WRC2016/11/19

ミケルセン首位キープもオジエ2秒差に急接近

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 2016年世界ラリー選手権(WRC)最終戦のラリー・オーストラリアは19日にDAY2を迎え、フォルクスワーゲン・モータースポーツのアンドレアス・ミケルセン( VWポロ R WRC)が終盤にクラッチペダルのトラブルに見舞われながらも首位をキープしたものの、チームメイトのセバスチャン・オジエにわずか2秒差に迫られることになってしまった。

 DAY2はラリー最長となる50.80kmのナンブッカ・ステージから始まる7SS/135.19kmというタフな一日。ラリー初日を1-2態勢で終えたフォルクスワーゲン勢がこの日もオープニング SS から激しい争いを展開することになった。

 初日を終えてオジエに15.4秒差をつけたとはいえ、ミケルセンはダスティなコンディションが予想される最初のループでふたたびオジエを大きく引き離すべく、ここで勝負を賭ける。彼はここでオジエを上回るタイムを叩きだしたものの、コーナーのポストをなぎ倒しながらインカットをくりかえしてギリギリの走りをみせたオジエもわずかミケルセンから2.6秒遅れで続き、二人の差は17.8秒へとほんのわずかに開いたにすぎない。

 このまま二人による緊迫した戦いが続くかに見えたが、このステージではまさかの展開が待っていた。なんとヒュンダイ・モータースポーツのヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 WRC)がミケルセンを10秒あまりも上回るベストタイムを叩きだし、一気にオジエとティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20 WRC)を抜いて2位へと浮上、ミケルセンに13.5秒差へと迫ることになる。

 パッドンは初日、一時首位に立ったもののタイヤの摩耗からミケルセンから23.7秒差の4位で終えていたものの、得意にしている二日目のステージで勝負を挑むと語っていたスタート前の公約どおりにアタック、フロアに開いた穴からコクピットに侵入するダストに苦しめられたものの、見事に首位戦線に躍り出すことになる。

 しかし、続く14.84kmのSS13ヴァッラではミケルセンが首位をアピールするようにベストタイム、SS14のショートステージではミケルセンとオジエがトップタイムを分け合い、さらにパッドンも0.2秒差で続くことになり、首位はミケルセン、13.6秒差でパッドンという順で朝のループを終えることになる。

 いっぽう、全ドライバーがハードタイヤでスタートするなか、ただ一人、朝のループでソフトタイヤを装着するギャンブルを試みたオジエは、67kmを走りきって3位に順位を落としたものの、ミケルセンとの差は前日よりわずか1.2秒しか広がっておらず、クリーンなコンディションとなった午後のループでどれだけ巻き返すかに注目が集まった。

 午後のループも朝と同様にオープニングステージはふたたび50.80kmのナンブッカだ。気温は30 度を超え、タイヤの摩耗が問題になることが予想されたこのステージで速さをみせたのはオジエだった。タイヤのマネージメント能力に優る彼はミケルセンとの差を12秒へと縮め、パッドンを抜いて2位へと浮上してきた。いっぽう、パッドンもタイヤをデリケートにマネージメントしてきたものの、終盤に激しく摩耗が進んだため、ミケルセンから2.7秒遅れと首位に迫るには至らず、16.3秒差の3位へと後退することになった。

 オジエはその視界に完全にミケルセンを捕らえたかに見えたものの、彼はこの日最後のロングステージとなるSS16ヴァッラのステージを渾身の走りでゴールしたあと、もはやミケルセンとの差を縮めることをできないと覚悟したのか、「僕はこのラリーの最初からできるすべてを試してきた。これ以上はできない。彼はポジションをキープできるよ」と発言する。ところがそのころ、彼の後方でまさかのトラブルがミケルセンに襲いかかっていた。

 14.84kmのこのステージで序盤の4km地点ではミケルセンはスプリットでオジエを0.5秒リードしていたものの、10km地点では2.5秒のビハインド、ゴール地点ではなんと9.8秒遅れとなり、オジエに2.8秒差まで詰め寄られることになってしまったのだ。

「クラッチとブレーキペダルがプッシュするといっしょに動くんだ」とステージのゴール地点で訴えるミケルセン。クラッチペダルが曲がってブレーキペダルに接触している状況だ。ミケルセンはロードセクションで応急修理を行い、この日も最後に2回の走行が行われるディスティネーションNSWスーパーSSへと向かうことになる。

 けっきょく、1.37kmのこのステージではオジエとミケルセンが1回ずつベストタイムを分け合うことになり、ミケルセンがわずか2秒ながら首位をキープ、二日目を終えることになった。オジエは初日を終えたあと、ミケルセンのドライバー選手権2位を最優先するために今回はヒュンダイの2台に抜かれないようにして彼を援護すると語っていたものの、これで二人のバトルの行方はまったくわからないものとなってしまった。

 また、パッドンは午後のループのタイヤの摩耗が最後まで響いたために首位には届かなかったものの、ミケルセンからはまだ12秒遅れの3位となっており、まだ最終日の優勝争いのチャンスを残した恰好だ。

 いっぽう、オジエから7.1秒差でスタートしたヌーヴィルはなんとか首位争いに踏みとどまるはずが、朝のループでソフトタイヤを選んだオジエからじわじわと引き離されることになってしまった。2番手の走行順でスタートした彼はダスティな路面でペースを上げられず、オジエからは31.8秒遅れ、パッドンにも21.8秒差を付けられて4 位で最終日を迎えることになった。

 ダニエル・ソルド(ヒュンダイi20 WRC)がMスポーツの2台を抜いて5位に浮上、ヒュンダイ勢が3-4-5位を占め、マッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタRS WRC)はセットアップ変更が裏目に出てしまいペースが上がらずに6位、チームメイトのエリック・カミリーもブレーキのトラブルによって7位となっている。

 シーズンフィナーレとなる明日の最終日は31.90kmのブッカのステージを含む57.18kmが残されている。チームメイト同士の対決となったフォルクスワーゲンの最後のラリーを制するのは果たしてどちらになるのか注目が集まる。