WRC2022/10/28

ヌーヴィル、「タナクはヒョンデに必要だった」

(c)Hyundai

 ヒョンデ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィルは、オイット・タナクがチームから離脱することを知っていたのだろうか。あるいは辞める可能性が高いことに気付いていたのだろうか。タナクの発表がされて以降、ヌーヴィルは口を閉ざしたままだが、少なくとも個人的な関係はともかく、その発表がされるまではチームメイトと来季以降も戦っていきたいと思っていたことは確かだった。

 ラリー・デ・エスパーニャではタナクの将来がどうなるのかという話題でサービスパークはもちきりだった。ヌーヴィルは、イベント後の記者会見で、タナクへの賞賛とともに今後も彼がチームメイトであることを望むと語っていたが、記者会見が終わって数時間後には、まさに彼が懸念した通りになってしまった。

 ヒョンデは経験豊富なドライバーを必要とすることを理由に、オリヴァー・ソルベルグを手放すことを選択したため、すでにドライバーラインアップにおいて苦境に立たされているが、2023年シーズンに向けて少なくとも2人のドライバーと契約する必要がでてきた。

 タナクの離脱が確定する前、来年チームメイトになってほしいドライバーはいるかと質問されたヌーヴィルは、今後が不確実であったタナクの名前を真っ先に挙げていた。

「1人は明らかだと思う」とヌーヴィルは語った。「2人目は、まだわからない」

「オイットが僕たちのところに留まるために必要なことをするように、チームを説得するのみだ。強いチームメイトがいれば、自分ももっと強くなるために頑張らなければならない。彼はこれまでで一番強いチームメイトだし、彼がチームメイトであることは僕にとってはさらなる挑戦になるけれど、同時にモチベーションにもなるからだ」

 だが、ヌーヴィルとタナクは、イープル・ラリー・ベルギーで勝利を争っていたときに、トランスミッションに問題があったと述べたタナクの発言にヌーヴィルが疑問を呈したことを切っ掛けに、関係が悪化していたと考えられている。

 さらにアクロポリス・ラリー・ギリシャでは、ヒョンデ・モータースポーツ社長のショーン・キムからヌーヴィルにタナクより上の順位でフィニッシュするよう指示があり、タナクは落胆した。タナクはこれで7ポイントを失い、カッレ・ロヴァンペラを追うチャンスをチームが選ばなかったからだ。

 しかし、それらについてもヌーヴィルは個人的な諍いはなく、タナクにヒョンデのドライバーでいてほしいと強く願っていることを明らかにしていた。

「チームを前進させるという観点から見ると、僕たちは同じレベルで同じようにプッシュしてきたと思う」とヌーヴィルは語った。

「時々セットアップは少し異なることがあるが、僕は常に努力しているし、彼も同様で、すべてのドライバーが必要とするものを持っていたと思う」

「そしてそれは、チームがこれまでやってきた仕事の一部だ。だから、この点については文句を言うことはできないだろう。もし彼を失うなら、それは残念なことだ」

 タナクにとってラリー・ジャパンがi20 N Rally1で臨む最後のラリーとなる予定だが、それ以降の動向は今のところ不明だ。