WRC2015/04/27

ミークが初優勝、シトロエン3年ぶり1-2

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 世界ラリー選手権第4戦ラリー・アルゼンチンは26日に最終日を迎え、クリス・ミーク(シトロエンDS3 WRC)が初のWRC勝利を獲得、チームメイトのマッズ・オストベルグ(シトロエンDS3 WRC)が18.1秒差で続き、シトロエンは2012年にラリー・フィンランドでセバスチャン・ローブとミッコ・ヒルボネンのとき以来の1-2勝利を飾ることとなった。

 最終日はサービスなしで16.32kmのエル・コンドルのステージのみを2回走る短い一日。しかし、狭くトリッキーなエル・コンドルではなにが起きるか分からない。金曜日のオープニングステージから首位をキープしてきたミークが果たして逃げ切って初勝利を飾ることができるのだろうか。最終日の朝、最初のステージが始まる前にいきなり最前線を揺るがす衝撃的な出来事が発生、ヴィージャ・カルロス・パスのサービスは張り詰めた雰囲気に包まれた。

 なんとオストベルグから25.1秒遅れの3位につけるヤリ-マティ・ラトバラ(VWポロR WRC)がロードセクションで3気筒になる症状を抱えてマシンをストップ、2分遅れてステージをスタートしたものの12km地点でマシンを止めてリタイアとなり、2位を狙うと意気込んでいた彼の期待はもろくも砕け散ってしまった。VWはラトバラのマシンにはシリンダーへの燃料供給に問題があったと説明、ラトバラは初日にオジエが見舞われたトラブルとまったく同じ原因でまさかの3戦連続のノーポイントとなってしまった。

 いっぽう、すでに前日の最終ステージでブレーキに不安を抱えたオストベルグはセーフティに走りきることを優先、「このタイム差では前を追うのはリスクが高い。チームの選手権のためにもこのポジションで確実にゴールしたい。今回は2位で十分満足だよ」と2位キープを宣言。残された距離を考えれば、38.6秒をリードするミークの勝利はほぼ確実かとも思われた。

 オストベルグは最終日のステージを安全なペースで走り、ベストタイムのアンドレアス・ミケルセン(VWポロR WRC)から12秒遅れの4番手タイム、しかし、いっぽうのミークはセーフティに走っているというより、リズムを崩したかのようにペースが上がらない。彼はトップから24秒遅れのステージタイムで首位をキープしたものの、オストベルグとの差は27秒に縮まってしまった。

 ステージのフィニッシュラインでもミークは地元ラジオのインタビューにも無言で応じず、初優勝への緊張のあまりにナーバスになっているようだった。

 そして、サービスをはさまず、迎えた最終ステージとなる2回目のエル・コンドルでは、ここでもまさかの波乱が待っていた。ミケルセンが狭くトリッキーなセクションで右リヤタイヤを大きな岩にヒットしてリタイア、さらに2台後方からスタートしたティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20 WRC)もまったく同じ岩にヒットして左リヤタイヤを失ってリタイアとなるアクシデントが相次いで発生する。

 多発するドラマにステージは異常なまでの緊張感に包まれたものの、オストベルグは3番手タイムで確実にフィニッシュ。ふたたび大きくペースを落としたミークもオストベルグから10秒遅れのタイムとなったものの、どうにかミスすることもなく18.1秒差で逃げ切り、WRC初優勝を飾ることになった。

 ステージをゴール後、マシンから下りたミークはこの日初めてメディアの前で話しだそうとしたものの、溢れ出した涙ですぐに言葉を続けることができない。「何と言ったらいいのだろう? とても長い道だった・・・。しかし、もっともお世話になった人はここにはもういない・・・この勝利をコリン・マクレーに捧げる」

 オストベルグは初日にエンジンがストップするトラブルがなければもっと違った最終日になったかもしれないが、堅実な走りで宣言どおりに2位でフィニッシュし、ドライバー選手権でもミケルセンを抜いて2位に浮上することになった。またシトロエンは3年ぶりの1-2勝利によって、マニュファクチャラー選手権でヒュンダイと並んで2位となっている。

 また、ラトバラのリタイアによって、Mスポーツ・ワールドラリーチームのエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタRS WRC)が3位でフィニッシュ、初の表彰台を獲得することになった。

 2012年のアルゼンチンで自己ベストの4位でフィニッシュしたマルティン・プロコップ(フォード・フィエスタRS WRC)がふたたび4位となり、5位には土曜日のウォータースプラッシュのあと電気系トラブルでリタイアとなったダニエル・ソルド(ヒュンダイi20 WRC)がヌービルのリタイアによって順位を上げてフィニッシュすることになった。

 また、初日にエンジントラブルでリタイアとなったセバスチャン・オジエ(VWポロR WRC)は17位に終わり、ポイント圏内には届かなかったものの、最後のパワーステージではきっちりと3ポイントを獲得して締めくくってみせた。