WRC2017/06/11

ヒュンダイ勢に不運が連続、タナクが首位浮上

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 2017年世界ラリー選手権(WRC)第7戦ラリー・イタリア・サルディニアは土曜日のレグ2を迎え、1-2体制を築いていたヒュンダイ・モータースポーツ勢がともにトラブルに見舞われ、Mスポーツ・ワールドラリーチームのオット・タナクが首位に立つ展開となっている。

 サルディニアのレグ2は、コイルーナ〜ローレ(14.95km)、モンティ・ディ・アラ(28.52km)、モンテ・レルノ(28.11km)を走り、アルゲーロのサービスを挟んで2回目の走行を行う6SS/143.13kmという一日。まずは、初日を首位で終えたヒュンダイのヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)がオープニング・ステージのSS10コイルーナ〜ローレをトップタイムで発進することになった。

 しかし、2位につけていたチームメイトのティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)はパッドンから4.9秒遅れの5番手タイムにとどまり、その差を13.1秒へと広げられてしまった。「スタート地点で80m先しか見えなかったからね。このようなコンディションで攻めるのは危険だよ」とヌーヴィルは訴えた。

 ラリーは前日まで3分間間隔のスタートだったが、土曜日は最初の4台は3分間隔でスタート、その後は2分間隔でスタートという奇妙な状態になったために多くのドライバーは巻き上げられたダストによって視界に苦しむことになった。慎重に走ったヌーヴィルがタイムを落としたことで、3位のオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)が0.6秒後方に続き、ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)もヌーヴィルからは0.7秒遅れで続く大混戦となった。

 ダストが問題となったことで主催者は急遽、SS11モンティ・ディ・アラから全車3分間隔のスタートにすることを決定、後続からプレッシャーを掛けられたヌーヴィルは、このステージで快心のベストタイムを奪い、タイヤバランスに苦しむパッドンに8.9秒差にせまってみせた。

 だが、すでに30度まで上昇した灼熱のラフロードとなったSS12モンテ・レルノでヌーヴィルはスタートしてすぐにブレーキに問題を抱えて失速、1分7秒をロスして4位に後退することになった。「スタートから全くブレーキがなかった。前のステージのラスト200mで失っていた。どうにも出来ないよ!」とヌーヴィルは首を横に振る。

 パッドンもまたタイヤの問題から後半でマシンバランスを崩してあわや立ち木にヒットしそうになりながらも、どうにか首位をキープ、SS12でベストタイムを奪ったタナクが9.4秒差の2位に浮上、ラトバラもヌーヴィルを抜いて3位に浮上することになった。しかし、ラトバラは、パンクによるタイヤ交換で遅れたマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタWRC)が巻き上げるダストに邪魔されてタイムをロスしたとして憤慨することになったが、オストベルグもこのトラブルで5位から8位まで後退したほどの大きなロスタイムを喫していただけに致し方ない。

 このステージでタイヤに問題を抱えたのは彼だけではない。アンドレアス・ミケルセン(シトロエンC3 WRC)もタイヤ交換を強いられ、セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)もパンクによって2分をロスしたためユホ・ハンニネンとエサペッカ・ラッピの2台のトヨタ・ヤリスWRCに抜かれて7位まで後退してしまった。

 だが、午後のループになってさらにドラマチックな出来事が発生する。コイルーナ〜ローレの2回目のステージでそれまでラリーをリードしてきたパッドンがステージ序盤でバンクに右リヤをヒット、サスペンションを壊して首位から陥落するというまさかの出来事が起きることになった。

 パッドンはステージエンドで、「本当にばかげたミスだ。間抜けだったよ! 早く曲がりすぎて、バンクにぶつけてしまった。ドライブシャフトが壊れていると思う。みんなをがっかりさせてしまった。本当にばかげている」とため息をつく。ロードセクションでマシンをチェックするも、ダメージが酷く続行はもはや不可能、昨年のアルゼンチン以来の一年ぶりの勝利にあとわずかのところまで近づきながら、一瞬のミスですべてを失ってしまった。

 パッドンのリタイアによって首位にはタナクが浮上、16.5秒差の2位にトヨタのラトバラが浮上することになった。このステージでベストタイムを奪ったタナクは、さらに勢いづいたようにSS14でも連続してベストタイムを刻み、ラトバラに20秒差をつけることに成功、この日最後のSS15でもラトバラを4.3秒上回り、リードを24.3秒まで広げて悲願の初優勝に大きく近づいて土曜日のゴールを迎えることになった。

「今日の午後はとてもよかったよ。安全なマージンを持ってドライブするのはいいね。これで、よりプッシュできる。明日は、ラトバラがさらに速いとは思わない」とタナクは自身のスピードに自信をみせた。

 ラトバラは終盤のステージでタイヤとブレーキが厳しかったためにタナクに引き離されたものの、少しずつペースをつかんで2位にいることに満足しているようだった。

 3位にはモンテ・レルノのブレーキトラブルで遅れたヌーヴィルが続くが、首位からは1分2秒遅れとなっている。

 最終ステージではこのラリーで4回目のベストタイムを奪ったラッピが、スピンして50秒あまりを失ったハンニネンを抜いて4位へと浮上することになり、トヨタはトップ5に3台が占めてこの日を終えることになった。

 6位にはオジエ、7位にはオストベルグが続き、パンクによって表彰台のチャンスをなくした二人にとっては失望のラリーとなってしまった。

 慣れないシトロエンC3 WRCのドライビングに苦戦するアンドレアス・ミケルセンは、2番手という走行ポジションでの路面掃除に苦しみつつ、さらにパンクとフロントデフによって8位にとどまっている。

 明日の最終日はカーラ・フルミーニとサッサリ〜アルジェンティエラの2つのステージを2回ループする4SS/42.04kmという短い一日となる。タナクが悲願の勝利を挙げるか、それともトヨタのラトバラが追い上げて今季2勝目を掴むかどうか、最終日の二人のバトルに注目が集まる。