WRC2017/10/07

ミケルセン、ヒュンダイ・デビュー戦で初日トップ

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 世界ラリー選手権(WRC)第11戦ラリー・デ・エスパーニャは金曜日に行われたレグ1を終え、ヒュンダイ・モータースポーツとのデビュー戦に挑んでいるアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)がトップに立ち、セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が1.4秒差の2位につける展開となっている。

 WRCで唯一グラベルとターマックのミックスステージで争われるラリー・デ・エスパーニャは、金曜日の初日はサービスがおかれるサロウ西部の丘陵地帯のグラベルステージを舞台とした6SS/115.90kmで争われる。晴れた朝を迎えたサービスではスタート時点で気温が20度を超え、オープニングステージは表面をルースグラベルが覆う完全なドライコンディションとなった。

 オープニングステージのSS1カゼーレス(12.50km)では一番手スタートのオジエが路面掃除に手を焼いてペースを落とすなか、チームメイトのオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)がベストタイムを奪って発進することになる。

 タナクは続くSS2ボット(6.50km)でも0.4秒差の2番手タイムと好調な走りをキープ、マッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタWRC)はマシンのどこかに空いている穴からコクピットにダストが進入、苛立ちを隠せない表情だが、12番手という後方スタートの恩恵をうけたことで2.2秒差の2位につけた。

 オストベルグの0.1秒後方の3番手にはシトロエンのクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)、さらにティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)が0.4秒差、ミケルセンが1.6秒差で続き、トップ5がわずか4.3秒にひしめいた状況だ。
 
 そして迎えたのは38.95kmというこのラリーの最長ステージのSS3テーラ・アルタ。ほとんどがグラベルだが、ところどころにターマックセクションを通過、5回にわたってサーフェイスが変化する。なかでも極めてツイスティで起伏の激しい6kmのターマック・セクションはグラベルで消耗したタイヤをさらにダメージを与え、タイヤマネージメントを誤ると終盤のグラベルセクションでタイヤトラブルを招くことにつながる。例年多くのドラマが発生するこのステージでは今年も予想外のトラブルが起きることになった。

 それまで首位を快走していたかに見えたタナクは、このターマックセクションでスノーパンクに見舞われてペースダウン、リズムを失った彼はこの長いステージで大きく遅れて7.4秒差の4位へ後退、3位につけていたミークはリヤに装着していたソフトタイヤがバースト寸前まで摩耗してフィニッシュ、7.6秒遅れの5位となってしまった。

 そして、このステージでもっともタイヤトラブルに泣くことになったのは選手権を争うヌーヴィルだ。朝のループでライバルのオジエをできるだけ引き離すべくスペアを含めてすべてソフトコンパウンドタイヤを選択するギャンブルをこころみたが、ブロックが完全になくなるまで擦り切れたタイヤでペースダウン、15.8秒遅れの7位まで後退、タイヤチョイスを後悔することになった。

「ベストなチョイスではなかったようだ。ステージを10kmほど走ったあたりでもうダメになっていたんだ」と、ヌーヴィルは予想外のスタートに厳しい表情を浮かべることになった。「チームと相談した結果、朝の50kmはソフトで行けるはずだったが、予想外に気温が上がったことが原因かもしれない。何度かワイドになったけど、なんとか無事にゴールできた。このあとまだプッシュして取り戻したいよ」

 初日の勝負所ともいえるこのステージでベストタイムを奪ったのは、ヒュンダイへの移籍が決まったばかりのミケルセン。タイヤの摩耗に苦しむライバルを尻目に、ハードタイヤを選択したミケルセンは、ライバルたちが路面掃除をしたクリーンになった路面でタイヤマネージメントをうまくこなしてベストタイムを奪取、i20クーペのデビュー戦にもかかわらず、ラリーをリードすることになった。

 オストベルグはあいかわらずコクピットに侵入するダストによって視界に苦しみ、コドライバーのトシュテン・エリクセンはダストのなかで必死にペースノートを読み続けて奮闘、0.6秒差の2位につけている。そして最悪のルースグラベルがたまるこのステージで一番手スタートのハンデがありながらも、ボロボロに擦り切れたタイヤで限界ぎりぎりまで攻めたオジエが3番手タイムを奪い、ミケルセンから4.6秒差の3位まで浮上してきた。

