WRC2017/01/22

ヌーヴィルまさかのクラッシュ、オジエ首位浮上

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 世界ラリー選手権開幕戦ラリー・モンテカルロは、これまで完璧な走りで3日間にわたってラリーを支配してきたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20 クーペWRC)が最終ステージでクラッシュするという波乱が発生、セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が首位に浮上するとともに、2位にはオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)が続き、Mスポーツが1-2態勢を築き上げることになった。また、トヨタのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)も3位へと浮上、復帰戦での表彰台を賭けて明日の最終日に挑むことになった。

 土曜日のDAY3は、ラルディエ・エ・ヴァロンサ〜オーゼとラ・バティ・モンサレオン〜フェイの2つのステージを2回ループしたあと、木曜日に行われたベイヨン〜ブレジエの2回目の走行が行ったあと、240kmを超えるロードセクションを走ってモナコに戻る長い一日となる。

 木曜日のナイトステージから首位に立ったヌーヴィルはこの日の朝も快調なペースでスタートする。雪と氷に覆われたセクションが15kmにも及んだSS9ではウィンター用のスタッドタイヤの装着が必須だったが、95%がドライコンディションだった次のステージではほとんどのドライバーがスタッド付きのウィンタータイヤとスーパーソフトのスリックのミックスに使用したほど、2つのステージのキャラクターはまったく異なる難しさをもって待ち構えていたが、ヌーヴィルはSS9ではオジエを2.6秒上回り、さらに続くSS10でも13秒上回ると、そのリードを60.7秒まで広げることとなった。

「クリーンに走ったよ。SS9はトリッキーだったけど、アイスノートクルーからの正確な情報があったので驚くことは無かった。信頼しているし、自信を持っていけたよ。マシンもいいよ。最初のラリーからニューマシンでこれほどいいのは初めてだ」とヌーヴィルはすべてが順調であると自信をみせている。

 いっぽうオジェは、SS10で8番手タイムと伸び悩んだのは、ミスやトラブルがあったのではなく、短い氷のセクションで慎重なアプローチに徹した結果だったと説明している。

 朝のループで1分差をつけられたオジエだが、だまってこのままヌービルを逃がすつもりはないようだ。オジエは2回目のループではペースをアップ、SS11でヌーヴィルを2.1秒上回り、SS12ではさらに限界ギリギリまでリスクを冒した走りでアンダーステアを出してコースオフ、あわやの瞬間に見舞われたが、どうにかコースへと復帰、ヌーヴィルを7.6秒上回り、土曜日最後のステージを前にその差を51秒まで縮めることになった。

 逆転の可能性に賭けたオジエが、もう少しで道路標識をなぎ倒すくらいまでリスクを負って攻めたにもかかわらず、ヌーヴィルは冷静な走りでここでのタイムロスは計算のうちだったと余裕をみせた。彼は、朝よりドライでクリーンなステージになったにもかかわらず、SS12では安全性を考えてスノータイヤで走る作戦を取ったと明かしており、タイムはわずかに失ったが、まさしく余裕の走りで残された最終ステージもゴールするかに思われた。

 ところが、25.49kmのベイヨン〜ブレジエのほぼ中間にさしかかったスローな左コーナーでまさかの事態がヌーヴィルに襲い掛かる。彼は突然スライドしてクラッシュ、ラリー・モンテカルロ初優勝という彼の夢はサスペンションと共にもろくも砕け散ってしまった。

 ヌーヴィルはステージにストップしてダメージを負った右のリヤサスペンションの応急修理を始めたものの、その横を次々と後続のマシンがすり抜けてゆく。彼はタイヤが曲がったままのマシンでどうにかステージをフィニッシュするも32分をロスして15位まで後退、「スローな左コーナーで突然起こったんだ。出口でアクセルを開けたときにリヤが突然ワイドになってなにかにヒットしてしまった。どうしてなのかわからないよ」と、がっくりと肩を落とすことになった。

 ヌーヴィルが大きく後退したことでオジエが首位に浮上するも、彼も複雑な表情だ。「ティエリーは残念だよ、彼はいい仕事をしていた速さをみせていたからね。この週末はいくつか運もあった。ここでもバンクにヒットしたし、いくつかミスもしたからね」とオジエは語っている。

 いっぽう、チームメイトのタナクは2位に順位を挙げたとはいえ、オジエとはわずか0.3秒差でスタートしたにもかかわらず、土曜日はトラブルとの戦いとなってしまい47.1秒遅れとなっている。

 タナクは前日と同様にシフトダウンの問題に見舞われることになり、1回目のループではいずれも5番手のタイムに留まり、オジエからは11.3秒遅れてギャップのサービスに戻ることとなった。チームはサービスでギヤボックスを交換したが、彼はSS11でギヤが勝手に動く現象に見舞われ、さらにパワーステアリングにも問題が生じたためにここまでの遅れとなってしまった。

 それでも、Mスポーツは3日目を1-2で終え、明日の最終日には2012年のラリーGB以降となる久々の勝利への期待が掛かることになった。

 また、18年ぶりのWRC復活となったトヨタにとってもデビュー戦での表彰台に手が届くところまで迫ることになった。トヨタ・ヤリスWRCを駆るラトバラは土曜日を4位でスタート、SS9ではトップ3との差を縮めるべく気合いが入った走りをみせたが、序盤のドライセクションでハードにプッシュし過ぎたためにスタッドにダメージを受け、その後の雪と氷に覆われたセクションでグリップ不足に悩まされることになってしまった。

 それでも彼はサービスでデフのセットアップを調整したあと、ハンドリングが大きく改善されたと語っており、首位からは2分20秒遅れとなったものの、ヤリスのマーマックにおける進化にさらに確信して最終日の表彰台を目指す。
 
 その後方では、旧スペックのシトロエンDS3 WRCながらクレイグ・ブリーンはこの日もダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)と激しいバトルを演じることになった。ブリーンは雪となったオープニングSSではソルドを抑える速さをみせたが、ドライターマックでは2017年スペックマシンの速さに屈し、朝のループを終えてソルドに順位を明けわたすことになった。ところが、最後のステージでソルドはパワーステアリングのトラブルに見舞われたため、ブリーンが16.9秒差をリードして4位に浮上することになった。

 3日目のハイライトはなんといってもDMACKタイヤを装着したエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)の速さだろう。彼は雪のステージでは明らかにスタッドタイヤのパフォーマンス不足に苦戦、金曜日は12位まで順位を落としたものの、ドライになった土曜日のSS10ではDMACKにとっての初のベストタイムを獲得、さらに彼はSS12、13と連続してベストタイムを奪って6位でフィニッシュすることになった。

 7位にはシュコダ・ファビアR5を駆るWRC2リーダーのアンドレアス・ミケルセンが続いており、チームメイトのヤン・コペツキはとうとう3分以上も引き離されることになっている。

 また、この日をラリー2でスタートしたクリス・ミーク(シトロエンC3)はSS10でイグニッショントラブルでマシンを25分以上にわたってストップさせるなど不運な一日となり、最終ステージのあとロードセクションで一般車と事故を起こしてリタイアとなっている。また前日まで一時、4位を走っていたあとリタイアしたトヨタのユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)もラリー2で復帰したものの、パンクのために15位となっている。

 このあとクルーたちはギャップの最終サービスでクルマのチェックを行ったあと、日曜日の舞台となるモナコにむけて240kmあまりの長いロードセクションを移動する。最終日は有名なチュリニ峠のステージなど4SS/53.72kmが残されており、最後のパワーステージは今年からトップ5にボーナスポイントが与えられることになり、最速ドライバーには5ポイントが与えられることになっている。