WRC2018/07/29

タナクが39秒をリード、フィンランド初勝利に迫る

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 2018年世界ラリー選手権第8戦のラリー・フィンランドは、土曜日のレグ2を終えてトヨタGAZOOレーシング・ワールドラリーチームのオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が首位をキープ、2位で続くマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 WRC)との差を39秒に広げて勝利に王手を掛けている。

 レグ1を5.8秒のリードで終えたタナクは、土曜日のオープニングステージであるSS12パイヤラ(23.92km)を目の覚めるようなベストタイムでスタート、2番手タイムで続いたオストベルグに8.5秒の差をつけてリードを一気に14.3秒へと広げてみせた。しかし、タナクはステージエンドで「全然プッシュしていない、昨日は全開だったけど、今朝はリスクを冒す前に他がどれくらいのペースになるのか確かめたかったんだ」と、まだまだ余裕があったと平然と言いのけている。

 だが、言葉とは裏腹にタナクのハイペースは止まらない。彼は続くSS13ピーラヤコスキ(14.90km)、SS14カカリスト(23.66km)、SS15トゥオヒコテネン(8.95km)と連続してベストタイムを奪い、朝のループを終えてオストベルグに23.7秒差をつけることになった。

「今のステージはリズムも良かったみたいだ。でも、昨日みたいなハードプッシュじゃないのは確かだよ。昨日より路面のグリップがあったので、朝のうちはいいフィーリングでなかったので慎重に行っていたんだ」とタナクは語っている。

 オストベルグも朝のループを終えて彼の意識がすでにタナクではなく、3位のラトバラへと移っていることを認めている。「いまはややラトバラに集中しているよ。ここでは小さなミスをして1秒ほど失ったが、彼との差はマネージメントできている。オットも同じことを考えているだろうね」と彼は語った。朝の時点で17.3秒差だったラトバラの差は、いまや20.9秒へと開いているが、オストベルグはまだ楽観できないと気を引きしめていた。

 また、母国戦での久々の勝利に期待してきたラトバラは朝から全開でプッシュしてきたが、首位のタナクとの差は縮まるどころか44秒まで広がっており、「オットはもう彼だけの特別クラスにいる。僕にチャンスはなさそうだ」とがっかりしたように語りながらも、打倒オストベルグへ気持ちを切り替えていた。

 4位のヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)はブレーキトラブルのためにタイムを失い、ラトバラから31.9秒差とややリードを広げられてしまった。さらに8位でスタートしながら瞬く間にMスポーツ・フォードの3台のフォード・フィエスタWRCを抜いたエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)が5位へと浮上、パッドンの13.6秒差の背後に迫ってきた。

 午後のループは朝と同じ4ステージを異なる順番で走る設定となり、最初のステージは朝の最後のステージだったトゥオヒコネンの2回目の走行が設定されている。タナクは、チームメイトのラトバラとここではベストタイムを分け合い、朝から5ステージ連続でベストタイムを奪ってオストベルグとの差を27秒へと拡大、このまま完璧な走りでこの日の全ステージを制覇するかにも思われた。

 だが、SS17カカリストではラッピがベストタイムを奪い、タナクは2.4秒差の3番手タイムにとどまることになり、「パワーステアリングに問題があるが、ドライブには問題ないと思う」と不安を口にする。

 タナクは続くSS18、SS19では路面がかき出された石だらけだったことから慎重な走りでペースをコントロールすることになったが、トラブルへの懸念を打ち消すようにいずれもオストベルグを上回るタイムでまとめてその差を39秒へと拡大してこの日をゴールすることになった。「パワーステアリングの問題はなんとか改善できたことは確実だね。マシンはかなりドライブしやすくなった。だがラフなコンディションで、道路上が石だらけだったので、慎重に行ったんだ」

 朝のループの終盤でグリップに苦しんだオストベルグは、午後のループにむけて2本のスペアタイヤを搭載して臨んだものの、1回のベストタイムと2回の2番手タイムを出したラトバラに対して4番手タイムがせいぜいで、おまけに最終ステージを走り終えた彼のタイヤはほとんど終わりかけている状態だ。

 午後のループをスタートした時点で20.9秒あったラトバラとの差はわずか5.4秒に縮まってしまい、オストベルグはC3の速さを認めながらも、タイヤの摩耗が激しすぎだと問題を指摘した。「正直に言って、ラトバラがたった1本のスペアタイヤでどうやってあのタイムを出してきたのか分からない。僕は2本スペアを積んだが、最終ステージをスタートした時にはタイヤのブロックはほとんど残っていなかった。ゆっくりと走るしかなかったんだよ」

 ラトバラも最後のステージではタイヤが苦しかったことを認めながらも、いまや2位が完全に視界にはいった走りができたことに満足しており、明日の最終日にはモンテカルロ以来となる表彰台を目指すことになる。

 また、タナクに代わって午後のループを席巻したラッピは、SS17から3連続でベストタイムを奪取、この日の最後のステージでパッドンを抜いて4位に浮上してきた。また、6位にはリヤのグリップに苦しんだスニネンが続いている。

 いっぽう、セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)は、チームオーダーによってエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)に順位を譲られてレグ2をスタートしたが、新しいエアロのセッティングに苦しんでペースが上がらず、チームメイトにポジションを明け渡すことになった。それでも彼は午後のループでどうにか7位へと順位を戻したが、旧いエアロダイナミクスに戻した方が良いかと聞かれ、彼は言葉に窮す場面もあったほど、状況はけっして明るくないようだ。

 選手権リーダーのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は不利な走行ポジションで無理をしてすべてを失わないよう慎重な走りでこの日を10位で終えている。

 明日の最終日は4SS/45.72kmという短い一日となる。はたしてタナクが2003年のマルコ・マルティン以来エストニア人ウィナーとなって、トヨタに2年連続でホームイベントでの勝利をもたらすことになるのか。オープニングステージのSS20ラウカーは現地時間8時38分(日本時間14時38分)にスタートする。