 気温が27度まで上昇したデイサービスでは全ドライバーがハードタイヤをチョイスして午後のループに向かうことになる。SS4ではマシンに空いた穴をふさいでもらったオストベルグが0.3秒差でミケルセンを抜き返して首位に立ったものの、じょじょにこのマシンに自信を掴み始めた彼はSS5でふたたびリーダーを取り戻し、38.95kmのテーラ・アルタの2回目の走行では7.8秒遅れの7番手タイムに終わったものの、首位をキープして初日を終えることになった。

「ステージの序盤でダンパーかタイヤに問題があると感じたんだ。サスペンションに何か起きたようだが、何とか耐えて走りきることができた。今日の出来には満足している。マシンにも慣れて、トップも取り返したからね」とミケルセンは笑顔をみせている。

 いっぽう、2位につけていたオストベルグはがっかりする結果が待っていた。コクピットはふたたびダストだらけになり、さらにヒーターがオフにならない問題に見舞われ、彼は集中力を失って14秒をロス、このステージでベストタイムを奪ったオジエに2位を譲っただけでなく、一気に5位まで滑り落ちることになってしまった。

 ミケルセンからわずか1.4秒差の2位につけたオジエは、初日のグラベルではもっと遅れることを覚悟していたとステージエンドで安堵の表情を浮かべることになった。「今日の走りには満足している。一番手の出走順なので、もっとタイムを失うと思っていたからね。今日の僕の競争相手はティエリーとオットだった。自分の仕事に満足している」

 ミークはSS4ではスピンで6位まで順位を落としたものの、SS5ではこの日2つめのベストタイムを奪い、さらにSS6では2番手タイムを奪って、首位から3秒差の3位まで順位を戻している。

 朝の滑りやすい路面で速さをみせたタナクは、グリップが上がった午後のループではペースを上げることができずに首位から6.3秒差の4位、5位に順位を落としたオストベルグの後方3.7秒差の6位にはダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)が続いている。序盤のグリップ不足でペースが上がらなかった彼だが、地元のファンの声援をうけて、午後のステージでは2番手のタイムを出すなど速さを取り戻している。

 いっぽう、ドライバー選手権で逆転するためにはペースを上げる必要があったヌーヴィルは、朝のループではタイヤギャンブルの失敗によりオジエから11.2秒遅れ、午後のループでは安全策としてスペアを2本搭載したためにマシンバランスを崩してペースが上がらない。彼は最後のロングステージにむけて2本のニュータイヤを残して逆襲を期したが、ここでもオジエから3秒引き離され、11.7秒後方の7位で初日を終えることになった。

 トヨタ勢は朝のループでハードタイヤを選択したためそろってペースが上がらないスタートとなってしまった。朝の3つのステージを終えて、ヤリ-マティ・ラトバラは8位、ユホ・ハンニネンが9位、エサペッカ・ラッピはアスファルトのセクションでブレーキに問題を抱えたために12位にとどまることになった。

 しかし、午後のループの最初のステージとなるSS4でラトバラが初のベストタイムで7位に浮上、さらなる挽回が期待されたが、彼はSS6に向かうロードセクションでストップ、リタイアとなってしまった。チームは今のところ原因は不明としており、サービスにマシンが戻されたあとで、明日のリスタートが可能かどうか判断を行うという。トヨタ勢はハンニネンが8位、ラッピはSS4では3番手タイムを出したが、SS6でサスペンションに問題を抱えてふたたびペースダウン、10位で初日を終えることになった。

 期待外れの初日となったのはDMACKタイヤユーザーのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)も同じだ。少しずつミシュランに迫る速さを備えつつあったDMACKは、終盤戦にむけてジョーカーを使用、新しいDMG+22を投入したものの、トラクションとグリップ不足に悩み、11位に沈むことになった。

 ラリー・デ・エスパーニャは明日の土曜日からターマックへと戦いの舞台を移すことになる。ラリーカーはいつもより長い75分間のサービスでグラベルからターマック仕様へと足回りを一新、明日の7SS/121.86kmに備えることになる。