループを走れるのはいいんだけど、僕はなかなかプッシュすることができなかった」。彼は3番手タイムのエヴァンスも同タイムの2位で並ばれてしまった。

 朝のループを終えて4位にはグリーンスミス、0.7秒後方の5位には6月のサファリ・ラリー以来、3カ月ぶりのラリーを走るオジエが続いている。8番手という後方のポジションからスタートしたオジエは、ドライコンディションのなかクリーンな路面でのスタートを望んでいたが、ここまでは期待外れのスタートとなってしまっており、テ・アカウではマディなルースグラベルでペースを取り戻すことに時間がかかっていることを打ち明けている。「すべて順調だ、でも午後はもっと速く走らないとね」

 路面掃除を雨に助けられたロヴァンペラはここでも2番手タイム、朝のループを首位から10.7秒遅れの6位にとどめ。オジエの1秒差の後方につけている。

 めまぐるしくグリップが変わるトリッキーなコンディションのなかでペースが上げられないのは、前戦勝者のティエリー・ヌーヴィル(ヒョンデi20 N Rally1)だ。彼は、テ・アカウ・サウスの連続するコーナーのバンプでリヤのグリップを失ってスピンしており、40.9秒遅れの7位にとどまっている。また、まったく同じ場所でスピンした勝田貴元(トヨタGRヤリスRally1)もリズムに乗れずに8位にとどまっている。

 ラグランでのタイヤ交換を終え、ラリーカーは午後のループへと向かって行くが、ステージは強い雨が降り始めている。フアンガ・コーストの2回目の走行となるSS5は、泥だらけとなったツイスティなセクションと青空が出てダストが巻き上がるほどの完全なドライのセクションが入り混じる奇妙なコンディションとなってドライバーを待ち受けていた。

 この難しいコンディションでこの週末最初の犠牲者が生まれてしまう。中間スプリットでは首位のタナクを上回ったブリーンはトップを奪回するペースを見せていたが、終盤の27.2km地点のタイトな右コーナーでリヤをスライドさせてオフ、ディッチに滑り落ちてしまう。

 彼は観客の助けを借りてどうにかコースへと戻ったが、18分という致命的な遅れを喫してしまう。さらに彼は湿った草むらから脱出するためにクラッチを酷使しており、ロードセクションでマシンをストップ、勝利のチャンスを期待されながらもまたも最悪の結果でラリーを終えることになった。「何が起こったか自分では分かっている。こんなミスをしてはいけないことも分かっている。非常につらい・・・」

 こうした悪夢のような出来事が起きるなか、他の誰よりも8.4秒も速いペースをみせたオジエが5位から一気に首位へと浮上することになった。オジエはステージエンドでタイムを確認する間もなくマシンを飛び降りて、タイヤをチェックしたが、問題はなさそうだと笑顔をみせることになった。「いい感じだ! 午後は最初からプッシュする計画だったが、ここはまだ1つ目だからね。予想以上にドライなところが多かったけど、タイヤの摩耗は大丈夫そうだ」

 リピートステージのここでは先頭グループは後続のRally2マシンがかき出したグラベルに悩まされることになり、首位のタナクはロヴァンペラとともに6番手タイムに沈み、7.5秒差の3位へと後退してしまった。オジエから1.3秒差の2位にはエヴァンスが浮上、リーダーボードは大きく動いた。

 ラリー最長ステージのテ・アカウ・サウスは、スタートして以降、次第に雨が強く降り始め、ラリーの主導権を握ったかに見えたオジエが土砂降りのなかで波乱に見舞われる。

 オジエはマディなコンディションとなった終盤の左コーナーでリヤをスライドさせてしまいコース脇に繁っている木の枝にヒット、リヤウイングを壊してしまう。このトラブルにもかかわらず、彼は6.5秒に遅れにとどめ、首位をキープすることに成功した。

 衝撃音はコクピットにも届いていたはずだが、オジエは完全にリヤウイングを失ったことは想像もしてなかったようだ。彼はステージエンドで、レポーターの問いに「何を言っているんだ?」と信じられないといった表情をみせたが、「それは良くないね!問題になることは確かだけれど、泥だらけなのでタイムをどれだけ失うかはわからない」と、一瞬のうちにこの日残された1ステージが難しくなったことを覚悟したようだった。

 5.6秒差の2位にはエヴァンスが続いているが、彼もゲートの柱に軽くヒットするなど、雨とマディなコンディションに苦しんでペースを上げられなかったと認めている。「いくつかの地点では何も見えなかった。しばらく雨が激しく、アクアプレーニングが多くて非常に悪いコンディションだった」

 コンディションに苦戦したエヴァンスの背後にはあまり雨の影響がなかった二人のフロントランナーたちが迫ってきた。彼の1秒後方の3位にタナクがピタリと続き、さらに5.1秒後方の4位には、ベストタイムを奪ったロヴァンペラがグリーンスミスを一気に抜き去って追い上げてきた。

 この日の最終ステージのテ・アカウ・ノースでは、前ステージでリヤスポイラーを失ったオジエは13.3秒遅れの6番手に沈み、トップから6.7秒遅れの3位に後退した。これでベストタイムを奪ったタナクがエヴァンスに0.2秒差をつけて首位に立つことになった。

 それでもタナクはこの程度のリードには意味がないことだと語っている。「とても長い一日だった。午後には激しい雨に見舞われたり、いくつかのステージは悪かったが、いい流れに乗るにはクルマへの信頼が必要で、この部分をもっと改善する必要があるのは間違いない。明日は天候が回復しそうなので、コンマ何秒の差は意味がないよ」

