ERC2022/03/28

ヤレーナとMRFがアソーレスで劇的なERC初勝利

(c)ERC

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 ヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)第2戦のアソーレス・ラリーは、最終ステージでスペインのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2エボ)が地元のリカルド・モウラ(シュコダ・ファビアRally2エボ)を逆転、劇的なERC初優勝を飾ることになった。また、2020年以来、ERCへの挑戦を開始したインドのMRFタイヤにとっては待望の初勝利となった。

 嵐のような初日を終えてポンタ・デルガーダ出身のモウラが地の利を活かしてラリーのリードを奪ったが、トップ4がわずか11.7秒差で最終日を迎えており、まだまだ優勝争いはまったくわからない状況だ。

 日曜日のオープニングステージで素晴らしいタイムを出したのは総合4位につけるケン・トルン(フォード・フィエスタRally2)だ。彼はこの週末初のベストタイムを奪ってオーストリア・チャンピオンのシモン・ワグナー(シュコダ・ファビアRally2エボ)を逆転、1.2秒差をつけて3位へと浮上、まだまだ優勝を諦めてないことをアピールする。

 しかし、トルンのハイペースはすぐに破綻してしまう。彼は続くSS9フェテイラスでバンクに衝突してスピンし、20秒以上も遅れてしまう。さらにSS10セテ・シダデスでは、ボンネットから白煙を上げてマシンストップ、リタイアとなった。

 ワグナーもまたトルンと同じくSS9でハイスピードでバンクに激突、岩が散乱するディッチの方へと弾き飛ばされてしまったが、幸いにも4秒程度を失っただけで3位をキープしている。

 これでトップ争いは、首位で最終日を迎えたモウラとヤレーナとの一騎打ちとなった。昨年のERCアソーレスでは、アンドレアス・ミケルセンとダニエル・ソルドという二人のWRCドライバーが優勝を争い、モウラとヤレーナが残された3位表彰台をめぐって争う展開となっていたが、今年は二人による優勝争いだ。モウラは朝のループで2つのベストタイムを刻んで、ヤレーナとの差を14.7秒へと広げてデイサービスを迎えることになった。

「若くてとてもうまい彼らを相手に戦うことは簡単なことではないんだ。コースの知識は重要で、それを知っているからこそ、僕は彼らと戦えるのであって、そうでなければとても難しいことはわかっている。それでも僕は必死でプッシュして、ここまでは良いマージンを持っている」と43歳のモウラは語っている。

 1年前のアソーレスでは、3位フィニッシュ目前でセテ・シダデス・ステージでミスを犯して表彰台をヤレーナに譲っている。26歳のヤレーナと17歳年上のモウラとの因縁の対決だ。

 それまで晴れていた天候は午後のループになると曇り始め、小雨がぱらつき濃い霧がステージの視界を奪う。SS12ではヤレーナが0.9秒縮めるも、残されたのはわずか2ステージ、このままモウラが逃げ切るかとも見えたが、続くSS13のセテ・シダデス・ステージでは濃い霧がたちこめるなかでベストタイムを奪ったヤレーナに対してモウラは7.7秒もの遅れを喫してしまう。「石や穴が多く、僕らはリスクを避けてセーフティにドライブした。なぜなら昨年ここですべてを台無しにしてしまったからね」とモウラは語ったが、二人の差は6.1秒へと縮まってしまった。

 そして残されたのは、最終ステージのリベイラ・グランデ・ステージ。勢いづいたヤレーナはここでモウラに8.7秒もの大差をつけるベストタイムで一気に逆転、2.6秒差をつけて優勝を飾ることになった。また、ERC挑戦3年目のMRFタイヤにとっても初の快挙となった。

「僕らは死にものぐるいでプッシュした。ずっと200%の力で走ったよ! 信じられない勝利だ。MRFタイヤを誇りに思う!」とヤレーナは、ゴール地点で待っていたMRFタイヤのエンジニアと抱き合って喜びを爆発させた。

 昨年のERCでシーズン2位となったヤレーナは、開幕戦ラリー・セーハス・ダ・ファフェでは初日にラジエータ壊して12位に終わるなど、残念なシーズンスタートとなっていた。しかし、開幕戦に勝利した選手権リーダーのニル・ソランスが不在となった第2戦アソーレスで、ヤレーナはパワーステージでも最大の5ポイントを獲得してソランスを抜いて選手権2位へと浮上することになった。また、新しい選手権リーダーとなったのは、この週末を5位でフィニッシュしたアルミンド・アラウージョ(シュコダ・ファビアRally2エボ)だが、彼は次戦以降のERCに出場する計画がないため、ヤレーナとチームMRFが選手権リーダーとして次戦を迎えることになりそうだ。

 モウラから28.7秒差の3位でフィニッシュしたのはワグナー。土曜日には2度のベストタイムを奪ってセンセーショナルな走りをみせたが、最終日の朝のスピン以降はリスクを冒すことなく表彰台フィニッシュを決めている。

 シモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビアRally2エボ)は最終日に2つのベストタイムを奪って表彰台を目指して猛プッシュしたが、ワグナーに19.1秒及ばず4位となっている。5位にはアラウージョ、6位につけていたアルベルト・バッティストーリ(シュコダ・ファビアRally2エボ)がジャンクションでイン側に乗り上げて横転、9位まで後退することになり、リヤサスペンションに問題を抱えて我慢の走行を強いられていたヒョンデ・ポルトガルのブルーノ・マガラエス(ヒョンデi20 N Rally2)が6位で続いている。

 5位につけていたハヴィエル・パルド(シュコダ・ファビアRally2エボ)は午後のループでドライブシャフトに問題を抱え、リヤ駆動のみのマシンで13位まで後退してしまった。

 また、総合10位でフィニッシュしたマルティンス・セスクス(シュコダ・ファビアRally2キット)がERCオープン・カテゴリーでは一度も首位を譲ることなく優勝を飾っている。

 ERC3では、初日のウォータースプラッシュのあとのマシントラブルでリタイアとなったジョン・アームストロング(フォード・フィエスタRally3)が最終日にリスタート、同じく初日をリタイアしたイゴール・ウィードワク(フォード・フィエスタRally3)に23分の大差をつけて優勝を飾っている。