WRC2019/04/29

ヌーヴィルが今季2勝目、ヒュンダイが1-2達成

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・アルゼンチンは28日に最終日をむかえ、ヒュンダイ・モータースポーツのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が前戦ツール・ド・コルスに続く連勝を達成、2位にはチームメイトのアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)が続き、ヒュンダイが1-2勝利を飾ることになった。

 アルゼンチン最終日のオープニングSSとなるのは、このイベントを象徴するSS16コピナ〜エル・コンドル・ステージだ。昨年と同様にこれまでのゴール地点だったコピナからスタートとなり、フィニッシュ地点のエル・コンドルに向けて746mを駆け上がる登りのステージとなる。霧と雨によって『地獄』と化すときもあるが、上空には真っ青な空が広がるなか、75000人もの観客たちが巨岩の上に陣取ってトラスラシエラ山脈の壮大な景色を拝みながら、ワインディングを駆け上がってくるラリーカーを今や遅しと待っていた。

 このエル・コンドルのステージでベストタイムを奪って発進したのはクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)だ。彼は土曜日を3位でフィニッシュしたものの、SS11クチージャ・ネヴァダ〜チャラカトのステージにおいてロードブックに記載されたルートと異なるコースを走行したとして10秒のペナルティを科されたために5位に降格、3位のセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)から7.2秒差、4位のダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)から1.2秒遅れで最終日を迎えていたが、このステージでソルドを抜き去り、オジエまでの0.5秒背後まで一気に迫って見せた。「もう少しやることがある。その仕事はまだ終わっていない。どうなるかわからないが、彼を捕まえてみせるよ」とミークはポディウムへの執念をみせる。

 これに対して、低温で湿った路面のなかでペースが上げられなかったオジエは満足とはほど遠い表情だ。「クルマからのトラクションが全然得られなくて、感触が良くない。苦労しているよ」

 ミークは続くSS17ミナ・クラベーロ〜ジュリオ・セザレ(20.30km)で容赦なくオジエに襲い掛かるや5.7秒上回ってついに逆転、ポディウム圏内のポジションへと浮上、残された1ステージで逆転は困難にも見える5.2秒というタイム差を築くことになった。

 いっぽう、チームメイトのミケルセンを45.7秒リードして最終日を迎えたヌーヴィルは、もはや無理をして攻める必要はないほどの十分すぎるマージンをもっており、あとはパワーステージとして行われる2回目のエル・コンドルまでタイヤを温存するだけだ。彼はオープニングステージのSS16ではペースを落とし、13.4秒差の7番手タイムでリードを36.6秒にすることになった。「かなりタイムを譲ってしまったが、路面がかなり荒れており、慎重に行くことに超したことはないと考えた」

 だが、ヌーヴィルはその言葉とは裏腹に最終ステージを待ちきれないかのようにSS17でもペースをアップ、ベストタイムを奪って2位のミケルセンとの差を40.2秒へと広げて最終ステージのエル・コンドルのパワーステージへと向かって行く。だが、前走のマシンによって終盤のコーナーは無数の石がかき出されて荒れており、彼はややペースを落としたものの、3番手タイムで今季2勝目を手に入れた。

「この週末はずっとマシンが素晴らしかった。これは現場の作業だけでなくドイツでもチーム全体が必死に努力してくれたおかげだ。マシンの進歩が証明された。僕たちが達成したことを誇りに思うよ」とヌーヴィルは語った。

 ミケルセンは初日の朝に左フロントタイヤをパンクしながらも見事な挽回を果たして2位でフィニッシュ、昨年のスウェーデン以来の久々のポディウムに立つことになった彼は、「まるで勝利したかのような気分だ」とその喜びをかみしめていた。

 いっぽう、決着したかに見えたミークとオジエの3位争いには、最後に波乱のドラマが待っていた。ミークは初日トップに立ちながらもサスペンションやギヤボックスに問題を抱え、二日目にはWパンクとペナルティで心折れそうになりながらも、トヨタへ移籍後初の表彰台フィニッシュを果たすかに見えたが、無数の石が転がるステージ終盤で左フロントをパンク、1.4秒差でオジエにポディウムを譲ることになった。

 オジエはパワーステージのスタートを前に、ライバルたちのペースに完全に敗北を認めたかのように「僕のラリーはここまでだ。これ以上速いタイムを出すには、マシンにもっとスピードが必要だ」と語っていたが、なんとパワーステージではヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)を0.1秒上回るトップタイムをマーク、見事、ボーナス5ポイントとともに3位表彰台を達成することになった。

 アルゼンチンでもヤリスの速さが輝いたトヨタ勢は一時、1-2-3態勢を築いたにもかかわらず、さまざまな計算外の出来事によってポディウムを逃すことになり、マニュファクチャラー選手権でも首位のヒュンダイに37ポイント差を付けられることになった。

 ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)は、マディなコンディションとなった初日にパンクとスピンで8位まで後退したが、路面が乾き始めるやペースをアップ、SS17でソルドを抜いて5位まで順位を上げてフィニッシュすることになった。

 また、優勝が期待されながらも土曜日にオルタネーター破損でマシンを止めたオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)は総合9位で最終日をリスタート、朝からタイヤを温存して臨んだパワーステージでも1番手という不利なポジションからの反撃は叶わずに5番手タイムがせいぜい、最終的に8位まで順位を上げて選手権3番手はキープしたが、5ポイント差だった選手権リーダーとの差は28ポイントに広がってしまった。「全体を通して難しいラリーだった。ステージ上で速くてもそのことが役に立たなかった。残念な週末だったよ」とタナクは肩を落としていた。

 7位にはテーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)が7位でフィニッシュしたものの、チームメイトのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)は土曜日のクラッシュによるマシンへのダメージが大きいために最終日をリスタートすることなくラリーを終えている。

 次戦は南米ラウンドのダブルヘッダーとして5月9〜12日に行われるラリー・チリだ。WRC初開催として注目されるラウンドは、わずか1週間後にはレッキが始まることになる。