WRC2017/03/12

ミーク、今季初勝利にむけてメキシコの首位を堅持

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 2017年世界ラリー選手権第3戦のラリー・メキシコは、シトロエン・レーシングのクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)がリードを30.9秒まで拡大して土曜日を終えている。

 土曜日はシエラ・デ・ロボスを舞台とした3ステージを2回ループしたあと、レオンのスタジアムで行われる2.30kmのスーパーSSを2回走り、さらにこの日のナイトサービスが行われたあと、レオンのストリートステージで締めくくる9SS/157.57kmという、長く、タフな一日が待ち構える。前夜のスーパーSSでエンジンのミスファイアで3位を失うことになったダニエル・ソルド(ヒュンダイi20 クーペWRC)がすばらしい速さをとりもどし、土曜日のオープニングステージSS9メディア・ルナでトップタイムを奪って発進することになった。

 ソルドは前夜、激しいミスファイアに見舞われたマシンでレオンのサーキットに設定されたスーパーSSに臨んだものの、競技の進行をさまたげたとして出走を止められ、10分間のペナルティを受け、その結果、彼は3位から15位へと順位を下げている。彼だけでなくチームメイトのティエリー・ヌーヴィルとヘイデン・パッドンも同じようにミスファイアでタイムを落とすことになり、まさにヒュンダイにとっては悪夢の一日となったが、燃料フィルタがふさがれていたことが原因だったと判明している。
 
 トラブルが解消して速さを取り戻したソルドに続き、オープニングSSで2番手タイムを奪ったのは、Mスポーツ・ワールドラリーチームのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)。首位のミークから20.9秒遅れの2位でスタートした彼は、このステージでわずか0.9秒ながら縮めることに成功、オープニングSSのゴール地点でブレーキから焦げ臭い匂いがしていたミークとの差をさらに縮めるかにも思われた。

 しかし、ミークは、この日の最長ステージとなる38.31kmのSS10ラハス・デ・オーロではオジエを2.7秒上回る2番手タイムを奪い、さらに彼はSS11エル・ブリンコではヌーヴィルとトップタイムを分け合い、23.5秒へとリードを広げてレオンのサービスへと戻ってきた。

 ミークは2014年にエル・ブリンコがパワーステージとして行われた際にクラッシュしたことがあるため、この日ここで初めてベストタイムを奪ったことに満足している様子だ。「ここではボギーを叩いた事があるステージだ。過去にはあまりいい思い出がないステージだが、今日はよかったよ。でも、まだ午後のタフなステージが残っているからね」

 レオンのサービスを挟んで、午後のループはオジエの反撃から始まった。メディア・ルナの2回目の走行となるSS12で、オジエが初めてグラベルステージでのベストタイムを奪い、首位のミークとの差を21.3秒へと縮めている。彼は朝のループで今日は一か八かの勝負をするような走りはしないと語っていたものの、ここでは余裕がまったくない走りだったと認めた。「ここをあんな風にドライブするのはもうしたくない。やれることはすべてやった。本当にクリーンなドライブで、ほとんど限界に近かったよ」

 いっぽう、ミークは上位勢ではただ一人だけ4本ともハードタイヤを装着したが、シェイクダウンでソフトタイヤを1本パンクさせてしまったために仕方なかったと明かした。しかし、雲が山間部を覆い、雨が降る可能性もあるとの予報のなか、ミークのチョイスはなかば賭けでもあった。

 続くSS13でもオジエは速さをキープ、スプリットの表示ではその差はすでに20秒を切るまでに縮まったかに見えた。だが、ゴールしたオジエは終盤のヘアピンコーナーでスピン、18秒あまりをロスしてしまった。

 ミークはこのステージでベストタイムを奪ってフィニッシュ、オジエのミスによってその差が39.5秒へと広がったことを知るや、彼はコドライバーのポール・ネーグルとがっちり握手を交わして喜びあう。「ここが決定的なループになるだろうと分かっていた。どの地点かで、僕はハードタイヤを選ぶ必要があった。このステージで前輪にハードタイヤ、後輪にソフトタイヤを履き、ここが僕にとって一番の勝負どころだった」

 ミークは土曜日の最後のヤマ場となるSS14エル・ブリンコではフロントタイヤがリムから外れるトラブルに見舞われるものの、36.9秒のリードをキープ、前日と同じレオンの短いスーパーSSとともにレオンのサービスパーク周辺に設置された最後のストリートステージでも堅実な走りでペースをコントロール、首位でレオンのサービスへと帰ってきた。

 オジエは30.9秒差の2位で土曜日を終えたが、逆転を目指して最終日もプッシュするつもりだと語っている。

「クリスを捕まえるためにあれこれ試したが、スピンは残念だった。それがなければもっと迫っていただろう。しかし、それがラリーだし、ここにこうしているので悪くはない。まだ明日2つのステージがあるし、彼を捕まえられるようトライするよ」

 金曜日に多くのドライバーが見舞われたエンジンのオーバーヒートの問題はもはや過去のことであるようにも見える。土曜日は山間部に雨が降ったため気温が低く、また問題が繰り返すことを防ぐためにチームが行った対策はうまくいったようだ。ヒュンダイ勢の問題も完全に解決、前夜のスーパーSSでミスファイアのために40秒近くを失ったヌーヴィルはSS11エル・ブリンコで最速タイムを叩き出し、1分近く離れてしまったオジエとの差を43.6秒に縮めて朝のループを終えることに成功する。彼は午後のループでも「プレッシャーをかけ続ける」と語ってハイペースをキープしたものの、オジエから39.6秒差の3位でこの日を終えることになった。

 Mスポーツのオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)は初日こそオーバーヒートとセットアップの問題からマシンに自信がもてずにタイムを伸ばすことができなかったものの、SS11でユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)を抜いて4位に浮上する。ハンニネンは体調がすぐれないためペースが上げられずに、ヒュンダイのパッドン、チームメイトのヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)にもわずか0.3秒差ながら抜かれてしまい、7位まで順位を落としてしまった。

 トヨタ勢は前日に2台そろってオーバーヒートの問題に悩まされることになり、ラトバラも9位まで順位を落とすことになったが、エンジンマッピングを変更して安全方向に振ったことでペースはやや落ちてしまったが、それでも彼は少しずつ順位を挽回、SS10でブレーキを失うトラブルがあったものの、最終的に6位まで浮上してきた。

 また、前夜のスーパーSSでの問題によりステージを走り切ることができなかったソルドはラリー2の扱いで土曜日をスタートしたものの、スチュワードは前日に課した10分のペナルティを取り消す決定を下し、新たなノーショナルタイムを与えている。これでソルドは5分29.4秒のタイムが減算されて15位から8位まで順位を戻して午後のループをスタートすることになる。

 だが、ソルドはSS13に向かうロードセクションでパンク、ステージの前にスペアをつかい果たしてさらなる挽回を断念、スリック状態になるほど摩耗したタイヤで奮戦したものの、スタート前のエンジン交換による5分のペナルティを吹き飛ばすような走りを続けてきたエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)に0.4秒差で8位を譲ることになってしまった。

 また、7位につけていたシトロエンのステファン・ルフェーブル(シトロエンC3 WRC)がSS10でクラッシュしてリタイアとなっている。

 昨年の最終日はWRC史上に残る長さを誇る80kmのグアナファトが設定されたものの、あまりドラマが起きなかったことから今年の日曜日は32.96kmのラ・カレラと21.94kmのデラマデロのみとなっている。開幕戦から不振続きだったミークにとって待望の今季初優勝まで残されたのはわずか2SS/54.90kmとなっている。