WRC2017/01/21

ヌーヴィル、オジエに45秒差をつけて首位を快走

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 ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は、4度の世界王者セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)のミスに乗じて、ラリー・モンテカルロの金曜日もリードを一度も譲ることなく首位を快走することになった。

 木曜の夜をリードして終えたヌーヴィルは、4日間にわたるイベントのうち、最も長い金曜日のステージを終え、そのリードを45.1秒に伸ばすことになったが、朝のループのコースオフによって8位まで順位を下げたオジエは、けっきょく終盤の2つのベストタイムで2位まで追い上げることに成功しており、さらにタフな2日間を残すラリー・モンテカルロがまだフィニッシュからはほど遠いことをヌーヴィルに知らしめている。

 昨日までとはうって変わって、ほぼステージ全域が雪とアイスにおおわれた金曜日の朝、そのオープニングステージでオジエがいきなり波乱に見舞われることになった。

 ラインがないステージを一番手で走った彼はステージ序盤のタイトターンでスライド、アウト側のディッチへフィエスタを落としてしまう。ステージに戻るのに手間取った彼は40秒をロス、首位からは70秒遅れの8位に転落することになってしまった。オジエは突然グリップを失ったと語り、コースコンディションの難しさに悲鳴を上げた。

「ジャンクションでミスしたが、なぜなのかわからない。すごく凍結していてハンドブレーキをつかったが、まったく曲がらなかった。10km/hくらいしかでていなかったが、ディッチにはまってしまった。スーパートリッキーだよ。一番手で行くのは災難だよ」

 見た目は同じ雪のように見えるが、ところによっては凍結したアイスパッチに雪がのったコーナーもあるため、この日の朝のステージはグリップレベルがきわめて不安定でやっかいだ。オジエのトラブルを余所に、慎重なスタートを切ったヌーヴィルが首位をキープ、クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)が3番手タイムで16.5秒差の2位へと順位を上げ、ベストタイムを奪ったオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)も3位に浮上してきた。

 だが、このステージで今日の路面の怖さを味わったと語った直後のミークが、SS4の高速左コーナーで姿勢を乱してリヤセクションをバンクにヒット、右のフロントサスペンションを石に打ち付けて破損したためリタイアとなってしまった。

 さらに上位グループにトラブルは続いた、初日を3位で終えたユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)はSS4を終えて3位につけるなどトヨタのデビュー戦で大活躍をみせていたが、彼もSS5でスライドしてフロントから立ち木にクラッシュ、リタイアを喫することになった。

 ライバルたちがトラブルに見舞われるなか、朝のループで2つのベストタイムを奪ったヌーヴィルが後続との差を31.7秒へと広げてギャップへのサービスへと戻ってきた。2位にはタナク、3位には連続して2番手タイムを並べたオジエが浮上してきたものの、ヌーヴィルからは59秒遅れと大きな差をつけられた。

 午後のループの最初のSS6はアニェール・アン・デヴォリュイからル・モティに至る24.63kmのステージ。コースにはまだ雪が多く残っている状態だが、気温も上がったことで、雪が融けてぬかるみはじめている。水をふくんでシャーベット状となったひどく滑りやすいコースに一番手のオジエはたまらずにペースダウン、タナクもペースノートとのあまりの違いにリズムを乱すことになったが、ヌーヴィルがこの日3つめのベストタイムを奪ってさらにリードを広げることになった。

 だが、このままリードを広げて勝利にむけて突き進むかにみえたヌーヴィルもSS7ではさらに雪が消えたためにペースノートのスピードとあわずにペースダウン、さらにSS8ではターボブーストを失う問題を抱えたためにヘアピンで2度もエンジンをストールしてしまう。

「エンジンのターボブーストを失った。ヘアピンで止まってしまったが、リセットボタンを押さなかった。システムをリセットすることを思い出す前に、500メートルほど走ってしまった」とヌーヴィルは述べたが、この問題は最も高くつく結果となった。彼は首位を守り切ることになったが、終盤の2つのステージで連続してベストタイムを刻んだオジエが25秒近くを削りとり、45.1秒差の2位へと迫ってきた。

 また、3位に後退したとはいえ、タナクもオジエのわずか0.3秒後方につけており、ヒュンダイを2台のフィエスタが追い掛ける展開となっている。

 トップからは2分以上も遅れたものの、金曜日を終えて4位につけるのはトヨタのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)。パルクフェルメでエンジンがかからず、朝からトラブルに悩まされることになった彼だが、マシンを押してどうにかサービスへ運んで事無きをえたものの、サスペンションのセッティングを調整する時間がないまま雪のステージに臨んだためにペースに苦しむことになってしまう。

 彼は午後のステージでも燃料系の問題からエンジンをストールさせたほか、最終ステージでもスピンを喫することになったが、SS7では初のトップ3のタイムを出してみせるなど、少しずつヤリスのポテンシャルを引き出しつつあるようだ。

 2016年スペックのシトロエンDS3 WRCを駆ったクレイグ・ブリーンは、SS4と5ではラトバラさえ上回るペースをみせて5位まで浮上したものの、SS8のコースオフで彼はダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)に抜かれて6位で金曜日を終えることになった。

 WRC2リーダーにつけるアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアR5)がWRカー勢に割って入る形で総合7位につけることになった。彼はWRC2でもチームメイトのヤン・コペツキ(シュコダ・ファビアR5)に2分26秒という大差をつけてリードしている。

 6位で初日を終えたエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)は朝のステージでDMACKのスタッドタイヤのグリップに問題を抱えて12位まで後退したものの、雪が融け出した午後のステージではペースを取り戻して8位でフィニッシュすることになった。

 トランスミッションのトラブルによって昨日リタイアしたステファン・ルフェーブル(シトロエンC3 WRC)は再出走、12位まで順位を戻している。

 前日リタイアしたヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 クーペWRC)は、アクシデントで観客が亡くなった報を受けてラリー2での再出走を見送っている。

 ギャップの南で行われる土曜日のDAY3では、さらなる雪と氷が予測されている。ドライバーたちは日曜にフィナーレを迎えるモナコに向けて長距離を移動する前に、5SS/121.39kmに立ち向かう。