WRC2018/01/28

モンテのDAY3、オジエが33秒差で首位堅持

(c)M-Sport

(c)Toyota

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 2018年世界ラリー選手権開幕戦ラリー・モンテカルロは27日土曜日にDAY3を迎え、Mスポーツ・フォードのセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)が雪に見舞われた朝のループで築いた1分あまりの大量リードに支えられて首位をキープ、トヨタGAZOOレーシングのオット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)に33.5秒差をつけて明日の最終日に5年連続のモンテカルロ勝利をかけて挑むことになった。

 ホストタウンが置かれるギャップは土曜日、雨の朝を迎えたが、町の北部に広がる山岳エリアには昨夜11時ごろからかなりの雪が降り、デヴォルージュ山脈の中心に設けられたSS9アニエール・アン・デヴォリュイ〜コール(29.16km)は一面の雪となってドライバーたちを迎えることになった。

 トップグループは昨日までのリザルトのリバースでの走行順スタートとなり、ラリーカーが走行するたびに雪面に次第にくっきりとしたラインが生まれたため、後方からのスタートのほうが有利となった。10番手でスタートしたオジエは左リヤホイールにダメージを負いながらも2番手タイム、それまでの最速タイムだったヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)に28.9秒差をつける信じられないタイムで駆け抜けた。さらに前夜にオジエまで14.9秒差まで迫ったトヨタのタナクは、プッシュしようとしたがオフしそうになったためにペースダウンしたと認め、4番手タイムに終わり、オジエとの差は1分18秒に開くことになった。

 続くSS10サン・レジェ・レ・メレーズ〜ラ・バディ・ヌーヴ(16.87km)は、ステージ序盤が雪に覆われているセクションもあったが、雨が降り始めたためラインの雪が融け出してシャーベット状になっており、ここではタナクが素晴らしい走りでベストタイムを奪い、反撃を開始することになった。前のステージで大きなリードを手にしたオジエは、ここでは慎重な走りで15秒を失ったが、1分3秒という大量リードで朝のループを終えている。

 雪とシャーベットに覆われたトリッキーなオープニングSSで3位につけていたヒュンダイのダニエル・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)が雪道でスライドしてディッチに落ちてリタイアとなったことで、トヨタ勢が2-3-4位を占めてギャップのデイサービスを迎えることになった。

 もちろんチームメイト同士とはいえこのまま仲良くポジションをキープするつもりはない。オープニングSSで素晴らしいタイムを奪ったラトバラが、大きくペースを落としたエサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)を抜いて3位に浮上しただけでなく、55.2秒差もあった2位のタナクとの差を縮めて瞬く間に10.6秒差まで迫ってきた。

 だが、後方からの脅威にさらされることになったタナクも、SS10ではダンパーに問題を抱えながらもベストタイムを奪い、ラトバラとの差を37.3秒に広げて朝のループを終えることになった。

 ギャップのサービスが行われるころには気温も上がり、朝のステージでは雪が覆っていたアニエール・アン・デヴォリュイ〜コールのステージも、2回目のループはほとんど融けてシャーベット状のセクションとウェットセクションが混ざり合った状態となる。

 勢いに乗るタナクはこのステージでもチャージを開始するが、Tジャンクションの手前のブレーキングポイントでアクアプレーニングを起こしてオーバーシュート、雪原にオフしてしまう。だが、そのコーナーではすでに前走マシンの多くが同じようにオフしており、彼はティエリー・ヌーヴィルが残した轍のあとを辿ってかなり長い時間雪面を走ったにもかかわらず、あまり大きなロスなくコースに復帰することに成功する。さらにそれだけでなく、彼はこのステージでまたもベストタイムを獲得、慎重なアプローチを続けるオジエに15.3秒差をつけ、二人の差は48.1秒に縮まることになった。

 難しいコンディションとなったこのステージでオジエは2番手タイムでペースをコントロール、さすがにタイムを落とし過ぎたかと聞かれた彼は、「すべて上手く行っている。僕のポジションはリスクを犯す必要はない。いいリードを開いていると思う」と冷静な表情でコメントする。

