WRC2017/08/20

タナクが21秒をリード、ターマック戦初勝利なるか

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 2017年世界ラリー選手権(WRC)第10戦ラリー・ドイッチュランドは、Mスポーツ・ワールドラリーチームのオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)が土曜日も首位を守りきっており、21秒のマージンをキープしたまま明日の最終日でターマックラウンドの初優勝を狙う。

 前日の雨が嘘のような青空が広がった土曜日は、選手権リーダーのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)がリタイアとなる衝撃の幕開けで始まることになった。

 オープニングステージのSS9アリーナ・パンツァープラッテは、41.97kmというラリー最長にして最難関のパンツァープラッテに挑む前のわずか2.87kmという短いウォームアップ・ステージにすぎない。前日までのトリッキーなコンディションから比べれば、はるかにラクな路面にも見えるが、まさかの罠が潜んでいた。
 
 ヌーヴィルは見通しのいい左コーナーでインカットしてダートから出るときにアスファルトの段差にホイールをヒット、左リヤタイヤを引きずりながらこの短いステージをゴールすることになる。しかし、彼が想像していた以上にダメージは大きく、ドライブシャフトやサスペンションは完全に失われており、初タイトル獲得を目指してきた彼はここで痛恨のリタイアとなってしまった。
 
 オープニングSSでトップタイムを奪ったのはタナク。昨日まで降った雨によって路面は湿っているところが多いと見られていたが、朝のステージの大部分はドライとなっており、ライバルのアンドレアス・ミケルセン(シトロエンC3 WRC)に5.7秒差をつけてスタートしたタナクは、ハードタイヤとソフトタイヤのミックスの戦術を成功させ、このステージでその差を6.3秒へと広げることに成功した。

 タナクは41.97kmという長いSS10では終盤でリヤタイヤの表面が剥離する問題を抱えながらも3番手タイムでフィニッシュすることになったが、オールソフトタイヤでスタートしたミケルセンに対してその差を15.3秒へと広げることなる。

 ミケルセンは、「思っていたよりもずっとドライだった、ハードタイヤを2本装着するべきだった」とタイヤチョイスの失策を後悔することになったが、その焦りがミスを招くことになる。彼はSS11フライゼンのジャンクションでスピン、さらにその直後にエンジンをストールさせるミスを犯して10秒をロス。彼は続くSS12ルーマ-ストゥラッセではベストタイムを奪って反撃したものの、タナクはリードを23秒へと拡大して朝のループを終えることになった。

 ミケルセンのミスによって、3位につけるセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)もわずか6.9秒後方へと迫ってきた。ヌーヴィルのリタイアによって3位に浮上したオジエは、このままゴールすれば選手権のイニシアティブをふたたび掌握できることになるため、SS10をゴールしたあと、ポジションを確実にキープする走りに戦略を切り変えたともうけとれるコメントを残していたが、彼はペースを落とさず、じわじわとミケルセンにプレッシャーをかけてさらなる上位を狙っているかのようだった。

 短いアリーナ・パンツァープラッテの2回の走行から始まった午後のループ、タナクはこの2つのステージともミケルセンのタイムを上回る速さをみせ、リードを26.7秒へと広げることになる。彼は2回目のパンツァープラッテ以降、ややペースを落としてクリーンな走りに専念することになり、最終的にミケルセンとの差を21.4秒として土曜日をゴールすることになった。

 ミケルセンとオジエの2位争いは午後になっていっそう熱を帯びることになった。SS14のスタートでミケルセンがエンストしたためオジエが4.5秒差まで迫ることになったものの、パンツァープラッテのロングステージで素晴らしい速さをみせたミケルセンがオジエを突き放してリードを7.7秒差まで広げてみせる。

 オジエもSS15ではベストタイムで応酬、二人は残りステージでも一進一退の攻防を繰り広げたものの、ダートの出ていたコーナーでオジエがミスをしたため、ミケルセンが8.2秒差をつけて2位を守り切っている。

 土曜日を終えて4位をキープしたのは、DMACKタイヤを装着するエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)。しかし、ほぼドライコンディションとなったこの日、彼はペースが上がらず苦しむことになる。これに対して、朝のループで4本ともハードタイヤをチョイスするギャンブルを成功させたユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)が後方から追撃を開始、SS10パンツァープラッテの最速タイムを奪い、22秒あったエヴァンスとの差を瞬く間に縮めることになる。

 ハンニネンはSS13でエヴァンスを捕らえて一時4位に浮上することになるが、彼は午後の2回目のパンツァープラッテの走行でダンパーに問題を抱えることになり、終盤のステージで4位をエヴァンスに譲ることになってしまった。

 ハンニネンの14.2秒後方の6位につけるのはクレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)。彼は30秒の後方から土曜日をスタートしたヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)の激しいプレッシャーに耐えていたが、SS14を終えて6.7秒差まで迫られることになってしまった。だが、ラトバラはパンツァープラッテのロングステージでパンクのため大きなタイムロスを喫することになり、ブリーンとの差は1分58秒へと広がることになってしまった。

 8位にはヒュンダイ勢での最上位となったヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)が続き、チームメイトのダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)は総合36位となっているものの、午後のループの3ステージでベストタイムを奪取、初日に崖下に落ちたリタイアが悔やまれる速さをみせている。

 明日の最終日はローサイム・アン・ゼィ(13.02km)とサン・ウェンデラー・ランド(12.95km)の2つのステージを2回ループする短い一日。ラリー最大のヤマ場となる土曜日を終えて21秒のリードを築いたタナクが安全圏ともいえるタイムを守り切り、今季2勝目を飾ることになるだろうか。最終日のオープニングSSは7時25分(日本時間14時25分)からスタートする予定となっている。