ERC2021/07/26

バッソがERCローマ優勝、ルクヤヌクはクラッシュ

(c)ACI Sport

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第3戦ラリー・ディ・ローマ・カピターレは25日に最終日を迎え、前日までトップだったヒュンダイ・ラリーチーム・イタリーのアンドレア・クルニョーラ(ヒュンダイi20 R5)がパンクで後退、ジャンドメニコ・バッソ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が逆転で2年ぶり2度目の優勝を飾っている。

 6SS/123.19 kmというタフな一日が残されている最終日は、土曜日を首位から5.4秒差の2位で終えたバッソの素晴らしいスタートで始まることになった。彼はオープニングステージのSS7でベストタイムを記録、クルニョーラとのタイム差を3.4秒差に縮め、さらにSS8では連続してベストタイムを奪い、タイヤのパンクに見舞われて30秒あまりを失ったクルニョーラからトップの座を奪い返す。

 クルニョーラは、問題のあったコーナーにはペースノートにも 「Do not Cut」と記されていたが、前のマシンがこのコーナーをカットしたときに道の真ん中に石をかきだしていたとステージエンドで説明、肩を落とした。「その石に引っかかってパンクしてしまったんだ。安全を期していても、安全ではないこともあるよ」

 クルニョーラは2位をキープしたもののリーダーのバッソから28.7秒と大きく遅れ、さらに0.7秒差の後方にはERCチャンピオンのアレクセイ・ルクヤヌク(シトロエンC3 Rally2)が迫ってきた。だが、SS9でルクヤヌクが木に衝突するという、さらなるドラマがあった。

「前のイタリア人は追うつもりはなかったが、左コーナーでグラベルがあったようで、突然リヤのグリップを失い、コントロールすることができなくなった。マシンはコースを少しはみ出してしまい、コーナー出口にあった立ち木に接触してしまい、道路脇にスタックしてしまったんだ」とルクヤヌクはアクシデントの状況を説明した。

 ルクヤヌクとコドライバーのアレクセイ・アルノートフに怪我はなかったが、タイヤを失って身動きできなくなったマシンのエキゾーストから芝生に火が燃え移り、消火作業のためにステージは一時赤旗中断となった。

 ルクヤヌクのリタイアによって大接戦を演じていた彼の後続勢にとっては表彰台をめぐる大チャンスとなる。SS9ではラリーチーム・スペインのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2エボ)がキャリア初となるERCでのステージウィンを奪い、シュコダ・ラリーチーム・ハンガリーのノルベルト・ヘルツィグ(シュコダ・ファビアRally2エボ)を抜いて一気に3位へと浮上してきた。

 サービスを挟んでラリーカーは最後のループへと向かう。SS10ではパンクで首位を失ったクルニョーラがバッソとの差を9.5秒も縮め、まだまだ勝利への野心をみせたかにも思えたが、2回目のループは石やダートがかきだされている悪コンディションだったため、クルニョーラもSS11では追撃を諦めてミスのない走りに専念、バッソが残り2つのステージを盤石の走りで首位を堅持して優勝を飾っている。

「クルニョーラのトラブルは残念だったが、今日のステージはとてもダーティでトラブルなく走ることに集中しなければならなかった。勝ててとてもうれしいよ」とバッソは語っている。

 クルニョーラは最終的に35.8秒差の2位に終わり、バッソをここで倒すのは来年に持ち越しだと語っていた。

 熾烈な戦いとなっていた3位争いは、ヤレーナの9.5秒後方につけていたヘルツィグがSS10でスタート直後に冷えたタイヤでバリアに接触したため対決は決着したかのようにも見えたが、ヘルツィグは追い上げを見せて最終ステージで0.3秒差で逆転して3位でフィニッシュ、今季初ポディウムを獲得している。

 イタリア選手権ランキングトップのファビオ・アンドルフィ(シュコダ・ファビアRally2エボ)とORLENチーム・シュコダ・ポーランドのミコワイ・マルツィック(シュコダ・ファビアRally2エボ)も激しく5位を争っていたが、最終ステージのスピンでアンドルフィがタイムをロス、マルツィックが5位となっている。

 初日に石に乗り上げたあとマシンのフィーリングに苦しんだアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2エボ)はこの日、17位から7位へと激しい追い上げをみせたが、最終ステージの一つ前のステージでペースノートのミスからコースオフ、シモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビアRally2エボ)の逆転を許して8位に終わっている。

 9位にはチームMRFタイヤのクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20 R5)、チェコの新星エリック・ツァイス(フォード・フィエスタRally2)もトップ10入りを果たしている。

 また、7位につけていたCHLスポルトのヨアン・ボナート(シトロエンC3 Rally2)は最初のステージのコースオフと最後のステージのパンクによって18位に終わっている。

 クロアチア・ラリーの負傷のあと3カ月ぶりにラリーに復帰した新井大輝(フォード・フィエスタRally2)は30位で最終日を迎えたが、残念ながらSS9でECUトラブルのためにエンジンがかからなくなってしまいマシンを止めることになった。彼が開発に参加しているヨコハマタイヤについては、猛暑のターマックという厳しいコンディションのなかでも「タイヤは2年前に比べて1kmあたり0.5秒から1秒は速くなっている、あとはドライバーがヨーロッパのペースを取りもどせばさらに1秒は速くなる」と新井はポジティブに評価していた。

 WRC2プログラムからERCへの参戦にシフトしたヒュンダイ・ジュニアドライバーのオーレ・クリスチャン・ヴェイビー(ヒュンダイi20 R5)はトップ10入りを目前にした最終日の朝、コンクリートブロックに触れてラジエータを壊してリタイアとなっている。

 ERCジュニアではケン・トルン(フォード・フィエスタRally3)が今季2勝目を飾り、2位につけていたオスカー・ソルベルグは最終ステージでメカニカルトラブルのためにリタイアとなっている。ERC3ジュニアは初日からのトップを守ってきたジャン-バティスト・フランセスキ(フォード・フィエスタRally4)をアレハンドロ・カチョン(プジョー208 Rally4)が終盤で逆転、最終ステージまでもつれたバトルを制して0.1秒差でフランセスキが優勝を飾っている。

 また、併催されたGRヤリス・カップの開幕戦ラリー・ディ・ローマ・カピターレ・カップには11台のトヨタGRヤリスが出場、アレッサンドロ・チャルディが優勝を飾っている。

 ERC次戦は8月27〜29日に行われるチェコ・ラリー・ズリーンとなる。