WRC2017/10/08

ミークがスペイン圧勝、Mスポーツが選手権に王手

(c)Citroen

(c)Hyundai

(c)M-Sport

 世界ラリー選手権(WRC)第11戦のラリー・デ・エスパーニャは、8日に最終日を迎え、シトロエン・レーシングのクリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)が半年以上も続いてきた不振が嘘だったかのような素晴らしい走りをみせて、3月のラリー・メキシコ以来となる今季2勝目を飾ることになった。

 波乱に満ちた週末となったラリー・デ・エスパーニャも最終日に残されたのはわずか74.26km/6SSのみ。ノーサービスで走る一日となるためまだまだ何が起きるかわからない。ナイトポッドを装着したラリーカーがまだ夜明け前のサロウを出発、北部のオープニングステージにむかうことになった。

 最終日はラリーリーダーのミークの素晴らしいベストタイムで始まることになった。2位につける選手権リーダーのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)に対して13秒差をつけて最終日を迎えたミークは、オープニングステージのSS14ラルビオールでその差を14.7秒へと広げ、さらに続くSS15でも連続してベストタイムを刻み、その差を18.5秒へとした。

 オジエはリスクを負ってミークを追うことには興味がないと語りつつも、選手権を争うチームメイトのオット・タナク(フォード・フィエスタWRC)がオープニングSSで0.9秒差の後方に迫ってきただけにペースを上げざるをえない状況だ。続くSS15でオジエは0.7秒を奪い返すも、緊迫した2位争いはまだまだ続きそうな状況だ。

 いっぽう、「選手権の可能性を諦めずに最終日もプッシュする」と語って最終日を5位でスタートしたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)にはさらなる波乱が待っていた。オープニングSSで2番手タイムを奪い、ユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)を激しくプッシュした彼は、SS16サンタマリナの高速セクションの右コーナーを深くインカットした際に岩にヒット、右のサスペンションを壊してしまう。ヌーヴィルは無惨に歪んだタイヤをひきずりながら1分近く遅れてステージをフィニッシュするも、彼はここでリタイアを決意することになった。

 ドライバーズ選手権における最大のライバルがノーポイントでラリーを終えることになったためオジエとしてはもはやペースを上げる必要はないようにも見えたが、彼は息詰まるチームメイトとの2位争いに決着をつけるべくSS17で2番手タイムを奪い、その差を2.3秒とする。

 タナクはオジエに追いつくためにプッシュしたと認めながらもグラベル仕様のギヤボックスに苦労してきたため、これ以上ペースは上げることはリスクがありすぎると判断。「まだステージは残っているけど、2台ともフィニッシュまで運んでポイントを獲ることがとても重要だ」とポジションキープすることを宣言する。

 ゴールまで残されたのはわずか2ステージ、ミークはSS18でこの日5度目となるベストタイムを刻んだあと、最後のパワーステージではボーナスポイントを狙うことなくクリーンな走りで駆け抜けたにもかかわらず、ダニエル・ソルドに続く2番手タイムを獲得、圧巻の速さをみせつけて今年2度目の勝利を飾ることになった。

「格別の週末だ。何度挫かれたかではなく、何度立ち上がることができたかということなんだ。そして僕は自分のキャリアで何度それをやってきたか。このクルマがターマックでは素晴らしいことはずっと分かっていた。この結果がそれを証明している。これは僕らチーム全員にとって大きな自信となる」とミークはゴールで語った。

 28秒遅れの2位にはオジエ、5秒差でタナクが3位で続き、Mスポーツの二人は今季5回目のWポディウムを達成することになった。Mスポーツのマニュファクチャラー選手権獲得はこの週末には実現しなかったが、ヒュンダイとの差を83ポイントへと広げ、あとわずか4ポイントで栄光に迫ることになった。

 また、オジエはパワーステージで3番手タイムをマークしてボーナス3ポイントを加算、選手権ポイントを198ポイントへと拡大して5連覇に大きく近づくことになった。この週末ノーポイントに終わったヌーヴィルが160ポイントにとどまったため、タナクが1ポイント差でヌーヴィルを抜いて選手権2位となっている。

 TOYOTA GAZOO Racingのユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)は素晴らしい速さをみせて4位でフィニッシュ、6位につけていたチームメイトのエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)はSS15でクラッシュしてリタイアとなっている。

 5位には、一時ラリーをリードしながら不運に泣いたマッズ・オストベルグ(フォード・フィエスタWRC)、6位にはステファン・ルフェーブル(シトロエンC3 WRC)が続いている。

 世界ラリー選手権の次戦は2週間後のラリーGB、二つの選手権で王手を掛けたMスポーツがタイトルを決めることができるか、それともさらなる波乱が待つことになるのか、選手権はいよいよクライマックスを迎えることになる。