 だが、タナクはラリーリーダーにリラックスするゆとりを与えない。暖かい陽射しによってほとんどウェットコンディションとなったSS12でもタナクはオジエを8.6秒も上回り、その差を39.5秒に縮めて、2回目のループを終えてギャップへと戻ってきた。それでも、彼は「コンディションは引き続きやっかいだし、プッシュせず、安定した走りを心掛けた。ドラマはなにもなかった」と平然と言ってのけた。

 ラリーはこのあとギャップで2度目のサービスをはさみ、このあと土曜日の最後のステージとなるベイヨン〜ブレジエ(25.49km)のリピートが残されるのみ。オジエは完全なドライと読んでソフトタイヤを選んだが、日が傾いてきたこともありスーパーソフトが正解だったかもしれない。ベストタイムはヌーヴィルが奪い、オジエは16秒遅れの8番手タイム、タナクにも6秒縮められ、彼のリードは33.5秒となっている。

 オジエはタイヤ選択が完璧ではなかったと認めつつも、すべては計画どおりだと勝利に自信をみせた。「今夜は30秒のリードを保持していたかったから、すべて計画通りに行っているということだ。路面は非常に汚れていたし、僕のタイヤチョイスは完璧ではなかったかもしれない。結構ギリギリだった」

 いっぽう、タナクはトヨタとのデビュー戦でまだクルマを学んでいるところなので多くを望みすぎないほうがいいと語った。「僕らはまだ学んでいるところだし、将来はともかく、このようなダーティなコンディションではすべてのリスクを負ってプッシュするつもりはない。シーズンは始まったばかりだ。選手権のためにも着実な結果を考えなければならない」

 ラトバラは朝のループで一時はタナクに10秒あまりに迫って逆転の機会を狙うかにもみえたものの、さらにペースを上げたチームメイトから少しずつ遅れることになり、彼は最終的に59.2秒差をつけられて3位キープに集中することになった。

 いっぽう、朝のループでラトバラに抜かれたラッピはSS11でドラマに見舞われてしまった。スライドした際に雪のなかにあったバンクにタイヤをヒット、ステージ中のタイヤ交換を余儀なくされて、クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)に抜かれて5位に後退することになった。しかし、ラッピはSS12でタナクに迫るタイムを刻み、スノーバンクに接触したミークの6秒後方に迫るや、SS13で7.8秒差をつけて抜き去り、ふたたびトヨタの2-3-4態勢を築いてみせる。それでも二人の差はわずか1.6秒と小さく、明日の最終日に4位を争うことになりそうだ。

 また、雪が降り積もったオープニングSSでラインを外して2度のスピンを喫したエルフィン・エヴァンス(フォード・フィエスタWRC)だが、ウェットコンディションでの自信に満ちた走りでペースを落とすことなくSS12で3番手タイムを奪い、チームメイトのブライアン・ブフィエ(フォード・フィエスタWRC)を抜いて6位まで順位を上げてきた。

 エヴァンスから2秒差でこの日をスタートしたティエリー・ヌーヴィル(ヒュンダイi20クーペWRC)は、この日のオープニングSSで雪掻きのハンデによる遅れをとりかえすことができず。SS12でこの日初のベストタイムもSS11でのオフとスピンが響いてブフィエを捕らえるまでに至らず、12秒遅れの8位のままでこの日をフィニッシュした。

 このあとクルーたちはギャップで行われるこのラリーの最後のサービスでクルマのチェックを行ったあと、日曜日の舞台となるモナコにむけて240kmあまりを移動する。

 最終日はチュリニ峠のステージなどわずか4SS/63.98kmが残されるのみ。天気予報はいまのところ晴れになると伝えているが、モンテカルロはいつもゴールしてみなければわからないだけに、ドラマチックなエンディングが待ち受けているかもしれない。