ERC2022/07/25

デ・トマソが母国戦ローマでERC初優勝を飾る

(c)ERC

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 イタリア生まれのダミアーノ・デ・トマソ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が、母国で行われたヨーロッパ選手権第6戦のラリー・ディ・ローマ・カピターレでERC初優勝を飾り、シーズン5人目のERC初ウィナーとなった。

 土曜日を終えて、ローマのトップに立ったアンドレア・クルニョーラ(シトロエンC3 Rally2)は、最終日もオープニングステージのSS8フィウッジでベストタイムを奪い、デ・トマソとの差を10.9秒へと広げてスタートすることになった。

 しかし、クルニョーラはこのラリーで最も長い32.30kmのSS9ロッカ・ディ・カーヴェでスロットルトラブルからエンジンパワーを失ったかのような症状によって2度にわたってエンスト、1分あまりを失って6位へと後退してしまう。

 彼はミッドデイサービスで電子制御ユニットとスロットルを交換することで問題は解決、速さを取り戻したものの、5位までポジションを回復するのが精一杯、またも悪夢の出来事によってローマ初優勝を逃すことになった。

 クルニョーラは過去、ローマでは何度もリードしながらもこれまで運に見放されてきた。2019年と2021年にはパンクで数秒を失うまでラリーをリードし、2020年には開幕ステージのクラッシュから復活して翌日の1ステージを除くすべてのステージで勝利しており、今年も速さではナンバー1だろうと見られていたが、不運の連鎖を断ち切ることができなかった。

 クルニョーラの後退で2位にはチームMRFタイヤのシモーネ・カンペデッリ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が浮上したものの、トップのデ・トマソとの差は20秒あまりと大きなものとなっている。デ・トマソは最後のループではトラブルがないようペースを大きく落とし、最終的にカンペデッリに10.5秒差をつけて優勝を果たした。

「この気持ちを表現する言葉がない」とデ・トマソは勝利の喜びを語った。

 デ・トマソは今年5月のタルガ・フローリオでイタリア選手権に初優勝、ローマが2勝目となった。そしてもちろんERCでは初ポディウムが初の勝利となっている。

「チーム、ピレリタイヤ、メカニックのみんなに感謝しなければならない。すべてのステージを楽しむことができたよ。素晴らしかった!」

 今週末のローマのハイライトの1つとして、選手権をリードするチームMRFタイヤのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアrally2エボ)がここでタイトルを決めるかどうかが注目されてきた。

 タイトル争いの最大のライバル、ニル・ソランスは、スタート直前にロジスティックと予算の問題でローマのスタートを断念したため、ヤレーナがローマで好成績を収め、選手権で後を追うシモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビアrally2エボ)とアンドレア・バッティストーリ(シュコダ・ファビアRally2エボ)のポジション次第では、新チャンピオンが誕生するはずだった。

 ヤレーナは朝のループでカンペデッリがトラブルで遅れたことで3位へとポジションを上げ、タイトルに近づくことになったが、午後のループになると後方からフランス・チャンピオンのヨアン・ボナート(シトロエンC3 Rally2)が猛プッシュを敢行、コンマ1秒を争う激しいバトルを繰り広げることになった。

 ヤレーナとボナートはラリー・イスラス・カナリアスでも最後のループで2位をめぐって死闘を演じ、ヤレーナが追いついて同タイムで最終ステージをフィニッシュすることになったが、規定によって最初ステージでトップタイムをマークしたヤレーナが逆転で2位となっている。

 まさしくローマは2カ月前の戦いの再現となったが、ボナートは最終ステージのフィウッジでヤレーナを逆転、0.2秒差をつけて3位でフィニッシュすることになった。それでもヤレーナは、ボナートの素晴らしい走りと表彰台を称賛した。

「ヨアン(・ボナート)は正直言って、とても素晴らしい走りだった。彼は、本当にいいヤツなんだ。ラリー・イスラス・カナリアスの時は、僕たちが彼を追い抜いたが彼から祝福をもらったんだ」とヤレーナは語っている。

 気になるタイトルの行方だが、候補の一人だったバッティストーリはクラッシュのあと燃料ポンプのトラブルによりリタイアしてチャンスを失ったが、テンペスティーニは5位となり、ヤレーナのタイトル獲得を阻止することに成功、王座決定は次戦のチェコ・ラリー・ズリーンに持ち越しとなっている。

 ラリー・ディ・ローマで過去2勝を飾っているジャンドメニコ・バッソ(ヒョンデi20 N Rally2)は不運とともにラリーを終えることになった。

 今年も優勝候補の一人と目されていたバッソは、金曜日の夜に行われたスーパーSSに続き、土曜日の朝の開幕ステージで2度目のジャンプスタートによって合計1分10秒のペナルティが課されての苦しいスタートとなっていた。彼はペナルティを不服として抗議する考えを述べていたが、スチュワードは結果を覆すことなく彼は12位で最終日をスタートした。

 しかし、オープニングステージのフィウッジの最終コーナーでワイドになってしまい、姿勢を乱した彼は反対側の壁に向かってオーバーステアリングし、ステージフィニッシュのタイミングビームを破壊してしまったのである。

 彼のマシンは衝撃でリヤドアのパネルを剥ぎ取られてしまっており、走行に支障がないようにも見えたが、主催者は安全性に問題があるとの判断を下し、ラリー続行を認めなかったため、彼はそのままリタイアとなっている。

 このフィウッジの最終コーナーでは、7位につけていたファビオ・アンドルフィ(シュコダ・ファビアRally2エボ)もワイドにはらんでアンダーガードを岩にヒット、オイルサンプを破損してリタイアとなっている。

 またERCオープンではジョアン・ビニェス(スズキ・スイフトR4lly S)、ERC3ではロベルト・ヴィルヴェス(フォード・フィエスタRally3)がそれぞれ優勝を飾っている。

 ERC次戦は8月26〜28日に開催されるバルム・チェコ・ラリー・ズリーンとなる。