WRC2017/03/11

ミーク、波乱の熱戦メキシコをリード

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 2017年世界ラリー選手権(WRC)第3戦ラリー・メキシコは、金曜日のステージを終えてシトロエン・レーシングのクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)がリード、セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が20.9秒差の2位で続く展開となっている。

 前夜にメキシコシティで行われたストリートステージが20万人の観客を集めて大成功に終わったあと、ラリーカーを積載した4台のトレーラーが400km離れたレオンまで向かう計画だったが、一般車両による事故で高速道路が6時間も閉鎖されたことから金曜日の朝のループに予定された2つのステージがキャンセルとなり、SS4エル・チョコラテのステージから本格的なグラベルの戦いがはじまることになった。

 54.90kmというこのラリー最長となるエル・チョコラテは、もっとも標高の高い地点では2746mを走るタフなステージだ。新世代WRカーがグラベルステージに挑むのはこれが今季初となるだけに注目が集まるなか、10番手のポジションで走行したミークがクリーンな路面コンディションに助けられてベストタイムを奪い、Mスポーツのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)に9.7秒差をつけてラリーをリードすることになった。

 ボディの左側に小さなダメージを残してゴールしたオジエは、2番手という不利なポジションでスタートしたにもかかわらず、2番手タイムとまずまずの走りをみせたが、彼はエンジンのオーバーヒートを示す警告ランプが気になるらしく、その表情はけっして明るいものではなかった。

 気温が30度以下と例年より低かったにもかかわらず、このステージではオジエだけではなく、ほとんどのドライバーがエンジンのオーバーヒートやブレーキの問題に苦しむことになった。オジエよりも1分11.5秒も遅れたチームメイトのオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)は、40kmを走行した時点で水温が120度まで上昇する状態で走ることになったと嘆き、メキシコシティで昨夜行われたストリートステージでトップに立ったトヨタのユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)もオーバーヒートのために1分11秒を失い、6位まで後退することになった。

 このステージでさまざまな苦難ともっとも格闘したのは、一番手のポジションでスタートしたヤリマティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)だった。彼はコースオープナーとして大量のルースグラベルを掃除しながら走り、さらにハンニネンと同じくエンジンのオーバーヒートの問題で1分32.6秒を失い、8位と出遅れてしまった。

 もちろんエンジンに問題があったのはSS4でトップタイムを奪ったミークも例外ではない。彼はSS5ラス・ミナースで走行にエンジンの回転に違和感を感じたあとヒルクライムセクションのタイトターンでミスしてエンジンをストップ、9秒近くをロスすることになってしまう。しかし、最初のステージで不安そうな表情もみせたオジエもペースを上げられなかったため、ミークが首位をキープ、オジエは15.7秒遅れで続くことになった。

 2つのロングステージのあと、昨年までオープニングSSとして使われたユネスコの世界遺産となっている銀鉱跡につくられた地下トンネルを舞台とするストリートステージ、さらにレオンのサーキットを2回走行するスーパーSSと短い3つのステージをいずれも快調なペースで駆け抜けたミークが最終的にオジエに20.9秒差をつけて初日を終えることになった。

 多くのチームがエンジンの問題に悩まされるなか、もっとも好調なスタートを切ったのはヒュンダイ勢だった。SS4ではヘイデン・パッドンが3番手タイム、ダニエル・ソルドが4番手、このステージで2年連続でクラッシュしているティエリー・ヌービルでさえ5番手タイムで続き、そろって好タイムを並べることになった。

 さらにヌーヴィルはSS5でトップタイムを奪って反撃を開始したほか、ソルドも3番手タイムで3位のパッドンに迫る速さをみせる。だが、それまで激しい進撃をみせてきたヒュンダイ・チームに次々とトラブルが襲いかかる。

 わずか1kmあまりのSS6のストリートステージでパッドンが最初のコーナーでエンジンをストップさせてしまい1分をロスして7位に後退してしまう。これでソルドとヌーヴィルがわずか0.2秒差での3位争いになるかに見えたが、残されたスーパーSSの1回目の走行となるSS7でソルドはエンジンがかからず、彼のマシンはいったんコースの外へと押し出されてしまった。ソルドはしばらくして2回目の走行を認められたものの、ひどいミスファイアのために1分50秒あまりもロスしてどうにか走りきっている。しかし、彼は1回目を走りきってないため、主催者は最終的にSS7でソルドがリタイアしたと裁定を下している。

 さらにヌーヴィルもまたミスファイアに見舞われてしまい、1回目の走行で25秒をロス、さらに2回目の走行でも10秒を失い、3位をキープして金曜日をゴールできたものの、トップのミークから56.7秒遅れとなったしまった。

 最後までエンジン温度上昇の問題が収まらず、アンチラグなしでドライブしなければならなかったラトバラは8位にとどまったものの、ややオーバーヒートが改善したハンニネンはタナクを抑えきり、3位のヌーヴィルとは30.6秒差の4位で金曜日を終えることになった。

 土曜日はシエラ・デ・ロボスを舞台とした3ステージを2回ループしたあと、レオンのスタジアムで行われる2.30kmのスーパーSSを2回走り、さらにこの日のナイトサービスが行われたあと、レオンのストリートステージで締めくくる9SS/157.57kmという、長く、ふたたびタフな一日が待っている。