WRC2019/03/10

パンクのオジエ、赤旗に救われて首位キープ

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 2019年世界ラリー選手権(WRC)第3戦ラリー・メキシコは、シトロエン・レーシングのセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)がパンクの波乱に見舞われて一時首位を失いながらも27秒差をつけてDAY2でも首位をキープしている。エルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)はあなどれないペースで前日に続いて2位をキープしたが、2.2秒差の背後にオイット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)が迫ってきた。

 土曜日最初のステージはグアナファティート(25.90km)。高速セクションとタイトでテクニカルな道が混在するほか、トリッキーで見えないクレストも待ち受ける。このステージでいきなりドラマが発生することになる。

 5位につけていたエサペッカ・ラッピ(シトロエンC3 WRC)が左コーナーでワイドになり、ラインを外れてコースオフ、ディッチにリヤを落としてストップすることになってしまう。マシンのフロントは浮き上がっており、彼は続行を断念することになる。

 これによって後続のマシンは少なからずタイムの影響を受けることになり、2位につけていたエヴァンスもややペースを落とし、12.1秒上回るベストタイムを奪ったクリス・ミーク(トヨタ・ヤリスWRC)が逆転して2位へと浮上することになる。

 エヴァンスのタイムがどう判定されるのか気になるところだが、それ以上に後方では大きなドラマが発生する。なんとラリーリーダーのオジエが右フロントタイヤをパンクさせてスローダウン、まさかの首位交代劇が発生するかにも見えたが、ラッピのマシンがコースをふさいでいたことによりレッドフラッグが表示され、完全にタイヤがリム落ちした状態でフィニッシュしたオジエはチームメイトのオフによるステージ中断で奇跡的に命拾いをすることとなった。

 オジエのノーショナルタイムが決まるまでリーダーボードのトップには暫定的にミークが立つことになったが、今度は彼が続くオタテス(32.27km)のステージでトラブルに見舞われる。なんと右のリヤタイヤにスローパンクを喫した彼はじょじょにペースダウン、1分36秒を失って5位まで転落してしまう。

 オジエの前ステージのノーショナルタイムは、ちょうどミークにトラブルが発生した頃に決定することになり、スローパンクが赤旗表示の前に発生していることも加味されて22.4秒遅れの5番手タイムと判定されることになった。ミークはリーダーに浮上しながらまさしく悪夢の後退となり、スペアを1本失いながらもこのオタテスのステージで2番手タイムとなったオジエが首位を奪還することになった。

 首位を取りかえしたオジエは続くエル・ブリンコ(8.13km)でヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)と並ぶトップタイムをマーク、ミークのトラブルで2位へと浮上したエヴァンスとの差を19.2秒へと広げて朝のループを終えることになった。

 エヴァンスはこのステージでライン上にあった岩を激しくヒット、ステージエンドで「パンクしたようだ。リヤが変なんだ」と語っていたが、サービスでタイヤだけではなくリヤのクロスメンバーにもダメージがあることが見つかっている。サービスアウトまで14分のところでの発覚だったが、チームはリヤデフともどもどうにか無事に交換作業を完了してエヴァンスを送り出した。

 昼のサービスの時点では気温が30度に上昇、午後のループにむけて各ドライバーともにハードを主体にしたタイヤチョイスを行っているが、朝のループのパンクで懲りたのか、オジエは6本を搭載してステージに向かうことになった。重量のハンデがあるにもかかわらず、オジエは朝のループでパンクを喫したグアナファティートでベストタイムを刻み、エヴァンスに対してリードを22.9秒へと広げてみせた。「非常にクリーンな走りだった、ステージには満足している。クルマのフィーリングはいい、今のところは順調だ」

 首位のオジエとの差は開いたものの、エヴァンスも難しいコンディションのなかで2番手タイムで2位をキープ、彼はステージエンドで満足したように笑顔をみせた。「今のステージは良かった、素直に走りに満足できた。速くて、クリーンで効率的だった。戦いを楽しんでいるよ、まだまだ先は長いが、いい感じだ」。朝の時点で彼の22.3秒後方にはタナクが続いており、激しいチャージをみせることが予想されていたが、ここまで選手権リーダーはエヴァンスに完全に押さえ込まれ、二人の差は縮まってないどころか、ここではふたたび22.4秒差へと広がった状況だ。

 土曜日のステージは昨日よりもダスティでスリッパリー。タナクといえども容易にペースを上げることはできないかとも思われたが、ここからタナクはスイッチを切り変えたように爆発的な速さをみせる。SS14オタテスで、彼はエヴァンスとの差を16.6秒も縮めるベストタイム、二人の差は一気に5.8秒に縮まることになった。さらにSS15エル・ブリンコでもタナクはソフトなセクションでリヤバンパーを失いながらも連続してベストタイム、エヴァンスとの差は3.8秒に縮まった。

 そしてラリーは山岳エリアのステージを終えて、終盤のショートステージへ舞台を移す。金曜日にも行われたオートドローモ・レオン・スーパーSS(2.30km)の2回の走行、そしてこの日最後のストリートステージ・レオン(1.11km)を終えてエヴァンスはどうにか2位を守り切ったが、じわじわと差を縮めたタナクが2.2秒差に迫ってこの日を終えることになった。

 二人の対決をよそに、オジエは首位をがっちりとキープ、ロングステージを終えてリードを31.4秒差へと広げてみせたが、オートドローモ・レオン・スーパーSSではサンディな路面でワイドになってストローベイルのバリアに激突してタイムをロス、27秒差のリードで土曜日を終えることになった。

「スムーズな一日ではなかった。パンクで始まり、暑い一日で、最後のステージではディファレンシャルに小さな問題もあった。SS10で与えられたノーショナルタイムは恐らく僕が実際に走るよりも遅かったんじゃないかな。だからレッドフラッグが表示されてラッキーだったとは思わない」とオジエは難しい一日をふり返っている。

 トップ3の後方の4位にはティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が続いているが、彼は金曜日のパンクによる遅れが響いてタナクから40秒以上の大差をつけられているため無理して攻め続ける考えはない。5位で続くミークも、SS11のパンクに加えてSS12でもサスペンションの問題を抱えて3分20秒近くも引き離されている

 明日の最終日は24.38kmのアルファロのステージで始まり、メサ・クアタ(25.07km)と続いたあと、ラス・ミナース(10.27km)がパワーステージとして行われる3SS/60.17kmという短い一日だ。オープニングSSアルファロは現地時間9時3分(日本時間24時3分)のスタートが予定されている。