 オジエはタイヤのマネージメントが完全にうまくいっているなかでエアロを壊したことを悔やんだが、明日の土曜日の巻き返しを誓っている。「リヤウィングがない状態でこのような高速ステージではどうしようもない、出来ることはやったが、戦いの続きは明日だ」

 4位にはロヴァンペラが続くが一番手のスタートだったにもかかわらず、首位からもわずか7.2秒遅れにとどめている。「ここまではとても順調だった。ミスもなく、できることはすべてやってきたが、ここではタイムを失うことになりそうだった。タイヤがだめになり、グリップがなかったんだ」

 トップ4が7.2秒差にひしめく一方、その後方とは大きなギャップが生じている。トップから43.8秒遅れの5位にはグリーンスミス、さらに1.8秒後方の6位につけるヌーヴィルも不満の表情だ。「まだマシンに100パーセントの自信を持てずにいるので、いくつか改善しなければならない。ギリシャでは快適だったけれど、その他のラリーではプッシュするのに十分なフィーリングが得られたことは一度もない」

 タイヤの摩耗に苦しんだオリヴァー・ソルベルグ(ヒョンデi20 N Rally1)はチームメイトのヌーヴィルから42.7秒差の7位で続いており、13.7秒差の8位には難しいコンディションのなかで自信を失ったという勝田が続いている。「今日の午後は非常に複雑なコンディションで、あまりコミットできなかった。改善すべき点がたくさんあるので、夜は明日に向けてできることを考えたい」

 明日の土曜日はオークランド北部のエリアを舞台とした6SS/88.28kmの短い一日となる。オープニングステージのカイパラ・ヒルズは現地時間8時4分(日本時間4時4分)のスタートが予定されている。
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 ラリー最長ステージのテ・アカウ・サウスは、スタートして以降、次第に雨が強く降り始め、ラリーの主導権を握ったかに見えたオジエが土砂降りのなかで波乱に見舞われる。

 オジエはマディなコンディションとなった終盤の左コーナーでリヤをスライドさせてしまいコース脇に繁っている木の枝にヒット、リヤウイングを壊してしまう。このトラブルにもかかわらず、彼は6.5秒に遅れにとどめ、首位をキープすることに成功した。

 衝撃音はコクピットにも届いていたはずだが、オジエは完全にリヤウイングを失ったことは想像もしてなかったようだ。彼はステージエンドで、レポーターの問いに「何を言っているんだ?」と信じられないといった表情をみせたが、「それは良くないね!問題になることは確かだけれど、泥だらけなのでタイムをどれだけ失うかはわからない」と、一瞬のうちにこの日残された1ステージが難しくなったことを覚悟したようだった。

 5.6秒差の2位にはエヴァンスが続いているが、彼もゲートの柱に軽くヒットするなど、雨とマディなコンディションに苦しんでペースを上げられなかったと認めている。「いくつかの地点では何も見えなかった。しばらく雨が激しく、アクアプレーニングが多くて非常に悪いコンディションだった」

 コンディションに苦戦したエヴァンスの背後にはあまり雨の影響がなかった二人のフロントランナーたちが迫ってきた。彼の1秒後方の3位にタナクがピタリと続き、さらに5.1秒後方の4位には、ベストタイムを奪ったロヴァンペラがグリーンスミスを一気に抜き去って追い上げてきた。

 この日の最終ステージのテ・アカウ・ノースでは、前ステージでリヤスポイラーを失ったオジエは13.3秒遅れの6番手に沈み、トップから6.7秒遅れの3位に後退した。これでベストタイムを奪ったタナクがエヴァンスに0.2秒差をつけて首位に立つことになった。

 それでもタナクはこの程度のリードには意味がないことだと語っている。「とても長い一日だった。午後には激しい雨に見舞われたり、いくつかのステージは悪かったが、いい流れに乗るにはクルマへの信頼が必要で、この部分をもっと改善する必要があるのは間違いない。明日は天候が回復しそうなので、コンマ何秒の差は意味がないよ」

 オジエはタイヤのマネージメントが完全にうまくいっているなかでエアロを壊したことを悔やんだが、明日の土曜日の巻き返しを誓っている。「リヤウィングがない状態でこのような高速ステージではどうしようもない、出来ることはやったが、戦いの続きは明日だ」

 4位にはロヴァンペラが続くが一番手のスタートだったにもかかわらず、首位からもわずか7.2秒遅れにとどめている。「ここまではとても順調だった。ミスもなく、できることはすべてやってきたが、ここではタイムを失うことになりそうだった。タイヤがだめになり、グリップがなかったんだ」

 トップ4が7.2秒差にひしめく一方、その後方とは大きなギャップが生じている。トップから43.8秒遅れの5位にはグリーンスミス、さらに1.8秒後方の6位につけるヌーヴィルも不満の表情だ。「まだマシンに100パーセントの自信を持てずにいるので、いくつか改善しなければならない。ギリシャでは快適だったけれど、その他のラリーではプッシュするのに十分なフィーリングが得られたことは一度もない」

 タイヤの摩耗に苦しんだオリヴァー・ソルベルグ(ヒョンデi20 N Rally1)はチームメイトのヌーヴィルから42.7秒差の7位で続いており、13.7秒差の8位には難しいコンディションのなかで自信を失ったという勝田が続いている。「今日の午後は非常に複雑なコンディションで、あまりコミットできなかった。改善すべき点がたくさんあるので、夜は明日に向けてできることを考えたい」

 明日の土曜日はオークランド北部のエリアを舞台とした6SS/88.28kmの短い一日となる。オープニングステージのカイパラ・ヒルズは現地時間8時4分(日本時間4時4分)のスタートが予定されている。